高額薬剤への対応

Nick 2017/04/17 製薬

2016年は薬価をめぐる様々な事項が異例ともいえる形で決まりました。厚生労働省が「緊急的薬価改定」として小野薬品の免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)の薬価を50%引き下げると決めたのは、その代表格といえます。薬価の見直しを含む2年に1度の診療報酬改定を4月に実施したばかりの11月に同じ方針を決めたという時期も異例ですし、決めるまでの経緯や、引き下げ幅を「50%」に決めた根拠も異例でした。

 

異例の「50%」引き下げ、販売額推計1,500億円超で

オプジーボの薬価を引き下げることになったきっかけは、2016年4月に財務省が開いた財政制度等審議会財政制度分科会(財政審)での議論です。日本赤十字社医療センター化学療法科部長の國頭英夫氏が、オプジーボの年間薬剤費が1兆7,500億円に上る可能性があるとの試算を示し、財政審が高額な新薬の費用に関する検討を始めました。すぐに新薬の薬価収載を審議する中医協での議論にも波及しました。オプジーボの効能・効果が患者数の少ない「悪性黒色腫」から患者数の多い「非小細胞肺がん」に拡大したときに薬価を下げられるような制度であるべきだったという反省もあり、薬価制度の抜本改革を含めた検討が急速に進んでいったのです。

 

販売額の根拠

國頭氏の試算は、体重60kgの成人に1年間投与した場合に医療費が約3,500万円かかるという計算に基づきます。投与量と費用の計算に誤りはありませんが、実際は臨床試験の平均投与期間6ヶ月から、患者全員が1年間投与を継続する可能性は低くなります。また、投与対象患者数も5万人で見積もられていて、「進行・再発」の場合にしか使えないこと、また小野薬品が設けた医師・医療機関の要件の基づく推定患者数の1.5万人とも大きな開きがありました。それでも「改革の風」は止まりませんでした。

 

安倍首相が引き下げを指示

世論の高まりや経済財政諮問会議での議論を受け、安倍首相が引き下げを指示しました。引き下げ幅「50%」の根拠は、以下のとおりです。まず、小野薬品が公表した2016年度の出荷価格による年間予想販売額1,260億円から、薬価ベースの販売額を推計し、1,516億円超になったため特例拡大再算定(巨額再算定)の最大引き下げ幅を適用しました。厚労省は、診療報酬に関する厚生労働大臣の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)で、「今回に限る措置」と説明しました。

 

薬価ベースの販売額

薬価ベースの販売額は、小野薬品が公表した年間予想販売額の1,260億円に、以下の費用を加味した値です。
・医薬品卸が医療機関へ売る際の利益として流通経費「7%」
・医療機関への販売価格に対する消費税「8%」
・医療機関の購入金額と薬価の乖離率「3.45%」を加味した推計値。
流通経費は、厚労省医政局経済課が毎年度公表する「医薬品産業実態調査報告書」の2012~14年度の平均値で、新薬の薬価算定時にも採用している値です。

乖離率は、2015年の薬価調査で「その他の腫瘍用薬(注射薬)」の平均が6.9%だったことを前提に、オプジーボが新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象であることなどを考慮して2分の1をかけた3.45%が採用されました。ただ、2分の1をかけた根拠については、「1,500億円を超えるかどうかで引き下げ率が変わるので、保守的に見積もりたいということ。2分の1の明確な根拠はない」(中山薬剤管理官)と説明し、極めて異例な対応であると印象づけられました。

50%の引き下げで薬価は以下のとおりに変更になりました
・点滴静注20mgが15万200円から7万5,100円に
・同100mgは72万9,849円から36万4,925円
になりました。2016年11月に告示し、2017年2月から適用しています。

 

2018年度改定、引き下げなかった仮定で実施

2018年度の薬価改定におけるオプジーボの取り扱いは、2017年度薬価調査に基づき、今回の引き下げがなかったと仮定した販売額を算出して、再算定されます。再算定は塩崎恭久厚生労働相ら関係4大臣が2016年12月に決めた「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づき、中医協などで検討を進めている新しい薬価制度に基づきます。