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製薬業界で注目が高まるマーケットアクセス・プライシングポジション

医療業界ではマーケットアクセス、プライシングという職種がありますが、具体的にどんな業務なのかご存じですか?複雑化する製薬市場ではこのポジションの重要性が近年増しています。そこでエイペックス製薬チームのベテランコンサルタントに、このポジションの仕事内容やニーズの上昇、求められるスキル、採用動向などを聞きました。

Q. マーケットアクセスやプライシングとはどのようなポジションなのですか?

各製薬企業は製品の開発に多額の費用と年月をかけています。そのため、開発費用の回収や利益の創出のために薬価の設定が非常に大切である一方、毎年膨らむ医療費の高騰により薬価設定や保険償還の環境は年々厳しくなっています。

そのため、有効性、安全性といった臨床的価値に留まらず、医薬品の経済的価値の最適化を実現し製品をベストな状態で市場に出すため、様々な意思決定者と関わりながら戦略とアプローチを定義するのがマーケットアクセス部門の役割です。そのなかでも特に、薬価に関わる戦略策定や交渉、申請、保険償還対応などを行うのがプライシングとなります。

日本の市場は欧米のトレンドを追うかたちが一般的ですが、欧米同様マーケットアクセスの役割は年々増しており、日本で展開するグローバル企業や国内企業もその機能を強化しています。

Q. どの部署に所属するポジションなのですか?

マーケットアクセスやプライシング部門は企業によってその組織体系が様々であるのが特徴です。

最も見られるのが、マーケットアクセス部門が存在しその中に薬価&保険償還担当、ガバメントアフェアーズ、医療経済、HTA(医療技術評価)、HERO(費用対効果分析とアウトカムリサーチ)担当などが在籍する場合です。特にガバメントアフェアーズは、政府の方針が開発中の製品にとってネガティブなインパクトがないよう政府や公的機関の関係者と交渉する立場にあり、製品をベストな状態で市場に出すという点ではマーケットアクセスの役割と類似しているため同じ組織に属していることが多くあります。

また、中小規模の企業ではCEO直下でマーケットアクセスやメディカル、ガバメントアフェアーズを置いて戦略面で緊密に連携し相乗効果を狙う企業もあります。

また、マーケットアクセスに関しては同じくステークホルダーとの交渉を主とするガバメントアフェアーズと統合させ、プライシングに関してはマーケティングやファイナンスとともにコマーシャル面の戦略構築をリードする立場として、コマーシャル部門に組み込んでいる企業もあります。

Q.なぜ今、製薬業界でこれらのポジションのニーズが高まっているのですか?

昨年から薬価改定が毎年になるなど政府による薬価抑制への圧力は年々増しており、製薬会社にとって望ましい条件で償還リストに載ることが厳しくなっています。欧米でも薬価の高騰は大きな課題であり、日本の市場と同様です。

このような薬価への関心の高まりなどを受け、患者団体や保険組合など薬価設定に関わるステークホルダーが複雑化、顕著化していること、加えてHTAの導入など費用対効果の重視、医薬品の経済性への関心が高まっていることなどから、製薬会社にとって売上を確保するためにもそのコントロールが重要となっています。そこで、広がりつつあるステークホルダーに対応しながら医薬品の経済的価値を最大化させることが任務であるマーケットアクセスの役割が重要になっていると考えられます。

Q. 具体的にはどのような業務を行うのですか?

企業によって所属する部署や業務範囲が違うため一概には言えませんが、マーケットアクセスはその医薬品の価値創造のための最適なシナリオを作成することが主な職責と言えるでしょう。そのため外部内部の様々な部署・関係者と連携しながら、複数年に渡る市場アクセスの戦略・戦術を策定、実行、モニタリングすることが任務となります。潜在的な開発や規制のシナリオの影響を分析し、開発やコマーシャルに対し戦略的な意見を提供できることが大切です。

またグローバル企業の場合、グローバルチームとの協働も職務となってきます。グローバルな価値提案を日本に反映させるための活動、もしくは日本独自の価値提案を作成するなど、いずれにしてもグローバルと緊密に連携することが求められるでしょう。

また、ガバメントアフェアーズやIRと連携し政策提言、権利擁護などアドボカシー活動をサポートすることもあるかもしれません。

プライシングに関しては、有利な薬価・償還条件の獲得やライフサイクルを通した価格低下の抑制のための薬価交渉戦略の策定や資料作成、戦略実行が主な職責となることが多いでしょう。償還の可能性や将来の薬価を調査の実施等で予測し薬価算定を行うことで、ライセンスなど経営上や開発上の意思決定に貢献することができます。医療政策、薬価制度、価格設定ルール等に関する情報収集、分析、社内への周知も大切な任務となりますし、薬価交渉や薬価改定において資料作成やヒアリング対応、情報交換等当局への対応も必要となるでしょう。

Q. どんなスキルが求められますか?

まず、長期に渡る包括的な視点による戦略構築と実行の能力が必要となります。採用面接では、あなたの過去の実績の中で具体的な戦略構築と実行の成功事例をアピールする必要が出てきます。臨床や経済性のデータ分析から導き出される洞察力や隠れたニーズの掌握力も必要です。

また、内部外部ともに非常に多岐にわたるステークホルダーとの協働やコミュニケーションが必要なポジションのため、クロスファンクショナルなチームでのコラボレーション、プロジェクト管理能力、様々な利害関係者との交渉、コミュニケーション能力も求められます。独断で行動することよりも多くの関係者との協働のうえで業務を行うことが多いため、チームワークが大切です。

そして、グローバルなマインドセットを持っていることも重要です。会話、読み書き両方での英語力も求められるでしょう。外部内部ともに目まぐるしく変化する環境に柔軟に対応できることも大切です。面接の際には、STARメソッドを用いてそれらのスキルを保持していることを証明できるようにしておきましょう。

Q. どんな人材が採用されやすいですか?

戦略構築の中での意思決定者や、業界団体などとのコネクションがある方が選ばれやすい傾向にあります。コネクションが大事なポジションであるため、製薬業界未経験でも、医療機器ライフサイエンス企業出身の方、大手コンサルティングファーム出身の方でマーケットアクセスやプライシングに関わっていた方も採用されやすい傾向にあります。

製薬業界に従事されている方であれば、開発や薬事、コマーシャル戦略に携わっていると対象となってきます。HTAやHEROの知識や経験もプラスとなるでしょう。マーケティングやサイエンス分野での学歴も歓迎要件となることも多くあります。

いずれにしても、横断的な組織でステークホルダーと調和が図れる優れたソフト面をお持ちの方が望まれるのは間違いありません。

Q. 採用動向に何か変化はありますか?

内部を含め様々な関係者との協働やコネクションが必要であるため、恐らくポジションの空きが出た際には内部の人材から選ばれることが多いと推測します。ただ、市場を見る限り数は多いわけではありませんがコンスタントに募集が出ている印象です。実際にポジションがオープンになると応募者も複数いらっしゃるので、常日頃からこのポジションを目指している方も一定数いらっしゃるのだと思います。

Q.最後に求職者にアドバイスをお願いします。

マーケットアクセスやプライシングは、経営判断を直接左右するやりがいの大きいポジションであるのは間違いありません。ペイシェントファーストの観点から言っても、ご自身の業務が患者の薬剤へのアクセスを高め生活の質の向上に繋がるのであれば大きな喜びとなるでしょう。ポジションに対するニーズは今後も高まっていくことが予想され、当然経験者は自身の市場価値も高められると言えます。業務も多岐に渡り様々な経験が得られるため、前職の経験も含め今後のキャリアにとって大きなプラスとなるでしょう。

ただ、他の多くの職種のように常にたくさんの求人が出ているわけではありません。エイペックスのような転職エージェントを利用しながら募集のタイミングを逃さないのも成功のためには必要です。エイペックスでは求人情報提供からキャリア相談、内定・入社後まで一貫したサポートを無料で求職者の方に提供していますので、マーケットアクセス含め今後のご自身のキャリア形成にとってどんな選択をしたら良いのか、是非一度ご相談をされてみてください。

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