今後の薬価制度改革の行方

Nick 2017/02/22 製薬

医療用医薬品の公定価格である薬価は2年に1度、市場の実勢価格に下方修正する形で薬価の見直しが行われ、これを薬価改定と呼びます。2年に1度ではなく毎年行おうという議論が2014年に政府内で盛り上がり、経済財政諮問会議の主要な議題の1つとなりました。製薬企業などの猛反発があり、結局政府が閣議決定した骨太の方針には「頻度を含め検討する」と曖昧な書きぶりになりました。ただし最近の諮問会議で再びこの議題が取り上げられていて、火はくすぶっています。

毎年改定は、古くて新しいテーマです。かつて厚生労働省が中医協の論点に挙げた2005年から3年間かけて議論しましたが、製薬業界、医師会、薬剤師会の反対で実現しませんでした。

業界は薬価がより引き下げられることや、卸の薬価調査にかかる事務負担を懸念しています。診療側は、診療報酬本体にまわる財源が減らされることを警戒した末の結果でした。2013年11月に財務大臣諮問機関の財政制度審議会が、財務省に手渡した「2014年度予算の編成等に関する建議」で毎年の薬価改定を行うことを盛り込みました。

 

諮問会議で議論再燃

毎年改定は2014年4月に諮問会議の民間議員4人が提案し、議論が再燃しました。2004年から10年までの7年間で、改定のない年も薬価を引き下げていれば国民の負担額を累積で0.7~0.8兆円程度減らせた可能性があるとの試算も合わせて示しました。

提案について厚労省内には危機感がありました。中医協でかつて議論した際には、医療機関と卸の間の医薬品の価格交渉で妥結率が低かったため、正確な市場実勢価格を把握できないことを理由に毎年改定の導入が見送られました。しかし、2014年4月から妥結率を向上させる未妥結減算ルールが導入され、価格把握が困難との理由で突っぱねるのが難しくなったからです。

2014年6月に閣議決定する骨太の方針への書きぶりをめぐって諮問会議の議論と同時並行で内閣府を仲介人に厚労省と財務省の折衝が始まりました。水面下の折衝で「年1回とすることを含めて検討する」との文言の入ったペーパーが内閣府から厚労省に示されました。危機感を持った製薬業界は与党議員にロビー活動を行い「研究開発の意欲をそぐ」と訴え巻き返しを求めました。

 

業界に大激震

そんな毎年薬価改定の話に大激震が走ったのは、昨年(2016)の経済財政諮問会議です。11月に会合を開き、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を取りまとめることに決めたのです。免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の事例をきっかけに、薬価の毎年改定を中心とした民間議員の提案をベースに据え、厚生労働省と連携しながら諮問会議として検討を進めます。安倍首相は会合で、「民間議員の提案を踏まえ、薬価制度の抜本的な改革に向けて諮問会議で議論し、年内に基本方針を取りまとめていただきたい」と指示しました。

塩崎厚生労働大臣も提出した資料で、今後の検討の方向性に関して「一定以上の薬価差が生じた品目について、少なくとも年1回、改定時期に限らずに薬価を見直す」と応じるなど、政府内でくすぶり続ける薬価の「毎年改定」議論が再燃し始めたのです。

民間議員からは、全医薬品を対象とした「毎年薬価調査・薬価改定」の実施が提言されています。これに対して塩崎厚生労働大臣は「少なくとも年1回薬価を見直す」などと応じ、全医薬品を対象とするかどうかは触れませんでした。基本方針の策定は、諮問会議から関係閣僚の調整に委ねられています。