長期収載品およびOTCの分社化

Nick 2017/05/29 製薬

製薬企業が事業構造を再構築する動きが加速してきました。長期収載品事業の切り離しや特定の事業部門の分社化など、厳しくなる経営環境を背景とした収益性向上への戦略展開に拍車が掛かっています。

毎年薬価改定をはじめとする制度改革のなかで、各社は新薬開発・販売により集中できる体制の構築に力を入れています。社会保障費の抑制は医薬品業界に大きな変革を迫っています。

価値が減じる前に売却し、成長部門へ投資

武田薬品がテバ・ファーマシューティカルと設立した合弁会社は、2016年4月に稼働しました。武田薬品から「ブロプレス」など主な長期収載品を移管し、テバの後発医薬品と合わせた「オフ・パテント・ドラッグ」戦略を展開しています。

塩野義は精神神経系やがん、循環器、感染症領域の長期収載品21品目を、インド・ルピン傘下の共和薬品に売却しました。対象製品の売上高(2015年度薬価ベース)は94億円で、売却価格は154億円です。ノバルティスは長期収載品14ブランド37品目(決算ベース売上高1.6億ドル)を手放しました。買い取ったのはインドのサンファーマですが、国内での事業実績がほとんどないため田辺三菱に販売や情報提供を委託することになりました。

これらの先発医薬品企業は、長期収載品の売り上げが年々減少することを考え、製品として価値があるうちに売却しようとしたものです。後発品の市場浸透スピードが上がり、これまでの事業スタイルでは収益性を高められないと判断しました。これにより得た資金は、新薬ビジネスなどの成長部門へと投資されます。

一方、長期収載品を新薬企業から買い取り、製品ポートフォリオを充実させているのが後発医薬品企業です。なかでも外資系が存在感を示しています。共和薬品やサンファーマだけでなく、近年、国内に拠点を構えた南アフリカのアスペンもグラクソ・スミスクラインからオーソライズド・ジェネリックを承継するなど活発に事業展開しています。共和薬品は当面の目標である売上高500億円に向かう基礎固めができ、アスペンは2018年度の売上目標として180億年を掲げました。

長期収載品や非重点領域を切り離す動きは、大手や準大手を中心に加速

外資は国内市場に新規参入しても、知名度や品質への信頼感などから成功は難しい状況でした。しかし、長期収載品を扱うことで医療機関とのパイプができるため、従来とは違った展開が期待できるようになりました。

目立つ武田の事業展開、従来の延長線上で経営は語れない

分社化も盛んです。塩野義と武田薬品は相次いで一般医薬品(OTC)などの消費者向けビジネスを独立させました。新会社となる「シオノギヘルスケア」は2016年4月から、「武田コンシューマーヘルスケア」は2017年4月から営業を開始しました。武田コンシューマーヘルスケアはOTC新製品の発売に加え、アジアを中心とした海外輸出などに注力する方針で、当面の売上目標は1,000億円(2014年度実績736億円)です。両社ともに医療用に集中する姿勢を示したものといえます。

特に武田薬品は、クリストフ・ウェバー社長がCEOに昇格した2015年4月から事業構造改革のスピードを上げています。長期収載品の製品移管やOTC分社化に加え、重点ではない呼吸器領域を英アストラゼネカに売却しました。また、2016年12月には子会社の和光純薬を富士フィルムに売却すると発表しました。一方で、がん領域の米企業アリアド・ファーマシューティカルズを約6.300億円で買収し、研究開発体制もグローバルで組み替えるなど慌ただしいです。

目まぐるしく変化する市場環境は、各社に事業内容の見直しを迫っています。従来の延長線上で企業経営は語れない時代になったといえるでしょう。