英国のEU離脱による製薬業界へのインパクト

Nick 2017/06/26 製薬

英国のEU離脱による製薬業界へのインパクト

2016年、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国の国民投票で、大方の予想を覆し「離脱派」が僅差で勝利しました。英国がEUから離脱すれば、欧州医薬品庁(EMA)の枠組みからも外れる可能性が濃厚です。外れる時期は、離脱に関する協議を終える2年後か、その後に数年間の経過措置期間を設けた後か、いずれかになります。英国とEU加盟国との共同研究機会の減少や、それに伴う人材の流出により、英国の研究開発力が低下することを懸念する声も出ています。

英国のEU離脱による国内の見解と対応の方向性

経済界の見解
今回の英国民によるEU離脱の選択は、世界経済の先行きに対する不透明感や不確実性を増大させるおそれ

官民あげた対応の方向性

・世界的な為替、金融・資本市場の動揺を早期に収拾
リーマンショックとは異なるがあらゆるリスクに備える必要
・自由貿易、グローバル化といったG7が築き上げた成長・繁栄のためのメカニズムを維持
保護主義、孤立主義、ナショナリズムの伝播を、G7各国が強調して立ち切る
・日本経済への影響回避
為替の適正化
国民や企業のマインドの萎縮に対して、政策を総動員して立ち向かう
政府・経済界を挙げて対応

二度手間の薬事規制
2016年は、欧米の選挙で大きな「想定外」が続きました。米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利はいうまでもありませんが、6月に英国で行われた国民投票の結果、英国民が「EU離脱」の道を選んだことは、世界に大きな衝撃を与えました。

国民投票には法的拘束力がないため今後の動向は不透明ですが、離脱が実現すれば製薬企業も無関係ではいられません。英国は、欧州医薬品庁(EMA)を構成する主要国です。
EMAの拠点もロンドンにあります。その英国がEMAから外れた場合、製薬企業は英国で医薬品の開発や承認申請を行う際、EUとは別に英国のルールに沿った対応が必要になります。

英国の人口は6,000万人台で、市場規模は決して大きくありません。EMAと英国で「二度手間」の薬事規制が生じることを、各国の製薬企業がどう判断するかが今後の注目点です。

また、厚労省内には、英国が外れることにより、EMAの承認審査能力が弱体化することの影響の大きさを懸念する声もあります。英国は欧州でも非常に高い審査能力を持つ「薬事の一流国」です。英国で薬事規制を担う医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、医薬品医療機器総合機構よりも規模が大きく、そうした力を持つ英国がEMAから外れることで、EMAの薬事規制そのものが後退する可能性が指摘されています。

GMP相互認証に影響が及ぶ可能性もあります。日本はEUと締結した相互認証協定により、EUの製薬工場が作成する出荷前試験の証明書を日本で受け入れています。同様に、EU側も日本側の証明書を受け入れています。英国がEUから離脱すれば、こうした相互認証の枠組みからも外れる可能性があります。

「EU、英国とそれぞれで関係構築」厚労省
英国の国民投票の結果については、みずほフィナンシャルグループが調査レポートを出しており、政府の経済財政諮問会議でも一部が紹介されました。医薬品業界への影響では「治験・製造のかかる規制、薬価への影響は想定されず」としたものの、「日本企業を含め、EMAが大陸に移転した場合には拠点戦略の見直しの必要性が生じる(研究開発人材の流出、英国独自の許認可導入による追加業務負担発生の可能性も)」と指摘しています。

ロンドンに拠点を置くEMAが他のEU加盟国に移転した場合、製薬会社も研究開発・統括拠点をロンドンから移転させる必要性が高まるということです。
そのほか、EUと欧州製薬団体連合会などが資金を負担して研究開発資金を交付する「革新的製薬イニシアチブ」に代表される、欧州における産官学連携の共同研究機会の減少に言及しています。

参考URL

【英EU離脱】揺らぐ新薬創出世界3位の地位―研究開発力の低下懸念、魅力失う英国市場

英国はEU残留を、欧州製薬業界が訴え