日本のヘルスケアおよびライフサイエンス業界における重要な課題は、単なる「人材不足」ではありません。本質的な課題は、日本特有の規制環境や企業文化、ガバナンス構造を深く理解しながら、グローバル基準で組織をリードできる経営人材が限られていることにあります。
日本市場で求められるのは、日本特有の厳格な規制や商習慣を理解しながら、グローバル本社と日本法人の双方から信頼を得られるリーダーです。エグゼクティブサーチの成否は、こうした人材を見極められるかにかかっています。
現在も、東京はシニアリーダー人材が集まる中心地であり、ライフサイエンス業界のエグゼクティブサーチにおいて重要な人材マーケットとなっています。しかし、採用の成否を左右するのは勤務地や拠点ではありません。重要なのは、以下の3つの要素をバランスよく理解し、マネジメントできるリーダーを見極めることです。
PMDAをはじめとする規制環境への深い理解
日本企業に根付く合意形成型の意思決定プロセスへの対応力
多国籍企業特有のレポーティングラインやガバナンス構造への理解
こうした要件を満たせる人材は限られており、CEOやカントリーヘッド、取締役会レベルのポジションで検討できる候補者層は決して厚くありません。これらの役職では、豊富な業界経験だけでなく、ガバナンスや規制対応に関する深い知見を備えていることが不可欠です。
なぜ日本で「専門特化型」のエグゼクティブサーチが不可欠なのか
日本のヘルスケア・ライフサイエンス業界における経営人材の採用は、一般的な管理職採用とは大きく異なります。特に製薬業界のエグゼクティブサーチや医療機器メーカーの経営幹部採用では、候補者の評価にあたり、業界知識やマネジメント経験だけでなく、日本特有の規制環境への理解、ガバナンス対応力、そしてグローバル本社との連携能力が求められます。
そのため、ヘルスケア業界の経営幹部採用では、業界特有の採用市場や人材動向を理解した専門特化型のエグゼクティブサーチが不可欠です。
なかでも重要なのが、グローバル本社と日本法人をつなぐことができるバイリンガル人材の存在です。こうした人材に求められるのは単なる語学力ではありません。グローバル戦略を日本市場に落とし込み、日本市場の実情を本社へ適切に伝えながら事業を推進する連携力と経営力が求められます。
しかし、この要件を満たす人材は決して多くありません。そのため近年は、経営幹部の採用を重要な経営課題として位置付け、リテイン型エグゼクティブサーチを活用する企業が増えています。 リテイン型サーチでは、市場全体の候補者マッピング、各候補者の詳細なアセスメント、ガバナンスや企業文化との適合性評価までを含めて実施することで、長期的な成功につながる採用を実現します。
日本での成功を左右する経営人材の評価ポイント
日本のヘルスケア・ライフサイエンス業界における経営幹部採用では、日本特有の規制環境や商習慣、意思決定プロセスへの理解が求められるため、候補者の評価基準も他国とは大きく異なります。
実際のエグゼクティブサーチでは、特に以下の5つの要素が重要な評価ポイントとなります。
1. 経営幹部レベルでの規制対応力
日本のヘルスケア業界で経営幹部を採用する際、最も重要な評価項目の一つが規制対応力です。製薬企業や医療機器メーカーでは、規制対応やコンプライアンスは現場任せではなく、経営陣自身が責任を負う領域と位置付けられています。
そのため、候補者にはPMDAをはじめとする規制当局への理解だけでなく、ガバナンスやリスクマネジメントの観点から事業を運営できる能力が求められます。こうした知見が不足している場合、事業計画の遅延やレピュテーションリスクにつながる可能性があります。
2. グローバルと日本をつなぐバイリンガル経営力
日本市場におけるリーダーシップの成否は、語学力そのものではなく、グローバル本社と日本法人の橋渡しができるかどうかにかかっています。
特にCレベル人材の場合、
グローバル本社の戦略
日本市場における事業運営の現実
両者の意思決定スピードや優先順位の違い
を理解しながら組織をリードする必要があります。 実際の採用現場でも、この調整能力の有無が経営幹部としての評価を大きく左右します。
3. 複雑なステークホルダーをまとめる調整力
日本のヘルスケア業界では、経営幹部が関与すべきステークホルダーが多岐にわたります。
日本法人の経営陣
アジア地域統括組織
グローバル本社
規制当局や業界団体
こうした関係者との利害を調整しながら事業を推進することは、経営幹部にとって重要な役割の一つです。
特に日本市場では、短期的な成果だけでなく、合意形成を通じて組織を動かす力が求められるため、この能力は経営人材の評価において重要な要素となります。
4. 日本市場への適応力とマーケットアクセスへの理解
日本のヘルスケア市場には、他国とは異なる独自の事業環境があります。
薬価・償還価格制度
製品上市から保険収載までの制度設計・マーケットアクセス
医療機関や主要ステークホルダーとの関係構築
実際のエグゼクティブサーチでは、グローバル戦略を日本市場向けに最適化し、事業成果につなげた実績があるかどうかが重要な評価ポイントになります。
5. サクセッションプランニングを見据えた人材戦略
現在、日本のヘルスケア業界において多くの企業が直面している課題の一つが、経営幹部層の後継者不足です。
特に、
バイリンガル人材の不足
リーダー層の高齢化
グローバル本社の基準を満たす後継者育成の難しさ
といった要因により、経営幹部候補の人材プールは限られています。
その結果、カントリーヘッドや事業責任者クラスの採用では、企業間で同じ候補者層を争うケースが発生しています。 こうした状況を踏まえ、多くの企業がサクセッションプランニングを単なる人事課題ではなく、経営戦略上の重要テーマとして捉えるようになっています。
Apexディレクター ニック・オレンズの見解
「日本には、優秀で経験豊富な人材が数多く存在します。しかし、バイリンガル能力に加え、ガバナンスへの深い理解を持ち、グローバル本社の経営陣と対等に議論できるレベルの経営力を備えた人材となると、その数は一気に限られます。
実際の採用現場では、カントリーヘッドやシニアリーダー層の採用において、十分な後継者パイプラインを確保できていない企業も少なくありません。その結果、外部採用を行うのか、あるいは社内昇格を進めるのかという難しい判断を迫られるケースが増えています。
どちらの選択肢にもメリットはありますが、新しいリーダーが組織に定着し成果を上げるまでには一定の時間が必要です。そのため、後継者計画は問題が顕在化してからではなく、早い段階から戦略的に進めることが重要だと考えています。」
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洞察提供者
ニック・オレンズ
エイペックス株式会社 ディレクター/エグゼクティブリクルーター
製薬業界におけるリーダーシップポジションの採用を専門とするリクルーター
製薬チームのディレクターとして、臨床開発、プロジェクトマネジメント、安全性情報、マーケティング、薬事などの領域におけるシニア層・管理職層の採用を担当。
グローバル製薬企業や専門性の高い組織に対するエグゼクティブサーチの実績を有し、日本市場のシニアプロフェッショナルとの幅広いネットワークを活かして、企業の採用成功を支援している。
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経営人材のミスマッチがもたらすリスク
経営人材の採用における失敗は、必ずしも就任直後に表面化するわけではありません。しかし、経営幹部と組織のミスマッチは、時間の経過とともに事業へ大きな影響を及ぼします。
特に日本のヘルスケア業界では、以下のようなリスクが生じやすくなります。
日本市場への理解不足による規制対応上の問題
経営判断や組織運営のミスマッチによる業績低下
日本法人とグローバル本社との連携不足による意思決定の停滞
こうした課題は、候補者の職務経歴書や面接だけでは見抜けないケースも少なくありません。
そのため、多くのグローバル企業では、経営幹部採用を単なる欠員補充ではなく、事業戦略やガバナンス体制の構築と一体で捉えています。特に取締役会レベルの採用では、業界知識やマネジメント経験だけでなく、組織との適合性や長期的なリーダーシップの発揮可能性まで含めて評価することが重要です。
企業ごとに異なるリーダーシップ要件
日本市場で求められる経営人材像は、企業形態によって大きく異なります。
例えば、多国籍企業の日本法人では、
グローバル本社へのレポーティング
リージョン主導の意思決定
厳格なグローバルコンプライアンス
といった環境のなかで成果を出すことが求められます。
一方、日系企業や合弁会社では、意思決定プロセスや社内外のステークホルダーとの関係構築がより重視される傾向があります。
そのため、経営幹部採用では単純な業界経験だけでなく、その企業の組織構造やガバナンスモデルのなかで成果を上げられる人材かどうかを見極める必要があります。
実際のエグゼクティブサーチでも、同じCEOやカントリーヘッドのポジションであっても、企業ごとに求められる要件は大きく異なります。
なぜ今、サクセッションプランニングが重要なのか
日本市場では、サクセッションプランニングはもはや人事部門だけの課題ではありません。
経営陣や取締役会が主体的に取り組むべき重要な経営テーマとなっています。
多くの企業では、
将来的な経営人材の不足
バイリンガル人材の希少性
グローバル基準を満たす後継者育成の難しさ
といった課題に直面しています。
特にヘルスケア業界では、規制対応、ガバナンス、事業運営のすべてを理解した経営人材の育成には長い時間が必要です。そのため、後継者育成を社内だけで完結させることが難しくなっています。
実際の採用現場でも、カントリーヘッドや事業責任者クラスの採用では、社内候補者と外部人材を並行して検討するケースが増えています。
十分な準備がないままリーダー交代を迎えた場合、選択肢が大きく制限され、事業継続や組織運営に影響を及ぼすリスクがあります。
日本市場におけるエグゼクティブサーチファームの役割
こうした採用環境のなかで、エグゼクティブサーチファームに求められる役割も変化しています。
現在の経営幹部採用では、エグゼクティブサーチファームは単に候補者を紹介するだけでは十分ではありません。
特にヘルスケア・ライフサイエンス業界に特化したエグゼクティブサーチファームには、
市場全体を俯瞰した人材マッピング
転職市場に現れない優秀層へのアクセス
機密性の高いサクセッション案件への対応
ガバナンスや組織適合性を含めた経営人材アセスメント
が求められています。
特に、経営幹部層の多くは積極的に転職活動を行っていることは稀であり、一般的な採用手法だけでは十分な候補者プールを形成することが困難です。
そのため、日本のヘルスケア業界において経営人材を採用する企業にとって、専門特化型のエグゼクティブサーチは、経営人材採用を成功させるうえで重要なパートナーとなっています。
日本のヘルスケア業界で持続的な成長を実現するために
日本市場で継続的に成果を上げている企業は、経営人材の採用を短期的な欠員補充として捉えていません。
むしろ、事業成長や組織の持続的な発展を支える重要な投資として位置付けています。
そのため、経営幹部採用では常に以下の観点が重要になります。
ガバナンスとの整合性
サクセッションの継続性
組織文化との適合性
日本市場における実行力
経営人材のミスマッチは、採用直後には見えにくいものです。しかし、その影響は時間とともに組織全体へ広がります。
だからこそ、日本市場における経営幹部採用では、短期的な実績だけでなく、長期的な事業成功に貢献できるリーダーを見極めることが重要なのです。
日本市場における経営人材採用を成功へ導くために
日本のヘルスケア・ライフサイエンス業界で成功するためには、グローバルな視点と日本市場への深い理解の両方が欠かせません。
特に経営幹部採用では、単に優秀な人材を探すだけでなく、企業の事業戦略、ガバナンス、組織文化との適合性を見極める必要があります。
Apexは、世界最大級のエグゼクティブサーチネットワークであるKestriaのメンバーとして、グローバルなネットワークと日本市場における専門性を組み合わせた採用支援を提供しています。
ヘルスケア業界における経営人材採用やサクセッションプランニングについてご相談をご希望の方は、ぜひApexまでお問い合わせください。
Apexコンサルタントとの採用戦略ミーティング
経営幹部やハイクラス人材の採用を成功させるためには、採用活動を開始する前の設計が重要です。
Apexでは、ヘルスケア・ライフサイエンス業界における経営人材採用をご検討中の企業様向けに、採用戦略に関する個別相談を実施しています。
採用戦略ミーティングでは、以下のようなテーマについてご相談いただけます。
採用背景や事業課題の整理
求めるリーダーシップ要件や候補者像の明確化
現在の採用市場や競合動向の共有
採用スケジュールおよびサーチ戦略の検討
ご相談内容はすべて厳格な守秘義務のもと管理いたします。