転職理由は、面接で必ず問われる重要なテーマです。
「本音をどこまで話していいのか」「他の人はどのような理由で転職を決めているのか」
そうした疑問や不安を感じたことはありませんか?
とくに30代・40代になると、キャリア形成だけでなく家庭やライフスタイルとの両立も視野に入るため、転職理由は一層複雑になります。
本記事では、厚生労働省の調査データをもとに、実際によくある転職理由の傾向を読み解きながら、面接での伝え方のポイントやポジティブな言い換えの工夫について解説します。
目次
よくある転職のきっかけ・理由ランキング(厚生労働省データ)
転職理由の本音はどこに?他の調査との違い
年代別で異なる転職のきっかけ・理由と背景
転職のきっかけを見つける5つの質問
転職のきっかけ・理由を分解して見える“本音”とは?
面接で聞かれる転職理由と企業の視点
転職理由の伝え方:本音からのポジティブ変換例
エイペックスのコンサルタントが教える転職理由の伝え方【実例】
注意が必要な5つの転職理由と好印象を与える回答例
英語力や外資系志向が転職のきっかけ・理由になるケース
まとめ
よくある転職のきっかけ・理由ランキング(厚生労働省データ)
厚生労働省『令和2年転職者実態調査の概況(個人調査)』では、転職者が前職を辞めた理由について、男女・年齢・雇用形態別に詳しく調査されています。
1位 労働条件(賃金以外)がよくなかった(28.2%) 2位 満足のいく仕事内容でなかった(26.0%) 3位 賃金が低かった(23.8%) 4位 会社の将来に不安を感じた(23.3%) 5位 人間関係がうまくいかなかった(23.0%) 6位 他によい仕事があった(16.1%) 7位 いろいろな会社で経験を積みたい(15.9%) 8位 能力・実績が正当に評価されない(15.3%) |
※「労働条件(賃金以外)」には勤務時間・福利厚生・有給取得のしやすさなどが含まれる
※「仕事内容の不満」は、実際の業務と期待のズレが多い傾向
参考:厚生労働省『令和2年 転職者実態調査の概況(個人調査)』 表16(公式PDFはこちら)
転職理由の本音はどこに?他の調査との違い
「転職理由」について調べると、さまざまなデータが見つかります。中でも、厚生労働省が出している「令和4年 雇用動向調査結果」や「令和2年 転職者実態調査」などが有名です。本記事では、より実情に近い傾向を把握するために「令和2年 転職者実態調査(個人調査)」のデータを使用しています。
※令和2年調査は「転職した人」を対象に転職全体の傾向を把握しており、離職の理由も多角的に聞いています。一方、令和4年は「入職者(新しく仕事に就いた人)」に前職の離職理由を聞いており、調査の入り口が異なります。
年代別で異なる転職のきっかけ・理由と背景
厚生労働省『令和2年 転職者実態調査』をもとに、転職理由を年代別に見ていくと、ライフステージやキャリア観の違いが浮き彫りになります。どの年代にも共通する要素がある一方で、転職を考える「きっかけ」や「重視するポイント」は世代ごとに異なる傾向が見られます。
20代前半:人間関係や職場環境で悩むことが多い
人間関係がうまくいかなかったから(38.4%) |
社会経験が浅く、処世術が身についていないことから、「人間関係がうまくいかなかった」が多く見られます。
20代後半:キャリア意識が芽生えはじめる
満足のいく仕事内容でなかったから(31.4%) 賃金が低かったから(31.3%) |
スキルや専門性が少しずつ明確になり、「給与と仕事内容が見合っていない」「自分の市場価値を確かめたい」といった思いが強くなります。
30代:ライフイベントとのバランスを意識
労働条件(賃金以外)がよくなかったから(30代前半:36.7%) 会社の将来に不安を感じたから(30代後半:29.1%) |
結婚や育児、時には介護など、生活環境の変化に合わせて「柔軟な働き方」や「ワークライフバランス」を重視する傾向があります。
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40代:評価や会社の将来性に敏感になる
満足のいく仕事内容でなかったから(40代前半:29.1%) 労働条件(賃金以外)がよくなかったから(40代後半:29.2%) |
キャリアの中堅層として責任あるポジションに就く一方で、「仕事内容と待遇のバランス」に納得できず転職を考える傾向があります。
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共通点:「会社の将来に不安」が全年代で一定数存在
個人の努力や意思に関係なく、会社の経営状態など外的要因で転職を余儀なくされることもあります。
あわせて読みたい:転職理由が会社の将来性の場合はどう答える?例文つきで解説
転職のきっかけを見つける5つの質問
転職のきっかけや理由を整理することは、自分の価値観やキャリアの軸を明確にするチャンスです。 誰かと比較する必要はありません。あなた自身の「大切にしたいこと」を見つけましょう。
1. 今のキャリアに満足していますか?
現職での達成感や成長機会を感じられない場合、転職を考える契機となります。
2. 給与や待遇に不満はありませんか?
給与や福利厚生が期待に応えない場合、より良い条件を求める動機になります。
3. 職場の人間関係は良好ですか?
人間関係が職場ストレスの原因となっている場合、新たな環境を求めるきっかけになります。
4. 仕事とプライベートのバランスは取れていますか?
ワークライフバランスの崩れが、転職を考える理由となることが多いです。
5. 企業の将来性に不安を感じていませんか?
会社の成長性や業界の将来性が不安であれば、安定したキャリアを求めて転職を検討することがあります。
転職のきっかけ・理由を分解して見える“本音”とは?

「なんとなく辞めたい」「モヤモヤするけど理由がはっきりしない」——そんな状態は珍しくありません。実はその違和感の正体は、「労働条件」「仕事内容」「評価」などの根本的な不満であることが多く、それが転職の本当のきっかけになっている場合もあります。
そこで、よくある要因をいくつかに分解し、自分に当てはまるかを照らし合わせながら考えてみましょう。これらを言語化・視覚化することで、転職を考える“本音”が明確になり、それがあなた自身の「転職の軸」を形づくるヒントになります。
「労働条件が整っていない」とはどういうことか?
「労働条件が悪い」と一言でいっても、内容は人によってさまざまです。たとえば:
長時間労働が常態化している:毎日終電、休日出勤が当たり前。心身ともに限界を迎えている。
有給が取りにくい・休みにくい雰囲気:制度はあるのに使いづらい、取ったら嫌味を言われるなど、心理的ハードルが高い。
給与や手当が業務内容と見合っていない:責任や成果に対して報酬が低すぎると、やる気を失うのも当然です。
勤務地・通勤時間が負担:配属や転勤のたびに通勤時間が大幅に増え、プライベートへの影響が大きい。
転職を検討するきっかけとして「労働条件」は非常に多く挙がる理由です。ただし一部は、社内交渉や異動で改善される可能性もあるため、「転職しかない」と思い込まず、選択肢を整理することが大切です。
「仕事内容への不満」はどのように表れるか?
「仕事内容に不満」と感じるケースは大きく以下のようなパターンがあります:
入社前のイメージとのギャップ:営業職として戦略立案に関われると聞いていたのに、実際は事務作業がほとんど…など。
適性に合っていない:分析業務が得意なのに、感情労働の多いカスタマー対応ばかりを任されると、ストレスになります。
成長実感が得られない:単純作業やルーティンワークの繰り返しで、「このままでキャリアになるのか」と不安になることも。
こうした違和感を抱いたまま働き続けると、モチベーションの低下や自己肯定感の喪失につながります。「自分が何に不満を感じているのか」を分解して整理することで、転職に限らず配置転換や業務改善という選択肢も見えてくるかもしれません。
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「正当に評価されていない」と感じるときの整理の仕方
「がんばっているのに評価されない」「上司が見てくれていない」と感じると、やる気が削がれるだけでなく、離職を考えるきっかけにもなります。
とはいえ、感情的に「評価されてないから辞める」と言う前に、以下のような視点で整理してみましょう:
評価基準を理解しているか?:成果が出ていても、それが評価軸とズレていると正当に評価されないことがあります。まずは評価制度や上司の価値観を確認しましょう。
伝え方やアピールの工夫をしているか?:黙々と頑張っても、周囲に伝わらなければ“評価対象”にならないケースもあります。定期的な自己アピールや報告の工夫も効果的です。
短期的な視点になっていないか?:昇進や評価は半年〜1年単位で判断されることも多いため、焦らず中長期的に成果を見てもらう意識も必要です。
それでも改善が見込めない場合、転職もひとつの有効な選択肢になります。「どうせどこでも同じだろう」と諦める前に、現職での課題と次に求める評価環境の違いを明確にしてみましょう。
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転職のきっかけや理由が整理できたら、次に考えたいのが「それをどう伝えるか」です。 実際の転職活動では、面接で必ずといっていいほど「転職理由」を聞かれます。
ここからは、面接官がその質問をする理由や、好印象につながる答え方のコツについてご紹介します。
面接で聞かれる転職理由と企業の視点

転職活動の面接では、ほぼ確実に「なぜ転職を考えたのか?」という質問が投げかけられます。企業がこの質問をする理由は、「単なる動機確認」ではありません。応募者の価値観や行動の背景を知ることで、入社後のパフォーマンスや定着の可能性を見極めようとしているのです。
以下に、企業が「転職理由」から読み取ろうとしている主なポイントをご紹介します。
1. 入社後のミスマッチを防ぐため
企業は、採用後に「思っていた仕事内容や職場環境と違った」と早期退職されることを避けたいと考えています。そのため、応募者が現在の職場にどのような課題を感じ、なぜ転職を選択肢としたのかを知ることで、自社との適合性を確認しようとします。
2. 応募者の考え方・姿勢を知るため
転職理由には、キャリアの方向性や働く上で重視していることが表れます。たとえば「もっと専門性を高めたい」「成果で評価される環境に身を置きたい」など、応募者の職業観や行動原理を把握するヒントになります。企業はこれらを通じて、チームとの相性やカルチャーフィットを判断します。
3. 主体性・問題解決力を見極めるため
現在の職場に何らかの課題を感じて転職を検討している場合、その課題にどう向き合い、どのような判断をしたのかも重要な評価ポイントです。問題を放置せず、冷静に状況を分析し、次のステップを考えられるかどうか。転職理由の説明からは、応募者の行動力やレジリエンス(困難を乗り越える力)も垣間見えます。
面接官が見ているのは「過去」より「学び」と「未来」
「今の職場を辞めたい理由を正直に話して大丈夫だろうか」と不安に思う方も多いかもしれません。ですが企業が本当に知りたいのは、“今の不満”ではなく、“そこから何を学び、次に何を求めているのか”です。
たとえば:
×「残業が多かったから」
○「より効率的な働き方を通じて、生産性の高い業務に取り組みたいと考えた」
このように、ネガティブなきっかけであっても、前向きな目的に言い換えることで、面接官に与える印象は大きく変わります。
面接官が注目しているのはこんなポイント
前述のように、企業が転職理由を通じて確認したいのは、単なる事実ではなく、応募者の考え方や行動の背景です。
ここでは、企業が特に重視している3つの視点をまとめます:
① 転職の背景から、ミスマッチのリスクを見極める
② 何を重視して働きたいのか、自社との相性を判断
③ 何を考え、どう行動したかから主体性や成長意欲を見る
面接では「この人の希望に自社が応えられるか?」が問われます。だからこそ、自分の言葉で、前向きで納得感のある転職理由を伝えることが大切です。
転職理由の伝え方:本音からのポジティブ変換例
転職理由を伝えるとき、伝える内容そのものと同じくらい「伝え方」が重要です。どんなに正当な理由であっても、表現の選び方ひとつで面接官に与える印象は大きく変わります。
あわせて読みたい:【例文付】 退職理由(転職理由)を面接で聞かれた際の回答のポイントをご紹介!
【実例】エイペックスのコンサルタントが教える転職理由の伝え方
実際に、エイペックスのコンサルタントである西田(製薬チーム コーディネーター)は、以下のような例を挙げています。
【大手製薬メーカー勤務・40代・転職経験複数回】
<転職理由:部下マネジメントを希望しているが、上司がポジションを空ける見込みがなく、社内異動も難航しているため>
どちらがより前向きに感じられましたか?
どちらも事実は同じですが、伝え方Bのほうが「成長意欲」「冷静な判断」「前向きな姿勢」が感じられるため、採用側に好印象を与えやすくなります。
このように、転職理由は“何を話すか”と同じくらい、“どう話すか”が重要です。ネガティブに聞こえるかもしれない内容も、構成と表現を工夫することでポジティブな印象に変えられます。
あわせて読みたい:【例文付き】 転職理由がキャリアアップの場合の伝え方をNG例付きでご紹介!
注意が必要な5つの転職理由と好印象を与える回答例
①人間関係の問題
好印象を与える回答例:「多様な考え方に触れる中で、意見の違いを調整する力やチームワークの大切さを学びました。今後はその経験を活かして、前向きにチームに貢献したいです。」

ワンポイントアドバイス:ネガティブな人間関係の話をそのまま話すと、悪口や責任転嫁と受け取られる恐れがあります。否定よりも「学び」にフォーカスしましょう。
②健康上の理由
好印象を与える回答例:「体調を崩したことをきっかけに、自分にとって持続可能な働き方を見直すようになりました。現在は回復しており、御社のようなウェルネスを重視する環境で力を発揮したいと考えています。」

ワンポイントアドバイス:「健康を理由に退職」とだけ伝えると、継続勤務が難しい印象を与えかねません。「現在は回復済み」であることと、前向きな気づきを添えることが大切です。
③入社後すぐの退職
好印象を与える回答例:「入社後の業務が想定と大きく異なり、自分のスキルが活かせないと判断しました。今回の転職では、業務内容や企業文化との一致を重視しています。」

ワンポイントアドバイス:短期離職は「忍耐力がない」と見られがちです。ただし、業務内容のミスマッチが明確であれば、その後の前向きな判断として説明できます。
④能力不足
好印象を与える回答例:「新しい分野への挑戦の中で自分の課題に気づき、〇〇資格の取得に取り組みました。今後は強みと改善点の両方を活かして貢献したいと考えています。」

ワンポイントアドバイス:単なる「実力不足」と受け取られないよう、課題に対してどう向き合い、何を学んだかを明確に伝えることが重要です。
⑤懲戒・重大なミス
好印象を与える回答例:「以前の勤務先では、自身のミスで大きな反省を経験しました。この経験を通じて、責任感と確認作業の重要性を強く認識しました。今後は同じ失敗を繰り返さぬよう、丁寧に業務に取り組んでいきます。」

ワンポイントアドバイス:ネガティブな事実を隠さず、誠実に反省を示した上で、再発防止への意識や姿勢を具体的に伝えることが必要です。
英語力や外資系志向が転職のきっかけ・理由になるケース
「もっと英語力を活かしたい」「自律性が尊重される環境で働きたい」――
こうした思いは、職場に求める価値観の変化を反映した、十分に正当な転職理由といえます。
実際に、日系企業の文化や組織体制に違和感を覚え、よりフラットで成果主義の色が強い外資系企業にキャリアの軸を移す方は増えています。以下のような理由で、外資系への転職を選択肢に加えるビジネスパーソンは少なくありません。
✔ 異文化環境で就業することによる幅広い視野の獲得とグローバル人材としての成長
✔ 成果を適切に評価する明確かつ公平性のある評価制度
✔ 役職や社歴にとらわれず意見を発信できるフラットな組織
✔ 簡略化された承認プロセスによる意思決定の速さ
✔ 海外拠点との連携やグローバルなキャリアの可能性
こうした志向は、単なる“きっかけ”ではなく、将来を見据えたキャリア戦略の一部です。現在の職場では実現が難しい目標や働き方がある場合、環境を変えることは前向きな選択といえるでしょう。
エイペックスでは、英語力を活かせるポジションや外資系・リモートワークの非公開求人を多数取り扱っています。具体的な求人情報に触れることで、今後のキャリアにおいて「何を重視すべきか」「どのような働き方が自分に合っているのか」がより明確になります。
あわせて読みたい:外資系企業に向いている人の特徴は?評価されるポイントやスキルもご紹介
まとめ:転職理由の整理が、理想のキャリアへの第一歩
転職を考える理由やきっかけは、人によってさまざまです。 働き方、評価制度、人間関係、会社の将来性など、どれも「あなたらしく働くため」に大切な視点です。
本記事で紹介したように、転職理由は整理の仕方と伝え方次第で、前向きに相手に伝えることができます。そして、その過程であなた自身のキャリアの軸や価値観が明確になっていきます。 「何が不満か」ではなく、「何を叶えたいのか」を意識することが、納得できる転職への第一歩です。
もし一人での整理が難しい場合は、転職のプロに相談するのも有効な手段です。 エイペックスでは、英語力や外資系志向を活かしたキャリア支援をはじめ、非公開求人のご紹介、応募書類のブラッシュアップ、面接対策まで一貫してサポートしています。