MRの削減と将来の役割

Nick 2017/11/20 製薬

ここがポイント

国の薬剤費抑制策が強まるにつれ、製薬企業の将来が見通しづらくなっています。C型慢性肝炎治療薬や抗がん薬などの高額薬価問題は、膨張する社会保障費の象徴としてみられるだけに、これからも厳しい監視の目が向けられます。

これは同時に、企業側にコスト構造の見直しを迫るものにもなります。営業の前線を担うMRの立ち位置は、これから数年で様変わりする可能性もあります。

 

早期退職で適正規模探る 新卒採用の抑制も

MR認定センターの「MR白書2016年版」によると、同年3月末時点のMR数は前年比522人減の6万4,135人でした。これで2年連続の減少となりました。国内外の大手製薬企業を中心に従業員の削減が進み、MRもその対象になったことが要因です。近年は特許が切れた長期収載品の売り上げが1~2年で急減するとともに、大量のMRがコールをかけるシェア・オブ・ボイスの時代でもなくなりました。薬価制度改革による国内市場の伸び悩み懸念や先行き不透明感があり、適性規模を模索した各社が早めの対応を取った結果と見ることができます。

製薬企業は新卒MRの採用も抑制しているようです。2016年のMR認定試験の受験申請者数は3,566人でしたが、これは前回を924人も下回っています。市場の将来が見通しづらくなっているだけに、企業側は新規採用に慎重にならざるを得ません。

すでにMRを直接の削減対象とする動きも出始めています。マイラン製薬株式会社はMR 110人に対し、退職金の割増や再就職支援プログラムなどを盛り込んだ「退職パッケージ」を提示しました。同社からファイザー株式会社に出向したMRを対象にしたもので、出向契約が終了した後に本社に戻れなくなりました。アストラゼネカ株式会社はプライマリーケア領域を担当する50歳以上のMR約150人を対象に、早期退職を募集(定員40人)しました。

専門MRの育成を強化する大日本住友は、同時に全MR数の適正化をにらみます。そのための早期退職者の募集も行い、全社で265人が退職しました。45歳以上の社員(勤続5年以上)が対象でしたが、応募者の中心は営業本部でした。田辺三菱製薬株式会社でも国内従業員の1割強にあたる634人が早期退職に応募しました。中期経営計画では、5,000人体制に縮小するとしており、さらに500人以上の削減が必要になります。

 

地域包括ケアシステムと医療ビッグデータがカギに

量的な面だけではなく、MRの活動内容という質の面でも変化が出始めています。国が進める地域包括ケアシステムは、現在の患者の流れを大きく変えることになります。MRは従来のように、医師へのディテールで業績を上げるという単純な流れになりません。それは各社が発表する中期経営計画にも表れています。

エーザイ株式会社は薬剤の共同購入が予想される地域医療連携推進法人や、在宅医療との関わりが強まりそうな健康サポート薬局などをターゲットに、新薬から後発品までをパッケージでそろえる新たな形態を築こうとしています。取引は基本的に製薬企業と医療法人間で行われるため、キーアカウントマネージャー(KAM)やメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)が主体となります。そのため、現在約1,200人のMRの役割は質的にも量的にも大きく変わってきそうです。

中外製薬株式会社はMRがMSLやMNL(メディカル・ネットワーク・リエゾン)と一体的に行動することを想定しています。MRという単独のチャンネルでは情報提供活動そのものが制限されたり、患者が地域で施設間を渡り歩く状況に対応できないと考えるからです。

医療ビッグデータの活用が本格化する2017年は、MRの機能や役割が改めて問われる年になるかもしれません。単なる量の削減だけではありません。医薬営業のパラダイムシフトが迫っています。