最終更新日:2026年9月2日
「HRBPは一般的な人事と何が違う?」
「具体的にどのような仕事をする?」
「どのような経験やスキルが必要?」
と疑問に思っている方も多いでしょう。
近年、人的資本経営の重要性が高まるなか、事業戦略と人材戦略をつなぐHRBPへの注目が高まっています。本記事では、HRBPの役割や仕事内容、一般的な人事との違い、求められるスキル、HRBPになるためのキャリアルートまで、エイペックスの人事領域専門コンサルタントがわかりやすく解説します。
洞察提供者
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シリクル・シリピヤワタナ
2023年から、人事(HR)をはじめとしたプロフェッショナル・サービスチームに所属するプリンシパルコンサルタント。HRBPをはじめ、多岐にわたる業界の人事ポジションの紹介に多数の実績がある。特に、大手外資系企業から日系スタートアップまで、幅広い企業のハイクラス・マネージャーポジションの紹介を得意としており、最優秀シニアコンサルタントも受賞している。
要点サマリー(30秒)
HRBPは、事業責任者や経営層のパートナーとして、人・組織の側面から事業戦略の実現を支える戦略人事のスペシャリストです
採用や育成など個別の人事施策ではなく、事業課題を起点に人員計画・組織開発・評価など最適な人事施策を組み合わせて実行します
一般的な人事が各領域の専門業務を担うのに対し、HRBPは事業部門に入り込み、複数の人事領域を横断して課題解決を支援します
HRBPには、人事の専門知識に加え、事業理解・課題分析力・ステークホルダーマネジメント・推進力などが求められます
HRBPへのキャリアパスはひとつではなく、人事スペシャリストやジェネラリスト、コンサルタント、ビジネス部門などから目指せます
HRBP(HRビジネスパートナー)とは?役割と定義

HRBP(Human Resource Business Partner:HRビジネスパートナー)とは、事業責任者や経営層のパートナーとして、人・組織の側面から事業戦略の実現を支援する戦略人事を担うスペシャリストです。
従来の人事が、採用や労務、人材育成など機能別の業務を担うのに対し、HRBPは事業部門に深く入り込み、事業目標の達成に向けて人・組織の課題を解決する役割を担う点が特徴です。事業戦略や組織の状況を踏まえ、人員計画や組織設計、採用・配置、人材育成、評価・報酬など、複数の人事施策から最適な打ち手を考え、実行につなげる役割を担います。
そのためHRBPは、単に事業部門から依頼を受けて人事施策を実行する存在ではありません。経営層や事業責任者とともに、「事業目標を達成するために、どのような組織・人材が必要か」を考え、人事の専門家として意思決定を支援します。その意味では、社内の人事コンサルタントや経営コンサルタントに近い役割を担う職種ともいえます。
HRBPには、人事領域の専門知識だけでなく、担当事業のビジネスモデルや市場、事業戦略を理解する力も必要です。「人事」と「ビジネス」の両方の視点を持ち、人・組織への施策を事業成果や中長期的な組織力の向上につなげることが、HRBPの本質的な役割です。
HRBPが求められる背景
HRBPは外資系企業では以前から広く導入されてきましたが、近年は日系企業でも導入が進み、外資系・日系を問わず需要が高まっています。その背景には、主に以下の3つがあります。
人的資本経営の重要性の高まり
DX・M&A・グローバル化などビジネス環境の複雑化
事業部門ごとに異なる人・組織課題への対応
HRBPの需要が高まっている背景には、大企業や上場企業を中心に人的資本経営の重要性が増している点が挙げられます。人材を重要な経営資源として捉え、経営戦略と人材戦略を連動させることが求められるなか、人事部門にも制度の運用や人材管理だけでなく、事業成長に必要な組織・人材を経営視点で考える役割が期待されるようになっているためです。
また、DXやM&A、グローバル化など、企業を取り巻くビジネス環境が急速に変化していることも大きな要因です。企業が直面する経営・組織課題も複雑化しており、競争力を維持・向上するためには、事業の変化に合わせて組織体制や必要な人材を柔軟に見直す必要があります。こうした役割を、事業部門と伴走するHRBPが担うことができます。
さらに、同じ企業でも事業部門によって目標や必要な人材、抱えている組織課題は異なります。人材不足が続くなかでは、単に採用を増やすだけでなく、既存人材の配置や育成、組織づくりまで含めて最適な方法を考える必要があります。そのため、各事業責任者とともに課題を特定し、その部門に合った人事施策を考えて実行するHRBPへの期待が高まっているのです。
HRBPの主な仕事内容
HRBPの業務内容は企業によって異なりますが、共通しているのは、事業戦略の実現に向けて人・組織の課題を解決する役割を担う点です。代表的な仕事内容は次のとおりです。
ただし、HRBPはこれらの業務を個別に進めるのではなく、事業課題を起点に必要な打ち手を組み合わせ、事業責任者やCoE(Center of Excellence)、HRSS(HR Shared Services)などと連携しながら施策を推進します。
HRBPは事業課題を起点に人事施策を考える
HRBPの仕事は、「採用する」「研修を行う」といった人事施策から考えるのではなく、まず事業戦略や目標を理解し、その実現を妨げている人・組織の課題を特定することから始まります。
例えば、事業責任者が「来期は売上を30%伸ばしたい」と目標を設定した場合、HRBPはその実現に向けて次のような視点から組織の現状を分析します。
営業組織の増員は必要か
マネージャー層の育成は十分か
ハイパフォーマーの離職リスクはないか
評価制度は事業成長を後押しできているか
必要な人材を採用市場から確保できるか
そのうえで、採用で解決するのか、配置転換や育成を優先するのか、評価制度や組織体制を見直すのかを検討し、事業部門や各人事機能と連携して最適な施策を実行します。
また、実際の現場では人事戦略は企画して終わりではありません。例えば、
事業部長は採用を急ぎたい
現場マネージャーは育成に十分な時間を確保できない
人事部門は全社の公平性を重視したい
グローバル本社は制度やプロセスの標準化を求めている
といったように、それぞれの立場で優先事項が異なります。こうした異なる利害を調整し、事業成長につながる最適な着地点を見いだすこともHRBPの重要な仕事です。
HRBPと人事・人事企画・CHROとの違い
HRBPは人事部門に属する職種のひとつですが、一般的な人事や人事企画、CHROとは、担う役割や事業・経営との関わり方が異なります。

一般的な人事(人事スペシャリスト)が、採用、労務、人材育成など各領域の専門業務を担うのに対し、HRBPは特定の事業部門を担当し、事業目標の達成に向けて複数の人事領域を扱いながら人・組織の課題解決を支援する点が違います。
また、人事企画が全社横断で人事制度や仕組みを企画・設計するのに対し、HRBPは担当する事業部門の責任者と連携しながら、その事業に必要な人事施策を推進する点が大きな違いです。一方、CHROは経営陣の一員として、企業全体の人材戦略を統括します。
HRBP・CoE・HRSSの違いと役割分担
HRBPの役割を理解するうえで押さえておきたいのが、CoE(Center of Excellence)とHRSS(HR Shared Services)との関係です。
HRBPの考え方は、米ミシガン大学教授のデイビッド・ウルリッチが提唱した人事の役割モデルを源流としています。
ウルリッチモデルでは、人事機能を「HRBP」「CoE」「HRSS」の3つに分け、それぞれが専門的な役割を担いながら連携する考え方を示しました。外資系企業やグローバル企業では、現在でもこうした役割分担をベースとした人事組織が多く見られます。
簡単に整理すると、HRBPが事業部門の課題を捉え、CoEが専門的な人事施策を設計し、HRSSがその運用を支えるという関係です。
例えば、ある事業部門で「次世代リーダーが育っていない」という課題があった場合、HRBPは事業責任者とともに現状を分析し、必要な人材や育成課題を明確にします。そのうえで、人材開発を専門とするCoEと育成プログラムやタレントマネジメント施策を検討し、必要に応じてHRSSが人事データや運用面から支援します。
事業部門 ⇄ HRBP ⇄ CoE ⇄ HRSS
このように、HRBPがすべての人事業務を自ら担当するわけではありません。事業部門に最も近い人事のパートナーとして課題を把握し、CoEやHRSSの専門性・機能を活用しながら、必要な人事施策を事業成果につなげていくことがHRBPの重要な役割です。
参考:Dave Ulrich, Human Resource Champions: The Next Agenda for Adding Value and Delivering Results, Harvard Business School Press, 1997.
HRBPに求められるスキル
HRBPには、人事の専門知識だけでなく、ビジネス視点で課題を特定し、さまざまな関係者を巻き込みながら解決策を実行する力が求められます。特に重要なのは、以下の6つです。
ビジネス・事業への理解と洞察
課題分析・データ活用力
コミュニケーション・ステークホルダーマネジメント力
人事領域の専門知識
プロジェクトマネジメント・実行力
英語力・グローバル対応力
ビジネス・事業への理解と洞察
HRBPにとって特に重要なのが、担当する事業を深く理解する力です。事業責任者のパートナーとして意思決定を支援するには、ビジネスモデルや市場環境、競合、事業戦略、売上・利益などの主要なKPIを理解し、事業がどこを目指しているのかを把握する必要があります。
さらに、現在の状況を理解するだけでなく、事業戦略や市場の変化から「今後どのような組織・人材が必要になるのか」「事業成長を妨げる人・組織の課題は何か」を見極める洞察力も重要です。事業の情報から人・組織への示唆を導き出し、採用・配置・育成・組織設計などの最適な打ち手につなげることがHRBPには求められます。
課題分析・データ活用力
HRBPには、組織で起きている問題の背景を分析し、本質的な課題を特定する力も必要です。その際、経験や感覚だけに頼るのではなく、人事データや事業データを活用して仮説を立てる力も重要になります。
離職率、エンゲージメントサーベイ、人員構成、採用状況、パフォーマンスデータなどを分析し、「どの組織で何が起きているのか」「事業にどのような影響を与えているのか」を把握します。そのうえで、データと現場から得た定性的な情報の両方をもとに、必要な施策を検討することが求められます。
コミュニケーション・ステークホルダーマネジメント力
HRBPは、経営層や事業責任者、現場のマネージャー、従業員、CoE、HRSSなど、多様なステークホルダーと連携して仕事を進めます。そのため、相手の立場や課題を理解して信頼関係を築き、異なる意見や利害を調整する高いコミュニケーション力が必要です。
ときには、事業責任者の要望をそのまま受け入れるのではなく、人事の専門家として異なる意見を伝えることも求められます。相手との信頼関係を維持しながら建設的に議論し、合意形成につなげる力は、HRBPに欠かせません。
人事領域の専門知識
HRBPには、採用、人材配置、人材育成、評価・報酬、人事制度、組織開発など、人事領域に関する幅広い専門知識が求められます。また、人や組織に関する施策を適切に進めるためには、労働関連法令や就業規則をはじめとする人事労務の基本的な知識も欠かせません。
HRBP自身がすべての領域の実務を担当するとは限りませんが、事業課題に対してどの人事施策が有効かを判断するには、各領域への理解が必要です。より専門的な知識が必要な場合にはCoEや労務担当などと連携し、事業部門と人事の専門機能をつなぐ役割も担います。
プロジェクトマネジメント・実行力
HRBPは、人事施策を提案して終わる仕事ではありません。組織変革や人員計画、人材育成、タレントマネジメントなどの施策について、関係者と協働しながら導入し、現場へ定着させるところまで推進する力が求められます。
特に組織横断・グローバルなプロジェクトでは、複数の関係者との調整、スケジュール管理、進捗管理なども必要です。戦略を考える力と、それを実際の組織変化につなげる実行力の両方がHRBPには重要です。
英語力・グローバル環境での対応力
すべてのHRBPに英語力が必須というわけではありませんが、外資系企業や日系グローバル企業では、ビジネスレベル以上の英語力が求められるケースがあります。
海外本社へのレポーティングや会議、グローバルHRプロジェクトへの参加、海外のHRBP・CoEとの連携など、英語を使用する場面はさまざまです。また、語学力だけでなく、国や地域によって異なる文化や働き方、価値観を理解し、多国籍のステークホルダーと協働できるグローバルな対応力も重要になります。
HRBPになるには? HRBPになる代表的な4つのルート
HRBPになるために必須の資格や決まったキャリアパスはありません。人事領域で経験を積んでからHRBPへ進むケースが一般的ですが、人事・組織コンサルティングや事業部門で培った経験を活かして目指すことも可能です。

1. HRスペシャリストから目指す
採用、人材開発、人事企画、人事制度、労務など、特定の人事領域で専門性を身につけた後、担当領域を広げながらHRBPを目指すルートです。
HRBPでは特定の人事業務を担当するだけでなく、事業課題に応じて複数の人事施策を組み合わせる必要があります。そのため、専門領域で経験を積みながら、事業部門との連携や人・組織の課題解決に携わることで、HRBPに必要な経験を身につけやすくなります。
2. HRジェネラリストから目指す
採用、労務、人材開発、人事制度など、幅広い人事領域を経験したHRジェネラリストからHRBPへ進むルートです。
複数の人事領域に関する知識・経験を活かせるためHRBPとの親和性が高く、さらに事業責任者との連携や人員計画、組織開発など、事業課題に基づいて人事施策を企画・推進する経験を積むことでHRBPを目指しやすくなります。
3. 人事・組織コンサルタントから目指す
人事・組織コンサルティングの経験を活かして、事業会社のHRBPへキャリアを移すルートもあります。組織・人事戦略、組織変革、人的資本経営などに携わった経験は、HRBPの仕事との親和性があります。
一方、事業会社のHRBPには、課題を分析して施策を提案するだけでなく、事業部門や人事機能を巻き込みながら実行・定着まで推進する役割も求められます。そのため、コンサルティング経験に加えて、施策の実行まで関与した経験があると活かしやすいでしょう。
4. 営業・事業企画などビジネス部門から目指す
営業や事業企画、経営企画などのビジネス部門からHRBPを目指すことも可能です。事業への深い理解や課題解決、マネジメントなどの経験は、事業責任者のパートナーとなるHRBPでも活かせます。
ただし、人事未経験者をHRBPとして直接採用する求人は限られます。社内異動などを通じて人事業務に携わり、人事領域の知識や経験を身につけてからHRBPを目指すのもひとつの方法です。
HRBPになった後のキャリア
HRBPとして経験を積んだ後は、シニアHRBPやHRBPリード、Head of HRBPなど、HRBPとして専門性を深めるキャリアや、人事マネージャー、HRディレクター、CHROなど、人事組織を統括するポジションへ進むキャリアもあります。 また、人事企画やタレントマネジメント、組織開発など、CoEの専門領域へキャリアを広げることも可能です。
HRBPへの転職を検討している方は、「HRBPへの転職を成功させるには?」で、転職難易度や求められる経験、年収、求人動向について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
HRBPに関するよくある質問(FAQ)
ここで、HRBPに関するよくある質問に答えていきます。
Q. HRBPは人事部に所属するのですか?
A. HRBPの所属は企業によって異なります。人事部門に所属しながら特定の事業部門を担当するケースや、事業部門側に配置され、現場により近い立場で人・組織の課題解決を支援する場合もあります。重要なのは所属部署ではなく、事業責任者のパートナーとして事業戦略と人材戦略をつなぐ役割を担っているかどうかです。
Q. HRBPは採用や労務の実務も担当しますか?
A. 企業の人事組織によって異なります。HRBP自身が採用や労務、人材育成などの実務を担当する企業もありますが、CoEやHRSSなどと役割を分担している企業では、HRBPは事業課題の把握や人事施策の企画・推進に重点を置きます。そのため、同じ「HRBP」という職種名でも業務範囲は企業によって異なります。
Q. HRBPと人事部長・HRマネージャーの違いは何ですか?
A. HRBPは特定の事業部門を担当し、事業責任者と連携して人・組織の課題解決を支援する役割です。一方、人事部長やHRマネージャーは、人事部門や人事機能そのものを管理・統括する役割を担うのが一般的です。ただし、企業によってはHRマネージャーがHRBPを兼務するなど、役割が重なる場合もあります。
Q. HRBPはどのような企業に多いですか?
A. HRBPは外資系企業で広く導入されていますが、近年は日系の大手企業や上場企業でも導入が進んでいます。特に、複数の事業を展開している企業や、DX・M&A・グローバル展開などによって事業ごとの人・組織課題が複雑化している企業では、事業部門に入り込んで人材戦略を支援するHRBPの重要性が高まっています。
Q. HRBPの年収はどのくらいですか?
A. HRBPの年収は、企業規模や業界、担当する事業の規模、役職、責任範囲などによって大きく異なりますが、エイペックスが取り扱う求人で多いのは、年収1,000万円~1,500万円程度です。詳しい年収相場や求人動向については、HRBPへの転職を成功させるには?の記事で解説しています。
HRBPへのキャリアをお考えなら、エイペックスにご相談ください
HRBPは、人事の専門性だけでなく、ビジネスへの深い理解と洞察をもとに人・組織の課題を解決し、中長期に渡って事業成長を支える戦略人事のポジションです。HRBPになるためのキャリアはひとつではなく、人事企画や採用、人材開発などの人事経験に加え、コンサルティングや事業部門で培った経験を活かせるケースもあります。
一方で、企業によってHRBPに求める役割や経験、担当範囲は大きく異なります。「自分の経験からHRBPを目指せるのか」「今後どのような経験を積めばよいのか」を知るには、実際の求人や採用市場を踏まえてキャリアを考えることが重要です。
エイペックスでは、外資系企業・日系グローバル企業を中心に、HRBPをはじめとする人事領域のハイクラス転職を支援しています。HRBPへのキャリアチェンジや今後のキャリアについて検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。