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ハイクラス人材はなぜ動く?非金銭的報酬・やりがい・キャリアパスで惹きつける採用戦略とは

​エイペックスの新ポッドキャスト『Reach New Heights』では、採用やキャリアに関する実践的な課題をテーマに、社内外のプロフェッショナルが意見を交わします。記念すべき第1回のエピソードでは、「Motivating Factors Beyond Salary & Recruitment Process Challenges(給与以外のモチベーションと採用プロセスの課題)」を取り上げました。

ゲストは、エイペックス創業メンバーでありディレクターのカーティス・ジョーダン。コロナ禍を経て大きく変化した採用市場、外資系と日系企業のスタイルの違い、そしてハイクラス人材が本当に求めているものとは何か——現場視点の率直な議論が展開されました。

このエピソードには、ハイクラス人材との信頼関係を築くうえで重要なヒントが詰まっています。ぜひYouTubeでご覧ください ▶︎

​本記事ではその中でも特に反響の大きかったトピック、「給与以外のモチベーション」に焦点を当て、採用成功の鍵となる視点を深掘りします。

多くの企業では、候補者のモチベーションについて真剣に向き合うのはオファー提示の段階になりがちです。しかし、カーティスは「それでは遅すぎる」と指摘します。選考プロセスの早い段階から、スキルや経験だけでなく、候補者の内面的な動機や価値観に目を向けることが、ハイクラス人材とのマッチングにおいて不可欠だと語っています。

非金銭的報酬の正体:6つのモチベーション要素

①ハイクラス人材の仕事内容と成長機会

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"What does that look like in both the 3, 6, 9 months, but also in a 2 year period?"

ハイクラス人材は、「今の自分にとって挑戦する価値のある仕事か」「将来的にどのようなキャリアパスにつながるか」を重視します。半年後・1年後・そして2年後にどのような成果を出しているのかが想像できる仕事は、特に魅力的に映ります。

特にハイクラス人材は、成長実感を求める傾向が強く、仕事がルーティン化していたり、スキルアップの機会が乏しいと、やりがいを見失いやすい傾向にあります。自らの専門性を活かし、成果を出せる領域で裁量を持てるかどうかが、キャリア選択の鍵となります。

②ハイクラス人材にとっての仕事の意味とやりがい

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"Do they find their work meaningful? Is there clear objectives and goals in the work they have?"

報酬だけでなく、「社会的に意義のある仕事か」「誰かの役に立っていると実感できるか」が、日々のモチベーションを左右します。たとえば、「医療機関向けの新ソリューションを導入し、患者の診療体験を改善する一助となった」「現地法人の業務改善を主導し、グループ全体の業績向上に寄与した」といった経験は、社会的意義とビジネス成果の両面で貢献実感を得られる機会となり、報酬とは異なる“働く価値”を実感するきっかけになります。

企業の方針やビジョンに対する共感度も、ハイクラス人材にとっては重要な判断基準のひとつです。組織の方向性に納得感が持てない場合、自身の業務に対する目的意識や帰属意識が薄れ、結果としてモチベーションの低下や離職リスクにつながる可能性があります。

③ハイクラス人材のポジションレベルと意思決定の自由度

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"What's the level in the company? What's the ability to make decisions within the company?"

同じ職種でも、ポジションの裁量権や影響力は企業によって大きく異なります。ハイクラス人材は「自分の意思決定が組織にどれだけ影響するか」を重視します。

たとえば、新規サービスの戦略立案から実行までを一任されるポジションや、海外拠点の立ち上げを担うプロジェクト責任者といった、裁量の大きい役割は、組織への影響度が高く、意思決定の責任と成果が直結します。このようなポジションは、業務を通じた成長実感だけでなく、仕事に対する意義や達成感を強く感じられる環境として、高い魅力を持っています。

④ハイクラス人材が求めるキャリア開発の透明性

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"Many companies have a meritocracy, but what does that mean? So how can you get promoted within the company?"

優秀な人材ほど、評価制度の透明性や昇進のロジックに高い関心を持っています。「努力すれば報われる」といった抽象的なメッセージでは不十分であり、どのような行動や成果が評価につながるのか、具体的かつ客観的な基準が提示されていることが求められます。

多くの企業が「メリトクラシー(成果主義)」を掲げていますが、実際に実績に応じた昇進や報酬が明確に示されているかどうかは、社員の納得感やモチベーションを左右する重要な要素です。また、社内に明確なロールモデルが存在し、組織として複数のキャリアパスを設計・提示できているかどうかも、候補者が安心して中長期的な成長を描ける環境として高く評価されます。

⑤ハイクラス人材が重視する仕事のインパクト

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"The impact of the role and what that impact is for their clients, for inside the company, but also into society."

​自らの仕事が、組織や社会に対してどのような影響を与えているのかを理解したいという意識は、年々高まっています。特にバイリンガル人材やリーダー層を志向する候補者にとっては、「自分の行動や成果が、誰にどのような価値を生んでいるか」が、キャリア選択の重要な判断材料となります。

たとえば、「グローバル顧客のニーズに応じたサービス改善に取り組み、顧客満足度と継続率の向上に貢献した」「部門横断のプロジェクトを主導し、業務効率や情報共有の仕組みを大幅に改善した」といった実績は、社会的意義や組織貢献を実感できる経験として、やりがいや自己肯定感につながります。

そのため採用活動においては、ポジションの責任範囲や、組織におけるミッションの位置づけが、どのようなインパクトをもたらすのかを、具体的かつ定量的に示すことが求められます。

⑥ハイクラス人材にとっての仕事の価値と報酬のバランス

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"I want to know my impact within the company, and I want to feel the worth of that paid into me by the compensation."

​給与水準そのものよりも、「自分の仕事がどれだけ組織に貢献しているかが、適切に報酬やポジションに反映されているかどうか」が、ハイクラス人材にとって重要な判断基準となります。候補者は、提示された報酬が自身のスキル・成果・影響力に見合ったものであるかを冷静に見極めています。

たとえば、「複数部門にまたがる業務改善プロジェクトを主導し、全社的なコスト削減を実現した結果、次期経営幹部候補として指名された」「海外子会社の経営立て直しに成功し、グループ全体の利益向上に貢献したことで報酬体系が見直された」といった、定量的成果に基づく評価と処遇の連動は、優秀な人材の納得感を生み出す重要な要素です。

そのため、採用においては、単に金額を提示するのではなく、評価と報酬の関係性や、昇進・昇給の基準が明確に整備されていることを伝えることが、信頼の獲得と定着につながります。

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"Japan is actually lagging in quite a bit compared to the rest of the world."

カーティスは、日本ではこの意識がまだ十分に浸透していないと指摘します。

ハイクラス人材に響く採用コミュニケーションの本質

優秀な人材に入社を決断してもらうには、企業は何をどのように伝えるべきでしょうか。

採用活動において、企業側はしばしば自社の強みや将来性を前面に出そうとします。しかし、ハイクラス人材の意思決定を本質的に後押しするのは、ポジティブな情報だけではありません。重要なのは、「自社にどのような課題があり、その解決のためにどのような役割を期待しているのか」を明確に伝えることです。

たとえば、経営体制の再構築や新規事業開発、既存サービスの利益構造の見直しなど、組織が直面しているテーマを包み隠さず伝えたうえで、「このポジションには、こうした課題に対してリーダーシップを発揮していただきたい」と説明することが、信頼の構築につながります。

特にバイリンガルのハイクラス人材を採用する場合、単に「語学力が必要」という説明にとどまらず、なぜ今このポジションでバイリンガル人材が求められているのか、その背景にある事業上の必然性を明示することが求められます。このニーズが一時的な補充ではなく、企業のグローバル戦略や成長計画の一環であることを採用の初期段階から明確に伝えることで、候補者の信頼を得ることができます。

たとえば、

「今回の採用は特定プロジェクトや市場開拓のためですが、今後3年以内に◯◯地域への本格展開を予定しており、将来的には中核メンバーとしてグローバル展開をリードしていただきたいと考えています」

といったように、中長期的なビジョンとキャリアパスをセットで提示することが、候補者の納得感と期待値形成につながります。実際にこのようなビジョンの共有がなされた採用プロセスでは、入社後のギャップが少なく、長期的に活躍する人材が定着する傾向も見られます。

このように、課題 × 役割 × 期待成果 × 将来ビジョンを一体で伝えることにより、候補者は「自分のスキルや経験がここで活きる」「この組織の未来に貢献できる」と感じやすくなります。条件面だけでなく、自分が成長し、影響力を発揮できる舞台であるかどうかを明示することが、最終的な意思決定に直結するのです。

企業の魅力を語るだけでは不十分です。むしろ重要なのは、次の3点が候補者にしっかりと伝わっているかどうかです:

  • 成長可能性のある企業であること

  • 組織課題や改善余地が存在していること

  • 候補者にその課題解決を期待していること

これらを誠実かつ戦略的に伝えることで、ハイクラス人材は「この企業に必要とされている」「自分が組織を動かせる」と実感し、入社後のビジョンを具体的に描けるようになります。

ハイクラス人材のモチベーションを高める「役割設計」という視点

多くの企業は、報酬やポジション、働きやすさといった条件面に重点を置いて採用アピールを行います。しかし、ハイクラス人材が転職を検討する際に最も重視するのは、「自分がどのような役割を担い、どのように価値を発揮できるか」という点です。

これは、「自分がその組織にどう貢献できるか」「成果を出すことで組織にどのような変化を起こせるか」といった“役割を軸にした納得感”が、金銭的報酬以上に強いモチベーションとなることを意味しています。

採用活動では、ポジション名や業務内容だけでなく、「この役割を担うことで、何に影響を与えられるか」「どのような成果を期待しているのか」「どの程度の裁量・責任があるのか」といった要素まで明確に提示することが、候補者のエンゲージメントを高める鍵となります。

ハイクラス人材にとって最も重要なのは、自身の経験やスキルが戦略的に活かされる環境であるかどうか、そして組織の中で明確な役割と責任を担えるかどうかです。その期待がクリアに伝わったとき、候補者は初めて「この企業において自分が活躍できる」と実感し、意思決定へと進んでいきます。

非金銭的価値 ・明確な役割 ・ キャリア展望 がハイクラス人材採用成功のカギ

ハイクラス人材が転職先に求めるのは、単なる年収の向上ではありません。仕事の意義、裁量の大きさ、自身の影響力、そして成長の見通しといった「非金銭的な価値」が、意思決定の根幹にあります。

企業が採用成功を実現するには、ポジションごとの課題と期待役割を明確にし、中長期的なキャリアパスや成長機会をセットで提示することが重要です。それにより、候補者が自身の未来をリアルに想像できる環境を整えることができます。

「給与はもちろん重要です。しかし、ハイクラス人材が転職を決める理由は、それだけではありません。仕事内容の意味、責任の範囲、キャリアの展望、社会への影響——これらすべてが“選ばれる企業”の条件となります。

これからの採用では、“どんな待遇を提示するか”だけでなく、“どんな価値ある経験を提供できるか”という視点が、ますます重要になるでしょう。」

と、カーティスは番組内で語っています。

エピソード本編では、さらに具体的な事例とともに、企業と候補者のすれ違いを防ぐヒントを多数ご紹介しています。

採用に関わる方はぜひ一度ご視聴ください。▶︎『Reach New Heights』エピソード1

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Apex株式会社 ディレクター Curtis Jordan (カーティス・ジョーダン)。日本のリクルートメント業界には20年近く従事しており、特にIT・コンサルティング業界で格段の人脈ネットワークを有する。ITエンジニアやセールス職はもちろんだが、経営層を含めた上級ポジション・企業戦略やコマーシャルエクセレンス等のポジションについても多数の実績あり。

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