近年、「SaaS」は私たちの生活や仕事に欠かせないものになっており、転職を考えている方のなかでも「SaaS企業」の人気が年々増しており、採用募集も増加傾向です。
そこで、そもそもSaaSとは何か、SaaSの特徴や注目の企業、業界トレンド、どんな職種を募集していているのか、SaaS企業に転職するメリットや企業選びのポイントなどをわかりやすく解説します。
目次
そもそもSaaSとは何か
SaaSの主な6つの特徴
SaaSと混同されやすいIT用語とそれぞれの違い
ビジネスシーンでよく使われる代表的なSaaS
注目されるSaaS企業と特徴
今後のSaaS業界における3つのトレンド
ITエンジニアがSaaS業界で求められるスキル3選
SaaS企業に転職するメリットと企業選びのポイント
SaaS企業への転職成功のコツ
そもそもSaaSとは何か

SaaSは正式には「Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」といい、略してサースもしくはサーズと呼ばれています。
従来、消費者はソフトウェアを購入してパソコンにインストールする必要がありましたが、SaaSのサービスモデルではソフトウェアはオンラインで提供されるため、利用者は定期購読さえすればいつでも最新の状態でソフトウェアを利用することができます。
こうしたソフトウェアサービスを開発・提供しているのが「SaaS企業」で、コロナ禍でのリモートワークの普及が大きな要因となって急拡大しています。仕事で使用するソフトウェアだけでなく、生活のあらゆる場面でオンライン上でのサービスは必要不可欠となっており、今後もその傾向は拡大していくでしょう。
SaaSの主な6つの特徴
では、従来のインストール型のソフトウェアと違ってSaaSにはどんな特徴があるのでしょうか?
すぐに導入できる:従来のようにソフトウェアをインストールする必要がないため、アカウントを取得して必要な設定をすればすぐに利用を開始することができます。
コストが抑えられる:SaaSではソフトウェアを購入する買取り型でなく、サブスクリプション(定期購入)のビジネスモデルがほとんどであるため、初期費用が抑えられます。
カスタマイズが可能:SaaSのサービスは必要な機能や予算に応じてプランを変更したり追加したりすることが容易なため、事業の成長に合わせて効率的にリソースを活用したり適切にコストを管理したりすることができます。
いつでもどこでもアクセスできる:SaaSはクラウドベースで提供されるため、従来のようにソフトウェアがインストールされたデバイスを使用する必要がなく、インターネット回線があればいつでもどこでも利用が可能です。
複数人で同一のサービスが利用できる:会社や家族など、複数の利用者が同じアプリ等を共有して利用することが可能なため、同じ内容を違う利用者が同時に閲覧してクラウド上で作業することができます。
利用者の負担が少ない:ソフトウェアのバージョンアップなどは提供企業が行ってくれるため、利用者は常に最新のバージョンを利用することができます。また、データはオンラインストレージ上で保存されるため、管理やセキュリティ対策についても少ない負担で利用することが可能です。
このように、SaaSのビジネスモデルは業務の効率化や生活の利便性の向上を求める現代の人々の在り方に非常に適合しており、SaaSを開発・提供する企業、導入する企業ともに増加傾向にあります。
SaaSと混同されやすいIT用語とそれぞれの違い
ここで、SaaSによく似たIT用語がいくつかありますので整理しておきましょう。どれもインターネット経由で提供されるサービスを指すため、意味的にも混同しやすい用語です。
ビジネスシーンでよく使われる代表的なSaaS

SaaSの特徴が把握できたところで、ビジネスでよく利用されるSaaSのサービス内容を具体的な例として挙げましたので、下記で見てみましょう。
コミュニケーションツール:
Microsoft Teams、Discord、Slackなどリアルタイムでチームメンバーとコミュニケーションが取れるチャットツールや、Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなどのビデオ会議ツール、Gmail、Outlookなどのメールツールが代表的なSaaSとしてのコミュニケーションツールです。
Microsoft Teamsであれば、WordやExcel、PowerPointなど同じMicrosoft製品との連携が取りやすく、ファイルの共有も簡単に行えるため会議中に参加メンバーでファイルの編集ができるなどの特徴があります。
プロジェクト・タスク管理ツール:
Trello、Asana、Monday.com、Redmineなどはプロジェクトの進行状況を管理し、チームメンバーと情報を共有するためのプロジェクト・タスク管理ツールです。
Redmineであれば、汎用的に使えるタスク管理サービスがあるなかでシステム開発に特化しているのが特徴で、チケット・ガントチャート・Wiki・リポジトリ・ニュースなどシステム開発の管理に必要な機能を備えており、プロジェクトの一元管理が可能です。
バックオフィス業務支援ツール:
経理や財務、法務、人事などバックオフィス業務をサポートするツールも数多くあります。QuickBooks、Xero、マネーフォワード、弥生会計オンラインなどの会計ソフト、Clio、MyCase、LegalOnCloudなどの法務管理ソフト、Zoho PeopleやWorkdayなどの人事管理ソフトなどが代表例です。
バックオフィス業務は法改正に影響されることが多くありますが、SaaSのサービスの場合自動で法改正にも対応するため、ユーザーは業務に集中することができるのが特徴です。
データストレージツール:
Google Drive、OneDrive for Business、Box、Dropbox Businessなどはクラウド上でファイルの保存や共有、編集が可能なデータストレージサービスです。
例えばDropboxであれば、ローカル保存したファイルとの自動同期などの豊富な機能性や、Microsoft365やSlackなど他サービスとの連携が特徴です。
営業・マーケティング支援ツール:
Salesforce、Zoho CRMなどCRM(営業活動・顧客情報管理)ツール、HubSpot、Mailchimp、ActiveCampaign、MarketoなどMA(マーケティングオートメーション)ツール、LeadGenius、Pipedriveなどのセールスリード管理ツール、Google Analytics、Mixpanel、Tableauなどのデータ分析ツール、Zendesk、Freshdesk、Intercomなどのカスタマーサポートツールなどがあります。営業活動やマーケティング戦略を効率化し、顧客との関係を深めるための支援ツールです。
注目されるSaaS企業と特徴
SaaSを開発・提供する企業は数多くありますが、国内外で注目されるSaaS企業についてそれぞれの特徴とともに一覧で見ていきましょう。
外資系
特に有名なのが、営業支援・顧客管理システム「Salesforce」であり、営業活動支援・顧客情報管理・マーケティング活動支援を横断的に実施でき、一つのアプリで完結する完成度の高さが特徴。
ビデオ会議やオンラインイベントに欠かせない高い接続安定性とアカウントなしでも参加できること、参加人数の多いビデオ会議にも対応している点が特徴。
直感的に操作ができるわかりやすいUIが特徴で、利用者のストレスが低い。メンバー間の業務が可視化できることから、作業負荷の均等化の実現も可能。
以下のようにさまざまな機能を備えていることから、一つのプラットフォームで業務が完結できるほか、他ツールとの連携性もあるためツール間の切り替えに負担がかからない点も特徴。
・ドキュメント作成
・タスク管理
・ナレッジ共有
・スケジュール管理
MicrosoftといえばOSやオフィスソフトのイメージが強いが、近年は企業買収により多数のSaaSを提供する。各SaaSとMicrosoft製品を紐づけることで、さらなる利用者の囲い込みを行う戦略を打ち出している。
・Github:プログラムソースコードの管理SaaS
・LinkedIn:ビジネスコミュニケーションツールのSaaS
・Skype:ビデオ会議ができるコミュニケーションツールのSaaS
内資系
業務支援ツールの「Speeda(スピーダ)」は、膨大な経済情報の収集・アップデート・分析を行いビジネス上の意思決定をサポートするプラットフォーム。他にも、国内最大級のソーシャル経済メディア「NewsPicks」などを提供する。
オンラインストア構築サービスの「BASE(ベース)」は誰でも簡単にネットショップが作成でき、運用も容易であるため負担が少なくリソースを活用できる。
法務業務で集積されたデータを学習・整理して必要な情報を欲しいときに提供できるなど、AIを駆使したサービスでリーガルテックを実現する会社。
一般ユーザーは、Ubieで症状の質問に答えるだけで病気や対処法、医療機関が調べられ、医療機関はUbieで登録された問診を基に診察ができるなど、ヘルステックを実現する会社。
社名にもなっている営業支援ツール「Sansan」は、名刺や企業情報、営業活動情報を一元管理して共有するサービス。他にも、名刺管理アプリの「Eight」やインボイス管理サービスのBill One、契約書の一元管理サービスのContract Oneなどを提供する。
介護・看護ソフトの「カイポケ」はICTを活用した経営支援サービスで、介護・看護の記録やレセプト業務が行える。
今後のSaaS業界における3つのトレンド

このように、人々のライフスタイルやビジネスニーズの変化にともない、SaaSへのニーズも急拡大しています。
富士キメラ総研によると、日本のSaaS市場は2020年から上方修正が繰り返され、2023年には1.4兆円に到達、2027年頃には2兆円を超えると予想されています※。ネットやスマートフォンはすでに生活や仕事の基盤となっており、企業がSaaS業界に参入しやすい下地も整っています。
SaaSはアイデアと技術力さえあればスタートアップ企業が参加できる業界であり、すでに国内外問わず多くの企業が業界に参入し採用活動も活発ですが、業界における今後の傾向は大きく3つの流れになると予想されます。
AI・機械学習の活用:さまざまな業界でAI・機械学習を活用したデータ分析への需要が高まっていますが、SaaS業界にも同様の波が訪れています。AI・機械学習のアルゴリズムを活用して、タスクの自動実行やデータ分析からのインサイト生成、それらを意思決定に役立てるサービスが増えていますが、今後はさらに精度が向上したSaaSが利用できるようになるでしょう。
セキュリティSaaSの需要増加:ラウドやAIの普及により、個人でも企業でもセキュリティ対策への意識はますます高まっていますが、一方でサイバー脅威は高度化・巧妙化への進化が続いています。情報の安全性の確保のためには、常に最新のテクノロジーを導入・利用していくことが必須であり、その点でSaaS型のセキュリティサービスは相性が良いといえます。ユーザーが利用するデバイスの量・種類が増えていることからも、セキュリティ・プライバシーSaaSへのニーズは今後も増加していくことが予想されます。
コラボレーションの進化:今や多くの企業がさまざまな機能・分野でSaaSを利用していることから、各サービス同士の連携も重要になってきました。営業支援SaaSであれば、SalesforceやHubSpotなどのCRMソフトウェアとのつながりが求められ、プログラミング支援のSaaSであれば、AWSやAzureなどのクラウドプラットフォーム、DockerやKubernetesなどのコンテナオーケストレーションツールなどの連携が重要になるなど、今後は関連するアプリケーション間の連携が進化していくでしょう。
SaaS企業で働く場合の職種
では、SaaS企業に就職・転職を考える場合、一般的にどんな職種の募集があるのでしょうか?
①ITエンジニア
SaaS企業では現在多くのITエンジニアの募集がありますが、下記が募集の多い代表的な職種になります。
Python、FastAPI、Pandas、Spark/Hadoop、Ruby、Java、Node.jsなどのスキルが必要。
AWS CloudFormation、AWS CDK、GCP、Azure、Terraformなどのスキルが必要。
サーバ・ネットワーク等のインフラ設計・構築経験やSIEM・SOC・脆弱性診断等のスキルが必要。
高度なITスキルだけでなく、マネタイズ体制の確立のためのビジネススキルも求められる。
品質・人・コスト・スケジュールなどのプロジェクト管理スキルが必要。
特に日系のスタートアップSaaSでは、幅広い業務を管理できるシニアエンジニアの募集が多い。
※管理職転職の実態と成功のカギについては、こちらの記事をご覧ください。
②その他
ITエンジニアのほかにも、営業、マーケティング、カスタマーサクセス、データアナリストなどの募集があります。詳細は、エイペックスのIT業界専門のキャリア面談でお聞きください。
※2025年のIT業界の転職市場動向については、こちらの記事をご覧ください。
ITエンジニアがSaaS業界で求められるスキル3選

ここで、ITエンジニアとしてSaaS会社に転職を希望する場合、どんなスキルが最も求められるのかを見ていきましょう。
1. 幅広いIT技術と知識
SaaS業界で魅力的なサービスを生み出すためには、相応のITスキルと知識が必要です。プログラミングスキルはもちろん、インフラ周辺やセキュリティなど幅広い分野のスキルと知識が求められます。IPAが主催するIT国家試験などの受験を考えても良いでしょう。現状に満足せず、常にITスキルと知識を更新していける学習意欲が必須です。
2. 顧客思考
SaaS業界のITエンジニアには、クライアントが何を問題と考え、何を必要としているのかを見極めながら開発できる顧客志向の姿勢が求められます。SaaSはクライアントのニーズや要望を満たしてこそ利益を生むプロダクトであり、顧客が不要と判断すればすぐに中止・解約につながります。ITエンジニアは開発者目線でサービスを開発をしがちですが、顧客に長期で利用を継続してもらえるようなサービスを考え、開発ができるスキルが必要です。
3. 変化への対応力とスピード
SaaS業界はサービスの開発スピードが速く、業界自体の動きもスピード感がありそれに対応するスキルが求められます。サービスの開発・修正サイクルのスピードは他業界よりも速いため、技術的・思考力的にも対応できなければなりません。競合サービスの動きも監視・対応する必要があるため、柔軟な姿勢も不可欠といえるでしょう。
SaaS企業に転職するメリットと企業選びのポイント
ここで、SaaS企業に転職するメリットと企業選びのポイントについて、エイペックスのIT業界専門コンサルタントで多くの紹介実績を持つ田村 亮太から話を聞きました。
「SaaS企業への転職は、成長市場でのキャリア構築や最新技術に触れる機会が得られる点などが魅力です。
しかし、日系・外資を問わず多くのSaaS企業が台頭している現在、企業選びにおいては特に
プロダクトの強み
財務健全性
文化の適合性
などを慎重に確認することが重要です。一般的には、外資系の場合は成果主義的な企業文化を持つところが多く、そこにやりがいや成長を感じられるかどうかを見極めなければなりません。
また、営業職の場合は製品によって営業サイクルや営業先(IT部門か経営側かなど)が企業ごとに異なるため、自身の志向性や実現したいことを整理したうえで選ぶと良いでしょう。企業ごとの詳細な情報や面接準備については、ぜひエイペックスのコンサルタントまでお気軽にご相談ください!」
SaaS企業への転職成功のコツ
SaaSやSaaS企業を取り巻く環境についてお話してきましたが、SaaS企業に限らず転職活動の成功は、事前の準備にかかっています。
そのためには、しっかりとSaaS業界や興味のある企業について情報を収集していくのと同時に、自分自身についても「なぜ転職したいのか」「どんなキャリア描いていきたいのか」「5年後・10年後にどうなっていたいのか」「自分の優先事項は何なのか」といった自己分析が必要です。
また、同じポジションに応募しているライバルに勝つための戦略も必要です。「自分の強みは何なのか」「そのポジションで自分は何が実現できるのか」といった自己PRを熟考するとともに、自分自身のブランディングをしっかりと行っているほうが成功の確率が高くなります。
エイペックスのIT業界専門のコンサルタントはSaaS業界にも非常に精通しており、どんな企業だと内定獲得の可能性が高まるのか、そのためにどんな点をアピールしたら良いか、一人ひとりに丁寧にアドバイスを提供してくれます。まずは、コンサルタントとのカジュアル面談・キャリア面談で相談するところからスタートされてみてはいかがでしょうか。