企業で行われる人事考課(人事評価)制度は、従業員の能力や成果を多角的かつ総合的に評価し、人事決定や教育訓練への活用のほか、従業員自身の目標設定に役立てられたりする重要な制度です。
この人事評価制度の活用には公平性や透明性が不可欠であり、そこで重要な役割を果たすのが「自己評価」です。しかし、企業に提出する「自己評価シート」に、「何を書けば良いのかわからない」「自分の頑張りを上手く書くことができない」など、書き方に慣れるまでに時間がかかる人が多くいます。
そこで本記事では、自己評価の書き方のコツや作成のステップ、注意点など実践的な自己評価の方法をアドバイスします。
目次
企業から求められる「自己評価」とは?
企業が自己評価を求める目的とメリット
企業が自己評価を求めるデメリットと注意点
自己評価をはじめる前に ~目的設定とアプローチ
自己評価を行う5つのステップ
自己評価シートの書き方のコツ
自己評価が高い人・低い人の特徴
自己評価を成功に導くための3つのヒント
自己評価が上手く書けない理由も知っておく
自己評価の方法についてよくある質問(FAQ)
自己評価に困ったら、人材コンサルタントの力を借りるべき?
企業から求められる「自己評価」とは?
「自己評価」とは、一定期間における自身の業績・スキル・行動を客観的に振り返り、それに基づいて現状を把握し、将来に活かすために行われるものです。
自己評価は、自身のキャリアの方向性や次なる目標設定を支える重要な礎となりますが、主に、
定期的な評価面談
昇進審査
新しいあるいはさらに上位の職務(プロジェクトリーダーなど)の選抜
などの場面で、企業側から自己評価が求められます。
一般的には、企業で半年~1年ごとに行われる人事評価の一環として、企業独自の「自己評価シート」等を提出することで行われます。提出後は、それをもとに上長と面談を行い、評価内容のフィードバックやすり合わせ、今後の課題・目標について話し合います。自己評価の精度が高いほど、上司や人事からの評価も高まり、仕事に対する意欲や成果を認められやすくなります。
従業員個人の立場からは、自己評価を行うことで自分に何が足りないのか、どんな分野が得意で成長の余白があるのかなど、今後の改善点やキャリア目標の設定などに役立てる目的を持ちます。
また、転職時に自分のスキル・強み・弱み・実績等を書き出してアピール材料にするために行うこともあります。
企業が自己評価を求める目的とメリット

企業の立場からは、人事評価で社員に自己評価を求める目的とメリットがあります。
主な目的は、以下になります:
社員のモチベーションや成長を促進できる
評価の透明性と公平性が確保できる
対話が増え、信頼関係の構築につながる
人事戦略への活用で組織の生産性が向上する
下記で詳しく見ていきましょう。
社員のモチベーションや成長を促進できる
自己評価制度は、従業員に自身の行動や達成度を体系的に振り返る機会を提供します。これにより、日常の業務のなかで埋もれがちな成果や努力も可視化され、次のアクションや学習目標が明確になります。さらに、組織が個人の自己評価を尊重することで、従業員のモチベーションや自己肯定感が高まる効果も期待でき、学習意欲の向上や職務上での成長などにつながるメリットがあります。
評価の透明性と公平性が確保できる
自己評価を人事評価の正式なプロセスに組み込むことで、「上層部や上司の意向で昇進が見送られた」「〇〇プロジェクトに主体的に取り組んだのに、全く評価されなかった」など、従業員が「不当な評価を受けた」という感覚を抱くことが少なくなります。評価方法や期待値が明確であるため、社員もどんな行動を取れば評価されるのかを理解でき、透明性・公平性の確保につながります。
また、社員からも業務上の工夫や努力した点など、上司が気づかなかったフィードバックを聞くことでお互いの理解が深まり、より公平で包括的な評価につなげることができます。
対話が増え、信頼関係の構築につながる
自己評価シートの提出に基づき面談やフィードバックを行うことで、単なる結果報告の場ではなく、今後の成長や役割の拡大を見据えた建設的な対話が期待できます。
上司も、それぞれの従業員が「何に悩んでいるか」「どのような点に積極的に取り組んでいるか」を把握できるため、個々人に合わせた精度の高いアドバイスができ、信頼関係の構築につながります。
人事戦略への活用で組織の生産性が向上する
自己評価制度で得られたデータは、従業員一人ひとりの強み・弱み・志向性を組織的に把握し活用するうえで、非常に有効な情報源となります。
たとえば、個々人のスキル分布やキャリア志向を可視化することで、
プロジェクトごとに最適な人材を配置できる
将来的なリーダー・マネージャー候補者の発掘に役立つ
従業員それぞれに対し、より綿密で最適な育成計画を立てられる
今後の組織拡大や経営戦略の実現に向け、人材確保・配置の計画が立てられる
などのメリットが得られます。これにより、組織全体の持続的な成長を支えることができ、生産性を最大化させることが可能になります。
企業が自己評価を求めるデメリットと注意点
企業が自己評価制度を導入するメリットは多くありますが、一方デメリットも存在します。
「自己評価シートの評価」という仕事が増える
自己評価シートは、ただ書かせれば良いというものではありません。その自己評価シートを「評価」する工程が必要となるため、仕事が増えます。
また、評価項目や基準・目的が曖昧であったり、ガイドラインがないなど上手に運用できていないと、かえって評価に対し従業員の不審を招く恐れがあります。人的リソースやシステム面の準備とともに、従業員が納得感を持って取り組めるような運用設計が不可欠です。
「主観性をどこまで考慮するか」が難しい
自己評価は、個人の価値観や経験の影響を受けやすく、客観的な自己評価が困難なケースもあります。特に、昇進や処遇を決定するための評価となれば、「評価されやすくするための記述」に偏ることもあります。
運営の際には、処遇の決定よりも自己成長の機会となることを強調し、評価者による定期的なレビュー等の対策が必要となってきます。
定期的に運用や制度の見直しが必要
自己評価制度は、導入時の目的や組織の期待が十分に共有されていなければ、単なる事務作業に陥ってしまう可能性があります。制度によってそれぞれの成長や課題解決の方法を探ること、また対話を促進させることが目的であるのに、「自己評価を上手く行うこと」が目的となってしまうこともあるのです。
そのため、評価項目や運用手順の定期的な見直しを実施するとともに、現場の声を反映した柔軟な調整が欠かせません。また、制度の活用によって得られた成果や気づきを組織内で可視化し、自己評価がキャリアステップやパフォーマンス向上、学びのためのプロセスであるという意識を全体で共有していくことが求められます。
自己評価をはじめる前に ~目的設定とアプローチ

自己評価を始めるにあたり、最初に意識すべきなのは「評価を通じて何を得たいか」という具体的なゴール設定です。曖昧な目的のまま進めてしまうと、評価の精度や活用度が下がり、自身のキャリア開発につながりにくくなります。
まずは「目標」を定め、それに沿って自己評価シートを書いていくように意識しましょう。
目的設定のための具体的な3つのアプローチ
それでは、どのようなことを「得たいもの」「目的」とすれば良いのでしょうか。企業あるいは個人によって違いがありますが、基本的には下記の3つのいずれかを軸にすると考えやすいでしょう。
今期の挑戦や成果を言語化して、相手にアピールすることを目的とする:自己評価の場を、「上司へのアピールの場」として位置づけるのであれば、相手がわかりやすように「可視化しやすい成果」を強調することが大切です。
・この半年(または1年)で関わったプロジェクトの内容と自身の役割
・数値を使って具体的に示せる結果
・得られたソフトスキルや専門性
・乗り越えた課題と、今後の課題
などを記していきましょう。これらは自分の業務の振り返りを行い、来期以降に活かすという意味でも非常に有用です。成長のために必要な要素や、スキルギャップの把握に使う:「現在あるいは将来的に果たすべき役割と、その役割を果たすために必要なものは何か」を書き出すのも、自己評価の基本です。これを行うことで、現在の自分の弱みを把握できるうえ、上司に対しても「改善に対する強い意志と向上心がある」ことを印象づけられます。
現時点での自分の知識や所持資格は何なのか、今(将来)の仕事をするのに必要な知識や資格は何なのかを、対比して書いていきましょう。
ちなみにこれは、転職に向けアピール材料を増やすためにも有効です。ここで「足りない」と判断した資格やスキルを取得することで、より好条件の求人に応募できるからです。キャリアデザインの基盤をつくる:自己評価の焦点を、自分自身がどのような働き方や価値観を重視したいかに置くこともできます。
・将来的に担いたい役割
・リーダーシップを発揮したい分野
・目指している部署
などを、中長期的な視点で自己評価に盛り込むと、単なる現状分析にとどまらず、今後のキャリアデザインの礎となります。
なお、企業のなかにはこの希望・キャリアデザインの提示を、社員の異動の判断材料の1つにするところも多く見られます。
評価をしっかり行うことで、日々の業務で得た知見やフィードバックも、自己成長の材料として積極的に活用できるようになります。これによって、自分の望むキャリアパスを歩みやすくなるでしょう。
自己評価で重要な「客観性」と「具体性」
また、自己評価を作成するにあたりもっとも気をつけるべき点は、「客観性」と「具体性」です。
客観性:自己評価において、過度な謙遜や過大な自信はマイナス評価として判断されます。データなどを用いて冷静な視点で、「自分自身の組織内での役割や仕事におけるパフォーマンス」「自分の強みと弱み」「課題」を明確化しましょう。
具体性:たとえば、単に「貢献した」と記載するのではなく、「新規プロジェクトに〇〇として参加し、売上目標の+20%を達成した」など、具体的な数字を用いることで評価の信頼性が高まります。
ぜひ、この点を意識して自己評価を進めていきましょう。
自己評価を行う5つのステップ
ここからは、自己評価を行うための具体的な5つのステップについて解説していきます。
自己評価は、「成果」「能力」「課題と目標」の要素で構成されており、それぞれが論理的に結びついていることが大切です。そのため、自己評価は下記のような流れで行っていきます:
この半年(または1年)で関わったプロジェクトの内容と自身の役割を棚卸しする
具体的な成果を数字で示す
客観的に成果を評価する
自身が持つスキルについても評価する
改善点(課題)と今後の目標について書く
それぞれ紹介していきましょう。
① 関わったプロジェクトの内容と自身の役割を棚卸しする
まずは、この半年もしくは一年で自身が関わった業務やプロジェクトの内容と、そこでの役割をある程度簡潔に書き出します。具体的には、日々の業務レポートやプロジェクトの記録、時系列でまとめたアクションリストなどを参照しながら、事実ベースで自分の役割や達成度を可視化していきましょう。
たとえば、「〇〇領域のメディカルエデュケーションプログラムで、会議計画・運営・予算管理・ベンター管理等ロジスティクス管理を主導した」「〇〇製品の企画開発に参加し、原材料メーカーとの折衝役を主に担当した」などのようにします。このときには、下記の「具体的な数字」に結びつけられるように書いておくと、軸がぶれなくなります。
② 具体的な成果を数字で示す
業務内容が可視化できたら、そこから具体的な成果を数字で示します。たとえば、「顧客情報をより詳細に分析した結果、アップセルで15%、クロスセルで8%の達成率が得られた」「顧客アンケートで90%以上のユーザーから高評価を得られ、うち62%がリピーターになった」などのようなものです。
数字で表すのが難しい場合には、「定例会議で進行役を自ら担い、議題の事前整理と共有でミーティングの効率化と生産性の向上に貢献した」「新しいタスク管理ツールを導入し、メンバー間の進捗共有をスムーズにしたことで、各自がプロジェクトに集中できる環境を構築できた」などのように書いていくと良いでしょう。
数値以外にも、難易度の高い課題に対応した経緯や自ら工夫した改善策など、実績の裏付けとなる要素を整理しておくと自己評価の信憑性が高まります。
③ 客観的に成果を評価する
前述したように、自己評価は客観的な材料に基づいて行うことが大切です。数字や具体的な貢献内容、上司や同僚からのフィードバックを思い返し、俯瞰的に行う意識を持って自身の行動を評価しましょう。
自己評価が高すぎたり低すぎたりしてしまうと、本来得られるべき成長機会や適切なフィードバックを逃してしまったり、業務遂行に必要な客観性を疑われる恐れもあります。正直に自身の頑張りや行動を評価しましょう。
また、あまり成果が出せなかった業務があっても、隠すと逆効果です。上司は部下の業務内容を把握していますので、なぜ期待された成果が出せなかったのか、原因や今後の改善策まで話せるようにしておかないと、向上心がないと評価されかねません。失敗も学びととらえ、成長の姿勢を強調しましょう。
④自身が持つスキルについても評価する
プロジェクトでの自身の行動の評価とともに、スキルについても書き出しておくと上司の評価を得やすくなります。上記の成果と関連づけ、自分が持っているスキルを利用して、業務上の成功に結びつけた経験やエピソードを書きましょう。
専門的なスキルのほかに、コミュニケーションスキルなどのソフトスキルの評価も重要です。 「多国籍メンバーと協働し、文化の違いをふまえ柔軟にプロジェクトを進行した」「新しいITツールの導入に際し、チームの教育役を担いリーダーシップを発揮した」などのように書くと良いでしょう。
スキルや能力の自己評価では、主観的な記述に偏らず、実際のエピソードや定量的な成果、他者の評価などをバランスよく取り入れることで、信頼度の高いアピールとなります。後述しますが、足りないと感じるスキルがあれば、社内外の勉強会や資格の取得、新たなプロジェクトへの参加意欲など、自己成長への取り組みも明記するようにしましょう。
⑤ 改善点(課題)と今後の目標について書く
残っている課題に対しては、なぜ上手くいかなかったのか、その原因を下記のように洗い出します:
時間的な問題
個々人の性質や文化性による違い
資金面の問題
社会や経済、競合他社などの外的要因
物資面の問題
同時に、上司や同僚、顧客など異なる立場からのフィードバックを活用し、自分では気づきにくい思考の癖や偏りがないかなどを確認します。原因が分析できたら、課題に対する具体的な行動計画を、改善すべき点として下記のように記します:
来期は月初にプロジェクトの進捗確認を実施する
資料作成時に必ず第三者レビューを依頼する
コミュニケーション研修やプレゼン練習の場を設ける
大切なのは、課題をきちんと認識しており、改善に向けた行動計画があることを相手にアピールすることです。改善策の進捗や効果も自己評価シートに記録し、次回の振り返りに活用すると確実です。そうすることで、管理者側にも状況を共有しやすくなるでしょう。
自己評価シートの書き方のコツ

ここからは、自己評価シートの書き方のコツをご紹介します。
箇条書きや見出しを用いて読みやすくする
自己評価シートを作成するときには、「読み手が知りたい事実」が的確に伝わるよう整理されているかに意識を向けましょう。評価項目ごとに簡潔な見出しや小見出しを使い、内容が直感的に伝わる構成を意識します。一文は短く、段落を分けるなど読みやすい文章を心掛けましょう。
時系列をしっかり分ける
時系列はしっかり分けて書きます。
半年前のプロジェクト始動時の計画(「始動時は、前年比売り上げ120%を目標としていた」)
現在の進捗状況(「現在、前年比売り上げ110%である」)
反省点と今後改善すべき課題(「既存顧客からのクレーム対応に時間がかかってしまい、新規顧客獲得の施策に遅れが生じてしまった。クレーム対応を迅速に行うため、来月にFAQの整備を行う予定」)
というように分けて書くのが原則です。
表を上手く使う
表や図、リストを適切に入れることで、自己評価シートは読みやすくなります。会社側からフォーマットを支給されている場合はそれを使うのが基本ですが、自分で作る場合やカスタマイズできる場合は、これらを適宜使いましょう。特に、各項目でそれぞれ点数をつける場合などは、リストが便利です。
その職種にとっての成果を考える
自己評価の表現は、担当業務やポジションによって書き方が異なります。
営業の場合:「既存顧客との関係構築を重視し、これによって顧客維持率を向上させた」
人事や管理部門:「評価制度の改革プロジェクトを提案し、運用負荷を削減した」
技術職:「新規アルゴリズム開発で、システムの処理速度を10%アップさせた」
ヘルスケアや医療現場:「専門資格を取得し、チーム全体のスキル標準化を推進した」
といったように、それぞれの職域ならではの情報を盛り込みます。また、管理職であれば部下の指導やリーダーシップ、部署内での人間関係の調整経験を入れ込むようにするなど、立場による書き分けも必要です。
自己評価の例文を参考にしても良い
「自己評価シートの書き方は分かったが、実際に書こうとすると難しい」という人は、自分と近い職位・職業・業界の人が書いた自己評価の例文を参考にする方法もあります。
ただし、丸写しは厳禁です。例文を参考にして、自分の仕事内容や立場に合わせて、文章の構成や単語、展開を組み直していくことが大切です。
自己評価が高い人・低い人の特徴
どんなに客観的に自己評価を行ったとしても、会社や上司の評価と自身の評価が完全に一致することはあまりありません。
しかし、極端に自己評価が高い、または低いと、人事評価だけでなく普段の業務でも周囲との信頼関係を構築するうえで支障が出てしまいます。ここでは、自己評価が高い人・低い人の特徴について解説していきますので、自身が当てはまるかどうか確認しておきましょう。
自己評価が高い人の特徴
自己評価が高い人には、以下のような特徴があります:
自分の成長や目標達成に対し、強い意識を持っている
課題解決が必要な場において、積極的・主体的に行動に移せる
新しい役割や環境でも怖じ気づかず、自分なりの価値を発揮しようとする
リーダーシップがあり、目標達成のため周囲を巻き込むことができる
自分の成果を表現することをいとわずにアピールできる
ただ一方で、やや独善的な面を持つ人も多く、自分自身の考えに自信があるために他者の意見を取り入れにくくなる傾向があります。また、リスクを過小評価しがちな面もあります。
自己評価が高いのは、ビジネスパーソンとして多くの強みを持つ人に多いため良いことです。問題なのは、「本人の自己評価は高いが、実は能力はそれほどでもない」というケースです。この場合、自己評価シートでは非常に高い点数を書いているものの、それを見る人から「実際にはこんなに働けていないのに、過大評価だ。周りがどれほどサポートしているのかを自覚していない」として、非常に厳しい評価がなされることもあります。
自己評価が低い人の特徴
自己評価が低い人には、以下のような特徴があります:
謙虚であり、自身の成果を主張することが少ない
他者との協調を意識しており、共感性に優れている
慎重で計画的に行動できる
適切に現状分析ができ、リスク回避に優れている
多くの強みがある一方で、自己評価が低い人は「本来は評価されるべきこと」「本来はシートに記載すべきこと」を、「自分の手柄ではないから」として書かず、結果的に低い評価を得る恐れがあります。また、慎重さから新しいプロジェクトに参画する機会を失ってしまうことが多いというデメリットもあります。
自己評価は、高すぎても低すぎても良くありません。自分自身を客観的・中立的な視点でとらえる必要があります。
自己評価を成功に導くための3つのヒント
上記のように、過大な自己評価も過小な自己評価も、正しい自己評価シートを作成する際のデメリットとなり得ます。「正しい自己評価」ができることが、正しい自己評価シートを作成するためには欠かせません。では、どのようにして正しい自己評価が行えるのか、下記のポイントを意識し実践してみましょう。
① 業務内容の記録と定期的な振り返りの習慣を持つ
自己評価の内容を鮮度の高いものに保つためには、日頃から業務内容を正確に記録しておき、それらを定期的に振り返る習慣を持つと効果的です。
そのため、
プロジェクトの内容
目標とした数字
それぞれの段階での達成具合
などを資料として残し、随時見直しを行いましょう。
日頃から業務日誌やメモをこまめに残しておくと、後から「何をしたか」「どんな成果があったか」「どんな課題があったか」を具体的に思い出せるようになります。それらを週次や月次で見直すことで、自分の成長や改善点が見えてきます。
また、自身の業務内容だけでなく、チームやプロジェクト全体の進捗状況や、組織や市場に大きな変化があったときもそれらを敏感に察知し、資料に残すようにしましょう。現状の自己評価が本当に現実に即しているのかを再確認できたり、必要に応じて目標数字の修正等の対応が可能になります。
② 「なぜこれが起きたのか」分析する習慣を持つ
自己評価の信憑性を高めるには、業務で自身が取った行動や成果を冷静に分析する習慣を持つことも大切です。たとえば、目標達成の過程で発生した課題に対して、
なぜこのようなことが起きたのか
なぜ自分はそのような判断をしたのか
より良い代替案はなかったのか
などを振り返り、客観的に分析します。また、自分だけで考えていると、どうしても思考が偏りがちです。ほかの人の成功・失敗体験に触れたり、アドバイスを受けたりすることも客観性を育むには有効です。
③ 周りからのフィードバックを活用する
上でも少し触れましたが、正しい自己評価には他者からのアドバイスも非常に有用です。直接的な評価だけでなく、日常のコミュニケーションや、業務プロセスのなかから得られる周囲からのフィードバックに目を向けましょう。
会議
日報
社内SNSでのやり取り
日常のコミュニケーション
社内の親睦会
などを通じて他者からの意見を受け入れ、自分の行動や成果に対する「周囲の見え方」を整理していくと良いでしょう。また、
異業種交流会
外部セミナー
ボランティア活動
など、通常の職場を離れた場所で得られる気づきや課題も、自己評価の新たな材料として活用できます。第三者の視点を取り入れると、自己評価はより深みのあるものになります。
自己評価が上手く書けない理由も知っておく

自己評価をスムーズに書けない背景には、いくつかの理由があります。
時間がない
成果を言語化することが難しい
課題点について上手く書けない
それぞれ見ていきましょう。
時間がない
正しい自己評価には、正しい記録が欠かせません。しかし、多忙な現場では振り返りの時間を確保しにくく、印象に残っている出来事や断片的なエピソードだけが記憶に残りやすくなります。
そのため、自身の仕事の内容やプロジェクトの進捗具合、それぞれの段階での目標達成率などが記録しにくくなり、自己評価シートを書くときに「振り返る資料」がなくて困ることがよくあります。簡単なものであっても、日頃から業務日誌やメモをつける習慣が必要です。
成果を言語化することが難しい
自己評価で求められる「自分の強みや成果を具体的に表現すること」に、苦手意識を持つ人は、意外と多いものです。
特に、
業務内容が定量化しにくい
ルーティンワークが中心である
期待値や評価軸があいまいな職務に就いている
などの場合は、どこに焦点を当てて書くべきか迷いが生じがちです。その職種にとっての成果を明確にしておきましょう。
課題点について上手く書けない
自己評価では、成果だけでなく課題や改善点も正直に記載する必要がありますが、これを前向きな言葉でまとめることが難しいと感じる人もいます。
失敗や未達成事項をどこまで開示すべきか悩んだり、改善策まで言及できず筆が止まったりするケースは多く見られます。ポイントは誠実に事実を記すことですが、できるだけポジティブな表現を使用するよう心掛けましょう。
自己評価の方法についてよくある質問(FAQ)
自己評価の方法およびシートの作成方法について、よくある質問に答えていきます。
Q. 自己評価はどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. 会社から提出が求められたとき+自身のキャリアビジョンを見直したいとき
自己評価を実施するタイミングは、2つあります。1つは、「業務命令として提出が求められたとき」です。プロジェクトの区切り、もしくは半年/1年ごとの人事考査のタイミングで求められることが一般的です。
もう1つは、「自身のキャリアビジョンを見直したいとき」です。たとえば、新しい専門領域への異動や職務内容の更新、あるいは自己成長を実感したいとき、転職を考えているときなどがこれにあたります。
Q. 数値化しにくい業務はどう自己評価すれば良いですか?
A. プロセスの工夫などを記す
定量的な目標が設定できない・定量的な結果を出しにくい業務の場合は、プロセスの工夫や周囲へのポジティブな影響、主体的に行った業務改善、リーダーシップ等に焦点を当てて記述しましょう。たとえば、「未経験分野のタスクに自主的に挑戦し、業務の幅を広げた」など、ストーリー性のある貢献や成長の過程を具体的に表現すると良いでしょう。
Q. 自己評価で否定的な内容を書くと評価が下がりますか?
A. 基本的には下がらない
否定的な事実を記載しても、その内容がどのような気づきや行動変化につながったかを明示できていれば、むしろ前向きな評価につながることがあります。たとえば、「初動で判断ミスをしたが、その指摘を受けて関係者との情報共有ルールを再構築した」など、失敗から得た学びや再発防止への取り組みを、具体的に示すようにします。ただし、なんら改善策が提示できなかった場合や、過度にマイナスの表現を選んだ場合は評価が下がる可能性はあります。
Q. 他者の評価と自己評価が大きく異なる場合、どう対応すれば良いですか?
A. その原因を探るようにする
評価のギャップを感じた際には、第三者の視点を積極的に取り入れ、なぜ差が生じたのかを対話のなかで整理できるようにしましょう。たとえば、自分の強みや成果が周囲に十分伝わっていない場合は、「具体的な行動や成果を定期的に共有する工夫を行う」など、今後に向けた施策が必要です。
Q. 自己評価シートの記載欄が狭い場合、どのように工夫したら良いですか?
A. 優先順位を決めて、大切なところのみを書く
要点の優先順位を決めて、最も伝えたい成果やエピソードを端的にまとめましょう。たとえば、「前年比の売り上げ200%を達成した」「部門横断型プロジェクトに尽力し、生産性向上に貢献した」「今まで取引のなかった地域での販路を獲得した」など、インパクトの大きい実績や、独自の創意工夫に絞って内容を組み立てると、限られたスペースでも自身の価値が明確に伝わります。
Q. 自己評価の「書き方」や「例文」はどこで探せば良いですか?
A. インターネットが手軽、専門誌なども参考にする
インターネットで、「自己評価シート 例文 ●●(職種、『エンジニア』など)」と調べれば、例文がいくつか出てきます。また、評価制度に関する最新のトレンドや他社事例、現在の業界事情を踏まえたうえで自己評価シートを作りたい場合は、
専門誌
キャリアフォーラム
外部セミナー
勉強会
人材コンサルタントとの面談
などを利用すると良いでしょう。
自己評価に困ったら、人材コンサルタントの力を借りるべき?
自己評価を進めるうえで、業務の棚卸しや成果の言語化に壁を感じる人は少なくありません。特に自分の強みや成長を客観的に捉えたい場面では、個人の視点だけでは限界があるケースもあります。
そのため、以下のようなキャリアの転機では、専門家の支援を活用するのが効果的です:
異業種および異職種、異部門への異動
初めてのポジションチェンジ
管理職昇進
人材コンサルタントは、業界ごとの評価基準や必要スキルに精通しており、キャリア面談を通じて自己分析やキャリアの棚卸しをサポートしてくれます。転職時の面談対策にも対応しており、戦略的なキャリア形成の心強い味方です。
自己評価においては、経験の棚卸しが来期の目標設定や長期的なキャリアプランの基礎となります。また、自分では気づきにくい「弱み」の発見や改善策の助言も得られるため、より精度の高い自己評価が可能になります。ぜひ、人材コンサルタントに相談し、自己評価を自身の成長や次のキャリアに活かしましょう。
エイペックスでは、各業界の専門コンサルタントがあなたのキャリアの成功に向けた実践的なサポートと、最新の市場情報の提供を行っています。まずは無料相談からスタートして、情報収集からはじめてみませんか?ご興味のある方は、下記のボタンからキャリア相談会にお申込みください。