「プロナーゼ、リゾチーム製剤の薬価削除」

Nick 2017/08/22 製薬

ここがポイント

厚生労働省は2016年、リゾチーム製剤とプロナーゼ製剤を薬価基準から削除しました。厚労省の関係部会と薬事分科会が両製剤の再評価申請を審議し、いずれについても「有効性が認められない」と判断したためです。両製剤を販売する製薬各社は対象製品の販売を中止、自主回収しました。両製剤は、2011年に市場から撤退した武田薬品の消炎酵素製剤「ダーゼン」の類薬です。ダーゼンと類薬の有効性を巡る問題が終結したことになります。

リゾチーム・プロナーゼ製剤の有効性問題に関する経緯

1995年 厚労省の再評価部会が、武田のリゾチーム製剤「ダーゼン」の有効性を認める判断をするが、一部の部会委員からは疑義が上がる。
2010年 武田が再評価部会の結果を受け、自主的に行った臨床試験の結果(有効性の確認できず)を、厚労省に報告する。
2011年

 

再評価部会が武田の臨床試験の結果を検討。武田に再試験を求める。ダーゼンの類薬5成分も、有効性の再検討を行うこととなる。

武田は、再試験は困難と判断し、ダーゼンの自主回収と製造販売の中止を決定。

2011年6月

 

再評価部会の審議を受け、ダーゼンの類薬5成分のうち、ブロメライン、ブロメライン・結晶トリプシンの配合剤、セミアルカリプロティナーゼを承認整理。リゾチーム、プロナーゼは企業の意向で再試験へ
2016年3月 再評価部会が、リゾチームとプロナーゼについて「有効性なし」と判断。薬事分科会も同様の判断をする

 

 

リゾチームとプロナーゼ、「有効性なし」

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品再評価部会は2016年3月、武田薬品の消炎酵素製剤「ダーゼン」の類薬であるリゾチーム製剤とプロナーゼ製剤の再評価申請(一部剤型を除く)を審議し、いずれも「有効性が認められない」と判断しました。同月の薬事分科会でも同様の結論が出たことで、両製剤の「有効性なし」が確定しました。

 

ダーゼンは、気管支炎の喀痰喀出困難時などに使う医薬品として1968年に発売されました。1995年に再評価部会では有効性・安全性に問題なしとされましたが、体内動態が判断しにくい酵素製剤であることなどを理由に、有効性に疑問を呈す委員もいました。そこで同社は自主的に臨床試験を実施しましたが、「慢性気管支炎患者での痰の切れ」などで有効性を確認できませんでした。

 

2011年1月の再評価部会の審議などを経て、武田薬品はダーゼンの自主回収と製造販売の中止を決定。再評価部会はダーゼンの類薬(酵素製剤)である以下の薬剤

 

・リゾチーム塩酸塩

・ブロメライン

・ブロメライン・結晶トリプシンの配合剤

・プロナーゼ

・セミアルカリプロティナーゼ

 

の5成分についても有効性を検討することを決めました。

5成分のうち、ブロメライン、ブロメライン・結晶トリプシン配合剤、プロナーゼ、セミアルカリプロティナーゼの3成分を製造販売する企業は、2011年6月の再評価部会の審議などを経て承認整理を行うことを決めました。一方、リゾチーム塩酸塩、プロナーゼの2成分は製造販売企業の意向で再試験を行うこととなりました。

 

その後、あすか製薬などリゾチームを製造販売する4社は「痰の切れが悪く、喀出回数の多い気管支炎の喀痰喀出困難」に効能・効果を絞って再評価申請しました。剤型は錠剤やシロップなど内服で、軟膏剤、貼付剤、点眼剤は除いています。

プロナーゼ製剤を持つ科研製薬も効能・効果を一部変更し「マクロライド系抗生物質による効果不十分な慢性副鼻腔炎」などで再評価申請、こちらは散剤を除きました。

2016年3月の再評価部会では、これらの再評価申請を審議しましたが、リゾチームとプロナーゼの両剤とも、すべての効能・効果で有効性が認められませんでした。これにより、長く続いたダーゼンと類薬に関する有効性の議論が幕を下ろしたことになります。

 

医薬品の有効性・安全性は、その時代の科学水準でしか評価できません。そのため、一度は肯定的な結果を得たものでも、科学技術の進歩や新たな知見により、承認された有効性・安全性を見直す必要に迫られることがあります。そこで行われるのが「再評価」です。医薬品の有効性を判断することの難しさを痛感させられる事例となりました。

 

参考URL

製薬各社 リゾチーム塩酸塩製剤を販売中止、自主回収

リゾチーム製剤が販売中止、自主回収へ