化血研問題が残した医薬品安全対策

Nick 2017/09/05 製薬

ここがポイント

厚生労働省は2016年1月、GMP違反と組織的隠蔽を繰り返したとして、化学及血清療法研究所(化血研)に対し、過去最長となる110日間の業務停止命令を出しました。塩崎恭久厚生労働相は「医薬品製造販売業の継続を前提としない抜本見直し」を要求。化血研は6月に理事体制を刷新したものの、2016年末時点で事業譲渡は実現していません。厚労省は、承認書と製造実態との齟齬がないかどうか、製薬企業に全医薬品を点検するよう通知(一斉点検通知)を出したほか、GMP査察を強化するなど、医薬品の品質確保対策に取り組んでいます。

一斉点検、約7割の品目に齟齬

化血研は長時間にわたり、承認書と異なる方法で血液製剤を製造していました。さらに厚労省の査察をごまかすため、虚偽の製造指図書や製造記録を作成し、組織的隠蔽を最長40年間にわたり続けていました。化血研の違法製造が発覚した後、塩崎恭久厚労相は「化血研という組織のままで製造販売することはない」と明言。化血研に対して「医薬品製造販売業の継続を前提としない抜本見直し」を求めました。しかし、化血研は代替品のない血液製剤を多数製造販売している企業です。そのため、処分当時に化血研が扱っていた計35製品のうち、停止処分は8製品にとどまり、27製品は「医療上不可欠」という理由で除外されました。

 

さらに化血研は4月の熊本地震で、生産設備などに大きな被害を受けました。震災からの復旧に取り組みつつ、6月には全理事の総入れ替えを発表。アステラス社への事業譲渡交渉を行いましたが、10月19日時点で協議が不調に終わったことが明らかになりました。

厚労省は化血研の違法製造を重く受け止め、承認書と製造実態との齟齬がないかどうか、製薬企業に全品目を点検して報告するよう求める「一斉点検通知」を発出しました。

その結果、対象3万2,466品目の約7割に当たる2万2,297品目に、軽微変更届が必要な相違が認められました。品質や安全性に影響を与える相違はありませんでしたが、膨大な数の相違が判明しました。

 

化血研問題はさまざまな製造規則に影響を及ぼしました。まず厚労省は、医薬品の品質を確保するためにGMP査察を強化。都道府県に対しては、医薬品製造所への通常調査を抜き打ちで実施するよう求め、期日を通告する場合でも企業が想定していない項目を抜き打ちで調べるよう促しました。

 

PMDAのGMP査察体制強化、厚労省は一変・軽微のQ&Aを発出

さらに厚労省医薬・生活衛生局は2017年度予算でも医薬品医療機器総合機構(PMDA)のGMP査察体制を強化。国内製造所への抜き打ち立入検査と、海外製造所に対する事前通告ありの立入検査で、計8人を増員することにしました。予算額は1億9,386万円で、2017年度予算からの新規措置です。

 

一方、製薬企業からは、製造方法を変更する際の手続きについて、どの程度の変更が一部変更承認申請に相当し、どの程度ならば軽微変更届で対応可能なのかを明確化して欲しいという要望が出ていました。ある製薬企業からは「当社では軽微変更届出に該当すると考えているが、万が一の場合を懸念して、一変申請の手続きを行うケースがあります。もし一変申請と軽微変更の判断基準がより明確に示されていれば、企業側も対応しやすいのに」といった声も出ていました。こうしたニーズに応えるため、医薬・生活衛生局医薬品審査管理課は事務連絡として質疑応答集(Q&A)を発出、厚労省の公式解釈を示しました。同課は今後も必要に応じて追加のQ&Aを出す方針です。

 

厚労省は、ワクチン備蓄のための免震倉庫整備費も予算に組みました。熊本地震で化血研が被災し、一部のワクチンが製造困難になったことを踏まえたものです。2016年度の第2次補正予算事業で、予算は21億5,700万円、全額補助。事業者を公募し、厚労省の評価委員会で選びます。

 

参考URL

化血研 信頼回復に向けて

混迷極まる化血研問題