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プロジェクトを支えるPMOチーム

【PMOとは?】IT業界における役割や導入のメリット、職種について解説

​PMOとは、「Project Management Office」の頭文字を取った略称で、プロジェクト管理に特化した組織や役割を指します。

特に近年、IT業界ではプロジェクトが大型化・複雑化しており、各プロジェクトを効率的に管理する必要性が増しています。PMOはこの課題を解決するために、開発プロジェクトをリードしながらQCD(品質・コスト・デリバリー)の目標を達成させ、プロジェクトの成功をサポートする役割を担うため、近年存在感が増している職種となっています。

そこで本記事では、エイペックスのITチームに在籍する幾島 俊が、PMOの基本的な概念から役割、PMとの違い、導入のメリット、PMOの職種についてなど、IT業界におけるPMOの全体像を詳しく解説します。プロジェクトを効果的に管理し成功に導くPMOについて、詳しく見ていきましょう!

目次

  • PMOとは何か?

  • PMO導入の目的

  • PMOの具体的な役割

  • PMOとPMの違い

  • PMOを導入するメリット

  • PMOの3つの職種

  • PMOに向いている人の特徴

  • PMOになるには

  • PMOの年収と必要とされる経験

  • PMOになるには資格が必要?

  • PMOの転職には転職エージェントのサポートを活用しよう

PMOとは何か?

PMOとは、ITプロジェクトにおいてプロジェクトの管理を支援する部署や役割を指します。

単なる事務的な支援組織ではなく、プロジェクトの計画から実行までの全工程において、プロセスを標準化して適切なリスク管理を行い、プロジェクトの成功確率を高める重要な役割を担います。

PMOの役割は、本来であればITエンジニア職であるプロジェクトマネージャー(PM)もしくはプロジェクトリーダー(PL)が担います。

しかし、近年は企業のIT化の推進が著しくITプロジェクトの複雑性が増しており、PMやPLがプロジェクトの課題解決や折衝に追われ、効率的なプロセスの構築やリスク管理にまで手が回らない状況です。

そこで、PMやPLに代わってPMOがそれらの役割を担うことで、PM・PLの負担を軽減するとともにプロジェクトのスムーズな進行や意思決定をサポートします。プロジェクト全体を俯瞰して監視しながら隅々にまで目を光らせるため、ときにはチームに耳の痛い提言を行わなければなりませんが、プロジェクトの成功という共通の目的のためPMOは各チームに必要なアクションを打ち続ける必要があります。

PMO導入の目的

PMOを組織に導入する目的は、以下の目標を通してプロジェクトを成功に導くことにあります:

  • QCD(品質・コスト・納期)管理: 各プロジェクトのプロセスを標準化して適切に進捗を管理することで、品質の向上、コスト超過の抑制、納期の遅延といったリスクを軽減する。

  • 迅速な意思決定のサポート: プロジェクトの状況を常に可視化することで、必要なリソースの確保や方針転換をタイムリーに行い迅速な意思決定を支援する。

  • ノウハウの蓄積と活用: プロジェクト完了後、ベストプラクティスや教訓を組織に蓄積し、次のプロジェクトに活かす仕組みづくりを行う。このナレッジマネジメントにより、組織全体のプロジェクト管理能力の向上を目指す。

PMOの具体的な役割

では、PMOが組織に設置されることで、具体的にどんな役割を担うことが期待されるのでしょうか?

下記の5つの役割を見てみましょう:

①プロジェクトチームのサポート

各プロジェクトのスケジュール管理、進捗データの収集、報告書の作成、品質管理、コスト管理などを行う。特に大規模プロジェクトでは、PMが全ての管理業務を担うことは困難なため、PMOがこれらの実務を担うことでプロジェクトメンバーの負荷を軽減する。

②管理プロセスの標準化

プロジェクトの管理手法(ウォーターフォール、アジャイルなど)の選定や整備、ドキュメント管理や進捗報告のフォーマット策定など、管理業務の標準化を推進する。 これにより組織内でナレッジが共有がされ、担当者が変わってもスムーズにプロジェクトが進行できる。

③リスク管理と課題解決

定期的なプロジェクトレビューを実施し、リスク要因の特定とともに緩和策の提案を行う。ITプロジェクトでは要件定義の不明確さや技術的難易度の高さからリスクが顕在化しやすいため、定期的なレビューは特に重要。また、問題への対処も日々の業務で遅れがちになるため、あらかじめトラブル発生時の対応フローをPMOが整備しリスクを管理する。

④リソース管理とプロジェクト間の調整

複数のプロジェクト間でのリソース調整や情報共有を促進し、プロジェクトのポートフォリオを最適化する。必要な情報を各チームに提供することで、リソースの重複や矛盾を防ぎ、効率的な運用を実現する。

⑤組織戦略に沿ったプロジェクトの最適化

KPIや評価指標の設定によりプロジェクトを可視化し、予算管理やROI(投資対効果)の評価を含めた組織全体のプロジェクトポートフォリオを最適化する。経営層と開発現場をつなぐ架け橋となり、組織戦略と実行のギャップを埋める。

PMOが行うプロジェクト支援の具体例

①スケジュール管理とタスク実施の働きかけ:

PMOは各スケジュールにおけるマイルストーン管理と監視を担うため、各チームから収集した進捗データを整理・分析します。各マイルストーンでタスクの達成が難しいとの見込みが見られた場合、各PL・チームリーダーに状況確認を行い、必要なアクションを打つように促します。 また、場合によってはPMに状況を伝え、ボトルネックとならないように対処を促します。

②品質基準の策定と計測:

PMOは、PMとともにプロジェクトの成果物に対し期待される品質基準を策定し、プロジェクトが目指すべき指針づくりを行います。 同時に、各タームでの成果物を計測し、必要な品質基準を満たせているかをチェックします。

  • 品質基準の策定:プロジェクトの成果物に適用される品質基準を明確に定義します。これには、機能要件だけでなく、パフォーマンス、セキュリティ、ユーザビリティなどの非機能要件も含まれます。

  • 品質メトリクスの測定と分析:フェーズやスプリント終了時に、バグ密度、テストカバレッジ、パフォーマンス指標などの品質メトリクスを継続的に測定し、分析します。成果物が必要な品質を満たしているかがわかるため、問題の早期発見と対応が可能になります。

  • コストの情報共有:PMやPLは、プロジェクトをスケジュールどおりに進行することが目一杯となり、コストへの意識が薄れるケースがあります。PMOはこれまでにかかったコストと今後の見通しをPMやPLと共有することで、適切なコスト管理を促します。 また、人的リソース不足や必要経費が増大な場合、現在までに要したコストを資料としてまとめ、上層部やクライアントに相談・交渉することがあります。

PMOはITプロジェクトの複雑さと規模が増大する現代において、もはや単なる選択肢ではなく必須の組織機能となりつつあります。 PMOの役割は、プロジェクトの成功確率を上げることはもちろん、組織全体のプロジェクト管理スキルを向上させ、組織の生産性や成長を後押しする大切な役目を担っています。

PMOとPMの違い

女性のPMとPMOのメンバーである男性がプロジェクトについて話している様子

PMOは組織内のプロジェクト管理体制を整備し、効果的なプロジェクト遂行を実現するために要となる存在です。

位置づけとしては、PMの配下でプロジェクト支援を行う場合と、プロジェクトオーナー(クライアント企業)直属の組織として経営戦略や事業企画に参画する場合があります。特に後者の場合、PMOはクライアント企業の戦略をITプロジェクトに反映させるための「ハブ」として機能し、開発チームとは異なる立場でクライアントのメリットを追及します。

PMとPMOのアプローチの本質的な違い:

  • PMの視点:「プロジェクト中心」であり、担当するプロジェクトの目標達成が最優先事項。

  • PMOの視点:「組織中心」であり、個別プロジェクトの成功だけでなく、組織全体のプロジェクト実行能力の向上に注力する。

プロジェクトにおいて両者が最も効果的に機能するのは、相互の視点を交えてプロジェクトを最大化させる場合です。 例えば、アジャイル開発環境においては、PMOが厳格なウォーターフォール型のドキュメント要求を課すよりも、アジャイルの原則に沿った軽量なガバナンスフレームワークを提供することの方が、PMとの協力関係が深まります。

近年のプロジェクト環境の複雑化に伴い、PMとPMOの境界は従来より流動的になっています。 特にDXの推進プロジェクトでは、PMOがより戦略的な役割を担い、事業価値創出の観点からプロジェクトポートフォリオの最適化に関与するケースも増えています。

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PMOを導入するメリット

ではここで、PMOを組織に導入することで創出できるメリットを見てみましょう:

①プロジェクトの成功確率が上がる

PMOがプロジェクトを適切に管理することで、スケジュールや予算、品質管理が強化され、納品物のクオリティが安定します。PMOの支援によってPMの負担が軽減されるため、PMは目標達成に向けて意思決定に集中でき、トラブル発生時においても対応プロセスが確立されているため、影響を最小限に抑えることができプロジェクトの成功確率が高まります。

②プロジェクト間のシナジー効果が生まれる

PMOは、複数のITプロジェクトを社内横断的に支援し、定期的な情報共有などを通じてプロジェクトを可視化する務めを担います。 そのため、社内で不足する人的・技術的リソースの補充や適切なリソース配分、問題発生時のスムーズな対処が可能になり、プロジェクトの効率化が図れます。

またPMOがハブとして機能することで、プロジェクトのベストプラクティスを組織全体に展開しシナジー効果を生んだり、次回以降のプロジェクトにおいて継続的な改善や質の高いプロジェクト運営が可能になったりします。

③企業の成長や競争力強化につながる

PMOが適切なプロジェクト管理を行うことで、コスト削減を含めた業務の効率化や生産性の向上、ナレッジの活用による技術的な優位性の確保などが期待できます。

また、PMOは経営層と開発現場の橋渡し役にもなるため、企業の成長戦略に沿ったプロジェクト運営を行うなど、すぐには見えない成果ではあるものの将来的な企業の成長や競争力強化につながる役割を果たしています。

PMI(プロジェクトマネジメント協会)の調査によれば、高業績のPMOを持つ組織では、 企業の成長や競争力強化に直結する活動の成功率が38%高いという結果が出ています。

PMO導入の投資対効果を最大化するには、組織のニーズと成熟度に合わせたPMOの設計が必要です。単なる「管理のための管理」ではなく、組織の目標達成に貢献するPMOを構築することが、持続的な価値創出の鍵となります。

そのためには特に経営層の関わり方が重要であり、何を目的としてPMOを設置しどんなメリットが生まれるのか、組織全体への浸透が成功のポイントのひとつとなるでしょう。

PMOの3つの職種

PMOは、スケジュールの監視やコスト管理、品質目標の策定など、企業やプロジェクトにより担う役割は千差万別です。 一定の形を持たないことがPMOの柔軟さを象徴していますが、日本PMO協会ではPMOの役割を以下の3つに分類しています:

  1. PMOアドミニストレータ:プロジェクトに関するデータの収集や共有・管理、チームメンバーが行う業務の進捗状況の確認や報告、メンバーの労務管理、予算管理や経費処理など事務作業が中心。PMに代わってこれらの事務作業を行うことで、PMがプロジェクト管理に集中できるようにするのが目的。

  2. PMOエキスパート:プロジェクトマネジメントの中核を担う存在として、プロジェクト環境の整備、ルールの策定・改善および標準化などを実施。プロジェクトにおける情報分析手法の標準化や、管理ツールの開発・改善、プロジェクトの進行状況の評価、リスク管理など、プロジェクト管理能力の向上を目指す。

  3. PMOマネージャー:PMOチーム全体のマネジメントを担当する、PMOのなかでも上位に位置する職種。プロジェクト管理計画の策定や経営陣との調整、プロジェクト間でのリソース配分や調整、メンバーの教育などを担当し、PMO組織のパフォーマンス向上を目指す。

参考:一般社団法人 日本PMO協会

PMOに向いている人の特徴

上記で見てきたとおり、PMOの役割は多岐に渡り専門性も高く、多面的な能力が求められる市場価値の高い職種です。

PMOに向いている人は、以下のスキルが高いといえるでしょう:

  • コミュニケーション能力:PMOは多様なステークホルダーと折衝する立場上、高いコミュニケーション能力は欠かせません。相手の立場や知識レベルに合わせて適切に伝える能力や、表面的な言葉だけでなく背後にある真のニーズや懸念事項を聞き取る能力が必要です。

  • 問題解決力:プロジェクトを成功させるには、プロジェクトで発生するさまざまな問題をその都度解決する必要があり、PMOには問題を解決する思考力や発想力が求められます。プロジェクトは断続的に続く可能性もあるため、問題の解決には短期的な対処と長期的な解決策のバランスをもたせる必要があります。

  • マルチタスク能力:PMOは、役割上複数のタスクを抱えることが多いため、マルチタスクで物事を捌ける人が向いています。計画の変更や優先順位の急な変更にも柔軟に対応できる適応力も欠かせません。また、複数の課題に同時に対応する状況でも、プレッシャーに負けず集中力を維持できる精神力も必要です。

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PMOになるには

ノートパソコンを片手に持つシステムエンジニアの様子

では、PMOになるためにはどんなキャリアを歩めば良いのでしょうか?

PMOの業務の専門性から、未経験から直接PMOになることは非常に困難であり、まずはシステムエンジニア(SE)などのITエンジニア職に就き経験を積んでいくのが一般的です。 PMOの効果的な役割遂行には、プロジェクト管理の方法論に関する深い知識だけでなく、システム開発の実務経験も必要になるためです。システム開発の各フェーズで発生しがちな課題を予測し、適切な対策を講じるためには技術的な知識が不可欠になります。
ITエンジニア職を経験することで、PMOの業務遂行に必要な技術的な知識と経験が身につくでしょう。

また、実際にプロジェクトの現場でリーダークラスとして働いた経験を重ねれば、PMOに就いた際に大いに役立つでしょう。各リーダークラスがプロジェクト中にどのような悩みを抱え、どのようなサポートを必要とするかを実感できるためです。

PMOの年収と必要とされる経験

近年のITプロジェクトの増加により、適切なプロジェクト管理能力と専門的なIT知識を有するPMO職は、需要が伸びている職種のひとつです。

PMOは、IT企業に限らず一般の事業会社からも求人募集がでることがあり、グローバルプロジェクトや大規模プロジェクトの立ち上げなどの際にプロジェクトをリードできる専門職としてPMOが募集されることがあります。

外資系企業や日系のグローバル企業での求人募集が多く、年収はいずれも1,000万円~1,500万円が一般的です。

こうした企業からの募集の場合、

  • 海外のステークホルダーとも折衝できるビジネスレベルの英語力(TOEIC800点程度目安)

  • 開発プロジェクトやITプロジェクトのPMO/プロジェクト管理経験(3年以上目安)

  • プロジェクトの管理手法に関する知識と経験、もしくはそれを証明する資格

  • 要件定義、外部設計、技術ドキュメントの作成などに関わった経験

などの経験・スキルが求められることが多くあります。

PMOに求められる要件についてさらに詳しい話を聞く

PMOになるには資格が必要?

PMOに携わるために、特定の資格が必要ということはありません。

しかし、PMOの各業務を適切に行うには相応の知識が必要になるため、資格がない状態では成果をすぐに出すのは厳しいでしょう。エンジニアとしての実務経験からPMOに必要な知識が身につくとは限らず、資格取得の過程で知識を身につけた方が確実です。

当然転職や昇格の際も、資格取得が知識を身につけていることの証明になるため有利になります。 PMOになるために役立つ資格は、以下のとおりです。ぜひ取得を目指しましょう。

  • PMP:世界的に認知度が高いPMBOKに基づいたプロジェクトマネジメントの資格

  • プロジェクトマネージャ試験:国家資格のIT試験の中でも上級レベル。プロジェクトの全体管理能力を証明できる

  • Scrum Master:アジャイル開発の現場におすすめ。アジャイル開発のリーディング能力が期待できる

PMOの転職には転職エージェントのサポートを活用しよう

PMOはプロジェクト成功の要として、今後も需要が伸びる職種のひとつといえます。IT業界だけでなく、さまざまな業界で競争力強化のためにPMOの戦略的活用が求められています。

もしあなたが、プロジェクトマネジメントスキルと戦略的思考を兼ね備えた人材として活躍の場を広げたいのであれば、PMOは大きな可能性を秘めた選択肢となっています。

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