新薬を世の中に送り出すための最終関門である「製造販売の承認取得」。これを中心となって担うのが「薬事職」です。
病気で苦しむ患者さんのもとに新薬を届けられるかが決まる大変責任の重いポジションですが、利益創出という点からも製薬企業にとって肝となる職種です。 ただ、転職という観点からいうと求人募集が集中する時期などがないため、転職のタイミングを掴むのが難しいとされてきました。
そこで本記事では、エイペックスの製薬チームのベテランマネージャーで、薬事をはじめ多岐に渡る製薬ポジションを担当する加藤 恭平さんに、薬事職の現在の転職事情から企業が求める薬事人材、薬事職のキャリアパスとキャリアアップ、転職成功のポイントなどについて話を聞きました。 最新の転職事情について詳しく語ってもらいましたので、薬事職に興味のある方、現在薬事職に就いていて新しいキャリアを探している方、どちらにも必読の内容となっています。
※薬事職の詳しい仕事内容については、薬事職とはどんな仕事?転職の方法や必要なスキル、年収、製薬業界のトレンドとあわせて詳しく解説!の記事をご覧ください。
目次
薬事職とは?
薬事職の転職事情
企業が求める薬事人材とは?
薬事職のキャリアパス
薬事職のキャリアアップとは?
薬事職の転職成功のポイント
1. 薬事職とは?
Q. まず、薬事職の役割について教えてください。
A. 薬事とは、製薬企業をはじめ、医療機器企業やヘルステック、CRO(Contract Research Organizationに設置されている部門の一つです。製薬企業に設置されている薬事は、「製剤の開発から販売終了まで、製品のライフサイクル全般を薬事面から支える仕事」という位置づけです。
薬事職の最も大きなミッションは、新薬(もしくは既存製品の適応追加)の製造販売承認を厚生労働省から得ることにあります。そのために、規制当局との折衝をリードしながら社内チームをまとめ、薬事規制に対する自社のコンプライアンスを確保して、早期申請・早期承認を目指します。万が一承認を取得できなければ新薬が発売できず、発売後であっても医薬品の維持管理に不備があれば承認取り消しなどの措置があるため、製薬企業の事業継続と成長にとって大変重要なポジションといえます。
Q. 薬事職は具体的にはどんな業務を行うのでしょうか?
A. 製薬企業の薬事職は、その業務内容によって大きく「開発薬事」「薬制薬事」「CMC薬事」の3つに分けられます。下記で詳しく見てみましょう。
開発薬事:薬事と聞いてイメージする仕事内容に最も近いのが、この開発薬事でしょう。新薬等の臨床開発において、薬剤の承認申請・取得のための活動をリードする役割を担います。
具体的には、承認申請を有利に進めるための薬事戦略の立案や開発戦略に対する薬事面からのアドバイスの提供、治験届関連文書や承認申請書類(CTD:コモン・テクニカル・ドキュメントなど)の作成などを担当します。最も重要な業務のひとつとして、製薬企業側の窓口となり、製造販売許可を出す厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)と折衝したり、照会事項に対応したりもします。
大手企業では薬事業務を細分化していることも多く、電子媒体による承認申請・提出のとりまとめを行う薬事申請担当者を置いていたり、日系企業が海外での承認取得を目指すために海外薬事担当者を専任で募集したりすることもあります。
いずれにしても、開発薬事は早期承認によって製品価値を最大化させる務めがあり、企業の開発戦略において中心的な役割を果たす存在となります。薬制薬事:市販後の薬剤のレギュレーションの維持を担当する薬事職で、膨大な数の医薬品を取り扱う点が特徴です。主に「変更管理」「業態管理」「プロモーションのレビュー」の3つの仕事があります。製造所や製造業者、サプライヤーにおける製造プロセスや試験法の変更など、各種変更・維持管理のために品質管理部門などとの密接な連携が求められます。
CMC薬事:CMCは「Chemistry(化学)・Manufacturing(製造)・Control(管理)」の頭文字を取った略語で、開発中の製剤や原薬、既存製剤の製造や品質をチェックする業務を担当します。承認申請資料のCMCパートの作成や、海外で製造された医薬品が国内での申請・規制要件を満たしているかどうかの分析や試験などを担当しています。
Q. 薬事職にはどんなやりがいがありますか?
A. 薬事職は、製薬業界の花形である開発部門において中心的な役割を担う職業であり、薬事の専門家として社内外から頼りにされる存在です。
医薬品を上市する最終段階を担い、承認申請の内容次第で新薬の販売の可否が決まるため、もっとも重要なパートの一つに関われるという面白さがあります。国内外の多くの関係者と協働しながら、数年間に渡るプロジェクトが承認取得というかたちで成功したとき、自身のマイルストーンとして大きな達成感とやりがいを感じられるでしょう。近年は新規モダリティの活発化・多様化により、先鋭的な医薬品開発の現場に携われるという点も、魅力の一つです。
また、医薬品は販売してからも再審査や再評価制度による適合性調査があり、承認を維持していくのにも重要な役割を担うため、薬の一生に深く関わることができる面白さもあります。
2. 薬事職の転職事情

Q. 薬事職の求人募集の現状について教えてください。
A. 開発薬事は、一年を通して比較的安定して求人募集があり、薬事職のなかでも最も求人数の多い職種です。募集が集中する時期は開発品の進行状況によるため、良い求人に出会うには転職市場を常に注視する必要があります。
最近の傾向としては、米系のバイオベンチャーなどが積極的に日本市場への参入を推進している影響で、開発薬事の求人募集が特に多く出ています。今後も多数のパイプラインが控えていることもあり、しばらくは良い求人が出続けることが予想されます。
また、こうしたバイオベンチャー系の企業の場合、事業が成長段階ということで経験値の高い人材を確保したいという狙いがあり、シニアマネージャーやアソシエイトディレクターレベルのランクの高いポジションでの求人募集が多くなっています。すでにある程度薬事の経験を積んでおり、そのうえでキャリアアップを図りたいと考えている方にとっては大きなチャンスでしょう。
一方、薬制薬事は開発薬事と比較すると求人数は少ないのが一般的です。市販後製品のレギュレーションの維持を担当することから積極的に転職を繰り返す職種ではないため、転職市場も活発ではないことが多いです。求人が多く出るタイミングも特にないため、転職エージェントから定期的に求人情報を送ってもらうと良いポジションに出会えるでしょう。
Q. どの領域での求人募集が多いですか?
A. 開発薬事については、特に再生医療や遺伝子治療などの新規モダリティの登場で規制環境が複雑化しており、薬事の役割の重要性が高まっています。そのため、オンコロジーやヘマトロジー、免疫領域での求人募集が引き続き多く、こうした領域での薬事対応の経験をお持ちの方にとっては売り手市場となっています。
また、国際共同治験の増加などグローバル開発も加速化していますので、国内外での承認を見据えた薬事戦略が立案できる薬事職も募集が多くなっています。
Q. 年齢が高いと採用されにくいですか?
A. 年齢に関しては、30代後半から60代前半まで幅広い年齢層の方が採用に至っており、エイペックスの統計では薬事職の転職者の約60%が50歳以上となっています。
営業職であれば若手であるほど市場価値が高くなりますが、薬事職は経験値の高さが優先事項となるため、シニア層・ベテラン層の方の需要が高い傾向にあります。経験値の高さとは何かというと、やはり承認申請の経験・承認取得の実績であり、可能な限り応募する疾患領域の承認経験を積んでおくこと、ピープルマネジメントの経験があることが重要です。
薬事職は他部門と比べてもシニア層・リーダー層に多くのチャンスがあり、60代前半であっても転職可能なケースが十分にあります。 先日も、再雇用後の大幅な年収減を回避するために65歳の方が相談にいらっしゃいましたが、前職での経験値が高く評価され、外資系バイオファーマのアソシエイトディレクターとして現職と同程度の年収で転職を成功されています。
転職を考えている方は年齢に関わらず、まずは転職エージェントに相談されることをおすすめします。
Q. 求人募集の年収相場はどれくらいですか?
A. 薬事職の求人は、管理職クラスになると部下なしの管理職であっても年収上限が1,300万円~1,400万円となり、製薬業界の職種の中でもかなり高めの年収が期待できます。
部下なし管理職:年収上限1,300万円~1,400万円
部下あり管理職(グループマネージャーなど):年収上限1,700万円~1,800万円
ディレクターレベル:年収上限2,200万円~2,500万円
薬事ヘッド:年収上限3,000万円+α
薬事職に限ったことではありませんが、年収アップを目指すのであれば外資系かつ小規模の企業が狙い目です。大手に比べるとパイプラインがそこまで豊富ではないため、多くの人員を採用することができず、その代わりに多少年収を上げてでも経験豊富な人材を採用する傾向にあるからです。
前途のように、経験豊富な方であれば60代前半であっても高年収での転職が可能ですので、長い目でキャリアを形成していくことをおすすめします。
Q. リモートワークの求人募集はありますか?
A. 現在転職市場に出ている薬事職には、ハイブリッド勤務(在宅とオフィスワーク)が可能な求人が多くあります。全国どこからでもフルリモートワークが可能という求人も少数ですがあります。
ただし、これは薬事職だから可能ということではなく、「週2日以上はオフィスへ出社」など、企業のポリシーに従って働き方を選択できるということです。一部のスタートアップでは出社を望む企業もありますが、ほとんどの企業は回数にばらつきこそあれ在宅勤務が可能であることが多く、ワークライフバランスが取りやすい環境が期待できます。
勤務地については、承認申請業務はPMDAや厚生労働省などとの交渉があるため、関東以外に本社がある企業でも東京勤務OKで募集が出ることがあります。東京勤務を希望されている方にとっては朗報でしょう。 一方、関東以外に勤務している場合、承認業務が佳境に入ると東京への出張が多く発生することになります。
3. 企業が求める薬事人材とは?
Q. 薬事職について、企業はどのような人材を求める傾向にありますか?
A. 大前提として、中途採用の場合製薬企業は「製薬業界での薬事経験者のみ」を採用します。
その際、最も大きな強みとなるのが「疾患領域の経験」です。例えばオンコロジー領域を担当する薬事であれば、ほとんどの場合企業は領域経験者を求めます。
仮に企業が求める疾患領域の経験がない場合、薬事戦略の立案スキルや高いレベルでの規制当局との折衝スキル、承認取得の実績など、その他の資質の部分でライバルよりも優れている点がなければなりません。
また、グローバル開発が増加傾向にあるため、日本の規制要件だけでなくFDA(アメリカ食品医薬品局)やEMA(欧州医薬品庁)を中心とした海外の規制要件に精通している人材が今後より求められるようになるでしょう。
マネージャー以上のポジションであれば、グローバルとの協働機会が多く発生するため、英語での高いコミュニケーションスキルが必要とされます。スタッフレベルであれば読み書きに問題がなければ採用されることもありますが、役職が上がるほど会話力が求められる傾向にあります。これは外資系企業だから英会話力が必要というわけではなく、日系の企業であっても海外市場に参入する際、英語でのコミュニケーションの機会が多く発生するため必須のスキルとなります。
ただ、英語力が薬事としてのコアスキルよりも重要視されるということはありません。薬事としての経験と実績にプラスして高い英語力を持つ人材が市場価値が高く、特に外資系企業の場合はグローバルと効果的に折衝できる人材が求められます。 特に外資系企業についていえることですが、サイエンスベースのアプローチを取るグローバルと、日本市場独特の規制慣行を理解する日本の担当者との間で衝突が起きやすく、そのような複雑な要求をグローバルに対し言語化し交渉できる高いコミュニケーションスキルを持つ人材が非常に重宝されます。先日も、外資系製薬メーカーの薬事ヘッドに採用された方はこのスキルが高評価となり、約3,000万円の年収オファーで転職を成功されました。
Q. 薬事職に必要な資格はありますか?
A. 薬事職に就くのに必須の資格などはありませんが、ほとんどの方が医学、薬学、自然科学、生命科学などの理系大卒です。関連学位のMS(Master of Science)以上の方や、薬剤師免許を持っている方は特に歓迎されますので、少ない薬事経験であればそれらで補えたり、付加価値のある人材として転職の際に有利に働きます。
Q. 開発薬事と薬制薬事では、求められる要件は違いますか?
A. 開発薬事職に就く場合には、臨床開発の知識が非常に重要となります。法令やガイドライン、品質・コンプライアンスなどの要件への広範な理解とともに、開発・承認プロセスに精通していることが必要最低限の条件です。
それに加えて、開発効率の最大化を目指せる薬事戦略を策定できるか、薬事リスクを管理しながら事業目標に向けた道筋を安定させることができるかなど、薬事として承認までのストーリーを描けるかも重要でしょう。
また、プロジェクトマネジメントの能力は必須要件です。開発薬事は、開発初期から承認まで数年に渡る長いスパンのプロジェクトを担当しますので、多部門連携のプロジェクトで中心的存在として全体的な戦略を統合できるか、規制当局やグローバルをはじめとした社内外のステークホルダーと強固な関係を築けるかが重要です。
薬制薬事の場合は、PMD法に基づいて規制遵守システムの推進・管理・指導を行う立場にあるため、GMP/GQP/QMSなどの製造側のレギュレーション、およびGVPなどの安全性側のレギュレーションの知識が不可欠となります。規制当局や業界団体との折衝経験や、再審査対応・適合性調査の経験も求められます。
国内外から発出される膨大な数の薬事規制情報を収集・分析し、必要に応じて変更対応を社内や製造委託先に適用していくため、各種規制要件や科学的データを分析して合理的な判断を行う能力や、プロジェクトマネジメント能力も必須です。製品リスク発生時にはその対応や予防策の立案なども仕事となるため、危機管理能力や問題解決スキルも求められます。
4. 薬事職のキャリアパス

Q. 新卒から薬事職に就職することは可能ですか?
A. 新卒から薬事職に就く方は、非常に稀ですがいらっしゃいます。おそらく、その方の資質やこれまでの研究内容等と企業が求める人物像のマッチ度が高かったのだと推測されます。
製薬業界は学歴や資格よりも経験を重視する傾向が強く、現在エイペックスが取り扱う製薬企業の薬事職の中に未経験者向けのものはありません。中途採用は即戦力人材を求める目的であるため、最低でも2年程度以上の薬事職としての経験が要件に含まれます。
Q. 薬事職に就く王道のキャリアパスは何ですか?
A. 薬事のキャリアに進みたい場合には、まずは製薬企業に就職することを目指し、薬事部門ではなく臨床開発などの他部門で経験を積み、そこからキャリアチェンジを目指すのが王道のキャリアパスです。
また、製薬メーカーよりもCRO(Contract Research Organization)のほうが一般的に採用に関して柔軟です。
CROには「薬事コンサルタント」という職種があることが多いのですが、日本市場に参入したばかりの海外の製薬企業やバイオテクノロジー企業が、日本で治験を行う際にCROに業務委託することが多くあるため、そこで薬事として活躍の場が多くあります。
CROはさまざまな企業から治験業務を受注するため、携わる製剤の数や種類も豊富であり薬事としての経験値を上げるのに適しています。そのため、CROで薬事としてのキャリアをスタートさせてから将来の選択肢を増やしていく方が、結果的に理想のキャリアへの近道となることもあります。
Q. どの部門を経て薬事職にキャリアチェンジする人が多いですか?
A. 開発薬事の業務は臨床開発との親和性が高いため、何らかの臨床開発でのポジションを経て開発薬事職に就く方が多いです。また、数は少ないですがPV(ファーマコヴィジランス)やCMC薬事からキャリアチェンジされる方もいらっしゃいます。
薬制薬事の場合、その関連性からGQPやGMP関連などの品質関連ポジション、もしくは安全性・PVからキャリアチェンジされる方が多い印象です。
Q. 薬事職に就いたあとはどのようなキャリアパスが考えられますか?
A. 薬事職の方がどのようなキャリアを描いていくのかは、その方が薬事職の前に就いていたポジションによるところが大きいでしょう。
他部門での経験を積んでから薬事職に就き、その後は薬事と親和性の高い職種にキャリアチェンジされる方もいらっしゃいます。例えば、薬価設定や保険償還を担当するプライシングや、規制当局との関係構築や政策提言を担当するガバメントアフェアーズ(エクスターナルアフェアーズ)、薬剤の経済的価値の最適化を目指すマーケットアクセスなどが例として挙げられます。
また、キャリアをスタートさせる企業の規模によってもその後のキャリアパスが変わる傾向があります。
例えば大手製薬企業の場合、中小の企業に比べて業務が細分化されていることが多いため、スペシャリストを多く採用する傾向にあります。そのため、携わっている分野を自身の強みとして、若手の段階から大手企業に転職してキャリアアップを叶えたり、昇進を目指していくことも可能です。マネージャー職であってもプレイングマネージャーや、部下なし管理職の募集が多くありますので、強みとなる分野をお持ちの方は、若いうちからキャリアアップを視野に入れた転職を意識してキャリアパスを考えましょう。
一方、中小の製薬企業の場合は一人で担当する業務範囲が広く、幅広い経験が求められるため、比較的年齢の高いシニア層に対しても柔軟に採用を拡大しています。 そのため、大手製薬企業のノウハウを持つ経験値の高い人材を求める中小企業と、キャリアの終盤で大手製薬企業でこれ以上のキャリアアップが難しいシニア層の方は相性が良く、大手から中小への転職が比較的スムーズで採用も多い傾向にあります。
ただし、どのようなキャリアを歩みたいかについては、バックグラウンドや志向により様々です。部下を持ちたい方もいれば、ハンズオンで主体的に仕事をしたい方もいらっしゃいます。自身の強みは何なのか、どの分野により関心を持っているかなど、一度自己分析してみるのがおすすめです。
5. 薬事職のキャリアアップとは?
Q. 薬事職としてのキャリアアップにはどのようなものがありますか?
A. まずは、スタッフ→部下なしマネージャー→グループマネージャー→ディレクター→部門ヘッドなど、役職を上げることでキャリアアップや年収アップを目指す方法があります。
30代から40代の方は、一般職または部下なし管理職から転職を目指す方が多いのですが、役職の高いポジションに就くためには、早いうちにピープルマネジメントの経験を積んでおくことがとても重要です。 40代後半から50代中盤までの方でピープルマネジメントの経験があれば、グループマネージャーやディレクターなど高いレベルでの転職も可能です。
すでにディレクターなどを経験された方で薬剤師の免許を持っている場合は、総括製造販売責任者のポジションでの転職が考えられます。キャリアの終盤で、薬事部門のヘッドや総括製造販売責任者になれると、薬事職としてのキャリアにおいて大きな成功を果たしたといえるでしょう。
昇進以外のキャリアアップで考えられるのは、再生医療や遺伝子治療などの画期的な治療法を担当することで、複雑な規制要件に対応できる経験値の高い薬事職として市場価値を高める方法があります。そういった意味では、やはり魅力的なパイプラインが豊富であったり、オンコロジーやヘマトロジー、希少疾患に注力する企業に転職し、薬事職としての経験値を上げることがキャリアアップの鍵となります。
Q. 開発薬事と薬制薬事でキャリアアップ実現のポイントは違いますか?
A. 開発薬事職の場合、開発薬事の前に臨床開発などの経験が十分にある場合には、R&Dヘッドへのキャリアなども可能性としてあります。
キャリアアップのためには、やはり承認取得の成功実績が重要で、取得までの関係者との調整や問題発生時にどう解決に導いたのか、当局との交渉のノウハウといった経験やスキルを積んでいく必要があります。
また、今後国際共同治験が増加しグローバル薬事の重要性がますます増加すること、医療ビッグデータおよびリアルワールドデータ(RWD)の活用がさらに促進されること、再生医療・細胞治療・遺伝子治療・希少疾患など、特殊な申請プロセスが必要なケースが多く発生することが予想されますので、これらを意識して経験を積んでいくと良いでしょう。 ポジションが上がるにつれてグローバルとのコミュニケーションも多く発生するため、ビジネスレベル以上の英語力もキャリアアップ実現のポイントとなってきます。
薬制薬事の方であれば、品質保証やコンプライアンス系のポジションにキャリアチェンジし、その後品質管理責任者に就くケースもあります。
薬制薬事であっても、承認維持のために申請関連業務の知識が必要となるため、各国の規制に関する知識や承認申請、臨床試験の業務経験があるとプラスになると考えられます。 RWDの活用促進も予想され、データ解析の知識だけでなく、さらにそれを使った承認申請書類や再審査のための報告書の作成スキルが求められるようになってくると考えられますので、意識して取り組まれるのが良いと思います。
6. 薬事職の転職成功のポイント
A. 薬事職の方にとって、承認取得の成功はキャリアのマイルストーンとなります。転職希望者の方とお話をしていると、現在担当している申請業務が終わってから転職を考えるという方が非常に多く、薬事職の転職における一つの特徴となっています。
しかし、自身の強みや志向にマッチする理想の求人はいつでも転職市場にあるわけではなく、タイミングに左右されることがあります。仮に運良く希望の求人が見つかったとしても、必ずそのポジションで内定がもらえるという保証はなく、薬事職の場合長いスパンで市場情報を見ていくことが大切です。
申請業務が残っている状況を踏まえて現職に残るという選択肢を持ちつつ、転職エージェントなどから興味があるポジションについては積極的に話を聞いてみてください。そして、もし興味のあるポジションに出会ったらまずは応募してみて、企業から直接将来性や条件などを聞きましょう。そのうえで、現職を含めて比較検討するということも可能です。
エイペックスでは、今すぐの転職は考えていないという場合でも、登録だけして自分の希望を伝え、常に情報収集を行っている方も多くいらっしゃいます。 忙しいあなたの代わりに転職のプロの立場から情報収集を行い、最新の求人情報を定期的に共有しています。どんな企業が今ホットなのか、給与の相場はどれくらいなのか、同時に自分の市場価値もわかるようになり、いざ転職しようと思ったときの交渉の目安にもなります。
エイペックスでは最新の求人情報の案内のほかにも、履歴書・職務経歴書の作成サポート、面接情報の共有や想定質問の洗い出し、面接対策、内定時の給与交渉までを一貫してサポートしています。効率的に希望のポジションまで辿り着き理想のキャリアを叶えるためにも、ぜひ一度エイペックスにご相談ください。
