製薬業界を中心としたヘルスケア業界では、開発競争やデジタル化、グローバル化の進展に伴い、企業が求める人材像が大きく変化しています。特に、製薬業界では高度専門人材の獲得競争が激しさを増しており、人材市場の最新動向を把握し、採用戦略に反映することがますます重要になっています。
そこで、製薬・ヘルスケア企業の採用担当者・人事責任者の方に向けて、エイペックスの製薬チームのマネージャーである加藤 恭平が、外資系製薬企業の採用市場で見られる最新の変化と、優秀な人材を獲得するために企業が取り組むべきポイントについて解説します。
本記事は、日本人材ニュース「外資系企業の採用最新事情(2026年9月発行)」の取材記事をもとに構成された詳細版となっています。
製薬業界の採用市場は堅調|採用ニーズは「多様化」へ
エイペックスの採用データによると、製薬業界、特に外資系企業の採用活動は引き続き活発です。一方で、企業が求める人材には明確な変化が見られ、特に「疾患領域」「AI・デジタル」「ディレクタークラスの役割」の3つの変化が注目されています。
1. 疾患領域の多様化
数年前までは、Oncology領域の求人募集が多く、採用ニーズが一極化している印象がありました。現在もOncologyの採用ニーズは高いものの、Immunology、Rare Disease、Neurology、Hematology、Gastroenterology、Dermatology、Cardiovascular、Vaccines領域など、採用ニーズはさまざまな疾患領域へ拡大しています。
こうした状況では、特定の疾患領域の経験者だけに対象を限定すると、候補者プールが極端に小さくなる可能性があります。隣接する疾患領域での経験や、グローバル環境での業務経験などにも目を向け、「どの経験が自社のポジションに転用できるか」という視点で候補者を見ることが、優秀人材の獲得につながっています。
2. AI・デジタル人材のニーズが拡大
臨床開発、メディカルアフェアーズ、薬事、マーケティングなどでは引き続き採用ニーズが高い一方、安全性(PV)、特にPMS関連の採用は以前と比較して減少傾向です。
一方で、存在感を増しているのがAI・デジタル関連のポジションです。臨床開発、メディカルアフェアーズ、コマーシャル、薬事、研究開発など、さまざまな機能でAI・デジタルの活用が加速しており、採用ニーズも拡大しています。
今後さらに市場価値が高まると考えられるのは、単なる「AIの専門家」だけではありません。自身の専門領域にAI・デジタルを掛け合わせ、業務プロセスや組織変革につなげられる人材の需要が高まっていくと考えられます。
3. ディレクター=ピープルマネジメントとは限らない
ディレクタークラスのポジションにも変化が見られます。
近年は、ディレクターというタイトルであっても、必ずしも部下を持つポジションとは限らず、特定領域の高度な専門性を活かしてグローバルプロジェクトをリードしたり、重要な意思決定に関与したりするIndividual Contributor型のディレクターポジションも見られるようになっています。
採用では、タイトルやピープルマネジメントの有無だけでなく、そのポジションが担う役割や期待する成果を明確に定義したうえで募集することが重要です。
早期希望退職で経験豊富な人材が市場へ|企業には採用の好機
製薬業界では近年、早期希望退職や組織再編が相次いでおり、これまで転職市場に出る機会の少なかった経験豊富な人材の流動化が進んでいます。 企業にとっては、これまで採用市場に出てこなかった優秀な人材と接点を持てる機会が広がっています。
一方、早期退職を選択した人材は、退職日や有給休暇の消化などによって入社可能な時期が限られるケースが多くあります。 こうした人材を確実に確保するためには、候補者の状況に合わせて入社時期を柔軟に検討することも重要です。
優秀人材獲得の鍵は「選考スピード」と「Candidate Journey」
優秀な人材を獲得するためには、選考開始後のスピードだけでなく、候補者が応募を決めてから入社するまでのCandidate Journey全体を設計することが重要になっています。
Candidate Journeyは「応募前」から始まっている
例えば、CVのみで応募できる企業がある一方、履歴書、日本語の職務経歴書、Application Form、Skill Check Sheet、課題など、応募時に複数の提出物を求める企業もあります。選考に必要な情報を確認することは重要ですが、応募時の負担が大きくなるほど候補者の応募が遅れたり、応募そのものをためらったりするケースも増えてきます。
必要書類の準備状況から、「志望度を測る」という考え方もあるかもしれません。一方で、候補者の志望度は最初から決まっているとは限らず、選考を通じて企業への理解を深め、仕事内容や組織の魅力を知ることで高まっていくケースも多くあります。
そのため、「応募時点で必要書類をすべて提出できない=志望度が低い」と一律に判断するのではなく、まずは候補者との接点を持ち、選考を通じて相互理解を深めていくという視点も選択肢となります。
選考スピードも企業の「採用競争力」に
選考開始後は、複数の面接を並行して設定するなど、意思決定までのプロセスを効率化することも重要です。優秀な候補者ほど複数社の選考を並行していることが多く、社内での検討に時間をかけている間に、他社からオファーを受けるケースも珍しくありません。
採用競争力は、オファー金額や業務内容、ポジションレベルだけで決まるものではありません。応募のしやすさ、選考スピード、候補者とのコミュニケーション、入社時期の柔軟性など、候補者が応募を検討してから入社するまでのCandidate Journey全体をどのように設計するかが、今後ますます重要になると考えています。

製薬業界の優秀人材の採用なら、エイペックスへ
エイペックスは、業界特化型のエグゼクティブ・サーチ・ファームとして、製薬業界を中心としたヘルスケア業界のハイクラス・専門人材の採用を支援しています。
マネージャーからCレベルの経営幹部に加え、臨床開発、薬事、品質、メディカルアフェアーズ、安全性、マーケティング、事業開発、マーケットアクセス、RWE、創薬など、各分野のスペシャリストやグローバルに活躍するバイリンガル人材との豊富なネットワークを有しています。
各領域を専門とするコンサルタントが、採用市場の動向や候補者のニーズを踏まえ、企業ごとの採用課題や求める人材像に合わせた採用活動をサポートします。 「求める専門人材になかなか出会えない」「採用要件や選考プロセスを見直したい」など、製薬・ヘルスケア業界の採用に関する課題がございましたら、ぜひエイペックスへご相談ください。