キャリアの棚卸しは、転職活動を進めるうえで欠かせない重要なプロセスです。最初の段階で丁寧に棚卸しをしておくことで、自分の強みや方向性が明確になり、その後の応募書類作成や企業選び、面接対策をスムーズに進められるようになります。
しかし、いざキャリアを振り返ろうと思っても、働く期間が長くなるほど「いつ、どのような仕事を、どんな内容で担当していたのか」という記憶は曖昧になります。さらに、自分の強みを客観的に把握することは想像以上に難しく、「どの経験が企業へのアピールにつながるのかわからない」という人も少なくありません。
ここではそんな人のために、そもそもキャリアの棚卸しとは何か、どんな方法で行ったら良いのか、どうしたらうまく転職活動に活かせるのか、などとともに、棚卸しを行うことのメリットやよくある失敗、うまくできないときの対処法についても解説していきます。
これから転職活動をはじめる人にも、これからキャリアの方向性を考えていこうという人にも必読の内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
キャリアの棚卸しとは
キャリアの棚卸しとは、「自身が保有する職務経験・実績・スキル・資格などを洗い出し、分析し、整理していくこと」です。そしてそこから、「自身の強み、今後の課題、モチベーションの源、優先順位や価値観の洗い出し」を同時に行うことで、今後のキャリア目標や方向性を考える材料にすることです。
キャリアの棚卸しを行うことによって、以下のようなメリットがあります。
自身の市場価値が判断でき応募のミスマッチを防げる
履歴書や職務経歴書のアップデートに役立つ
面接対策として説得力のある自己PRが作成できる
自分の適性や目指すべき方向を知ることができる
今後の課題が明確になり学習計画のヒントになる
自分の成長が実感でき、モチベーションアップにつながる
また、キャリアの棚卸しを行う最適な場面として、以下が挙げられます。
転職活動で、職務経歴書の作成や面接対策で使用するため
昇進面談でのアピールや人事考課の自己評価で使用するため
定年後など今後のキャリア人生を考えるため
もっとも多くキャリアの棚卸しが必要とされるシーンは、やはり転職活動の材料として使われるときでしょう。
キャリアの棚卸しを行う6つのメリット
キャリアの棚卸しは、自身のキャリア形成にさまざまなメリットをもたらします。上でも少し触れましたが、具体的な6つのメリットについて解説していきます。
① 自身の市場価値が判断でき応募のミスマッチを防げる
転職は基本的には自分のために行うものですが、企業側から見れば「自社に有益な人材を採用するために行うもの」です。そのため、企業は自社の求める人物像（経験・スキル・資質など）に適う人を探しています。
キャリアの棚卸しをしっかりと行い、自分自身を客観視できるようにしておけば、自分が企業が求める人物像に当てはまるかどうかを冷静に判断でき、マッチしない企業への応募を防ぐことができます。自分の経歴やスキルでは入ることが難しい企業は、選択肢から外すことができ余計な時間を使わなくて済みますし、逆に自身の経歴が多くの企業で求められているとわかれば、高く自分を売り込むこともできます。
② 履歴書や職務経歴書のアップデートに役立つ
履歴書や職務経歴書は、書き出そうとするとかなり時間のかかるものです。日々の業務をこなしていると、過去のプロジェクトや成果を細かく記録していないことが多く、「何年から何年まで、どんなプロジェクト（規模・内容）に、どんなポジションで関わり、どんな成果を挙げどんな課題があったか」など、後から思い出すのは意外と難しく苦戦する人もいるでしょう。
キャリアの棚卸しを通じて時系列で職務内容を振り返り、関わったプロジェクトや自身の役割・成果・培ったスキル等を具体的に整理しておけば、職務経歴書に落とし込む手間が大幅に軽減できます。特に、「成果を数値で示す」「学んだことを具体的なエピソードで記す」などは、棚卸しの内容がそのまま活用できます。
もちろんアピールすべき経験やスキル、志望動機欄は応募する企業によってカスタマイズする必要がありますが、棚卸しを行うことで自身のキャリアのなかでどんな経験がもっともアピールになるのかが明確になり、より戦略的で説得力のある職務経歴書が作成できるようになります。
③ 面接対策として説得力のある自己PRが作成できる
棚卸しによってこれまでの経験や成果を具体的に整理できるため、職務経歴書に落とし込むのと同様に、面接で説得力のある自己PRが作成できるようになります。特に、棚卸しで自身のスキル・経歴の解像度を上げておくことで、応募先企業が重視するスキルや経験に絞って的を得た話ができるようになります。
また、面接官が重視するのはあなたが「何をしたか」ではなく、「どうしてしたのか」「どのようにしたのか」「結果、何を学んだか」であることを頭に入れておきましょう。そこから、あなたの行動特性や思考プロセス、自社でも活かせる強みを読み解こうとします。
つまり、棚卸しで自身の経験をあらかじめ分析しておくことで、「どのような課題に対し、どんな方法論で取り組み、どんな成果を挙げ、結果何を学んだのか」のストーリーを容易に作成することができ、面接でも企業が望む明解な回答ができるようになり高評価につながります。
④ 自分の適性や目指すべき方向を知ることができる
キャリアの棚卸しは、自分の強みや成果を明確化するだけのものではありません。これまでの経験を通じて、「自分がどんな仕事にやりがいを感じるのか」「どんな環境であればモチベーションが上がるのか」「どんなことが仕事で大切だと思っているのか」が整理でき、自分の適性や目指すべきキャリアの方向性を客観的に見つめ直すことができます。
たとえば、過去のプロジェクトでチームをまとめる役割にやりがいを感じたのであれば、マネジメント志向が強いかもしれません。プロジェクトのオペレーションよりも企画段階から参画したときにより喜びを感じたのであれば、戦略系のポジションを視野に入れても良いでしょう。
このように、これまでの経験を通じて「自分に合う仕事の環境」「興味の持てる分野」「成長を感じられる役割」が見えてくることで、今後どの方向に進むべきかを具体的に考えられるようになります。
⑤ 今後の課題が明確になり学習計画のヒントになる
キャリアの棚卸しは、思い描くキャリアの実現のため自身が取り組むべき課題や弱みが明確になり、今後の学習計画を立てるためのヒントにもなります。
たとえば、「英語力が足りないために外資系企業に転職できなかった」「プロジェクトマネジメントの経験がないために昇進できなかった」「効率良く業務が行えないのが成果が出せていない原因だと感じている」など、自身のキャリア上の課題が具体的に把握できるようになります。
また、「現状の自分では求められるレベルに達していないが、どうしても入りたい企業がある」という場合は、キャリアの棚卸しによって「何をプラスすれば採用レベルに達することができるか」も知ることができます。そして、必要な資格を取得するため勉強をはじめるなど、前向きな活動につなげられるようになります。
結果として、棚卸しが単なる「過去の振り返り」ではなく、将来の成長戦略を描くための第一歩となります。自身の課題を明確にすることで、今後どのスキルを重点的に伸ばすべきか、どのような学習や経験を積むべきかなどの自己理解を深めながら、計画的にスキルアップを図り成長していくきっかけとすることができるでしょう。
⑥ 自分の成長が実感でき、モチベーションアップにつながる
自身のキャリアを客観視して、今までの成長を確認できることも棚卸しの良い点です。忙しい毎日のなかでは成長や進歩は実感しづらいこともありますが、過去の業務内容や達成した目標を整理してみると、「以前は自信がなかった分野に、今は積極的に取り組めるようになっている」「英語力の向上のおかげで、今は海外プロジェクトにも参画できるようになった」と気づく場面が多くあるでしょう。
そうした成長や努力の積み重ねを可視化することで自信が生まれ、仕事への前向きな気持ちが自然と高まります。つまり、キャリアの棚卸しにより過去の成果を再確認し、自分の成長を実感することで、今後のキャリアへの意欲やモチベーションを高めるきっかけにすることができます。
キャリアの棚卸しを始める前の準備
多くのメリットがあるキャリアの棚卸しですが、実行には決まったテンプレートやツールがあるわけではありません。
そのため、どのように始めて良いかわからないという人のために、棚卸しを効率良く進められる準備についてご紹介します。
① 準備するツールを決める
まだキャリアの棚卸しに着手していない人は、大学ノートなどにとりあえず思いついたこと・思い出せたことを書くだけでも棚卸しをスタートさせることはできます。
より正確にキャリアの棚卸しを行う際には、棚卸し専用のエクセルデータやワードファイル、グーグルドキュメントなどを使った方が整理しやすくなります。ノートはあくまでも「記憶を想起させるためのもの」「出先などで思いついたときにすぐに書き留めておくもの」として利用し、それらを体系化するときはエクセルやドキュメントに落とし込むようにします。パソコンで保存しておくことで履歴書・職務経歴書に反映しやすくなりますし、書き直しも簡単にできます。
② キャリアの何を振り返れば良いか確認する
「キャリアの棚卸し」といっても、どこから、どんなことを振り返れば良いかわからないという人も多いでしょう。その場合は、下記の点からまとめます。
大分類としての仕事内容（例：〇〇製薬会社 薬事スペシャリスト）
小分類としての仕事内容（例：〇〇プロジェクトの薬事申請業務を担当。目的・規模・期間・役割・担当範囲・課題などを整理）
成果（例：承認期間の短縮、コスト削減、製品上市成功への貢献など）
スキル（例：薬事申請の知識、GxP関連の知識、PMDA対応力、英語での文書作成スキル、プロジェクトマネジメント能力、海外チームとの協働スキルなど）
価値観や得た学び（例：正確さとスピードの両立が重要、チームで成果を出す難しさとやりがいなど）
取得した資格（例：〇〇年 TOEIC810点取得など）
また、最初のキャリアの棚卸しで経験やスキルが可視化できたら、応募先企業やポジションに合わせて履歴書・職務経歴書に盛り込む項目を精査していくことが大切です。
③ 第三者の力を借りることも検討する
自分自身のことを客観視することは、意外と難易度の高いことです。また、特に意識なくこなしていたことが、実は他者から見たときには特筆すべき技術・能力であったということは往々にしてあり得ることです。
キャリアの棚卸しをより正確に行うためには、第三者の視点を入れるのが理想です。上司や同僚に聞けば、あなた自身を近くで見ているからこそ分かる評価をもらえることでしょう（ただし、転職のための棚卸しであることは、後々のトラブルを避けるためにも気づかれてはいけません）。
「ひとりで行うのが難しいと感じる」、また「誰に相談して良いかわからない」という人は、転職エージェントに相談することを検討しましょう。毎日求職者の履歴書に目を通し、キャリア相談を行う人材コンサルタントは、あなたの強みやアピールポイントは何なのか、どの方向性がもっともキャリアを最大化できるのかなど、棚卸しのサポートにも強みを持っています。
直接の利害関係がないため客観的な視点でアドバイスをもらうことができ、棚卸し後に本格的な転職活動を始めたい場合や、今後のキャリア構築にも継続的に相談に乗ってもらいたいという場合も、専門家の視点から有効な助言とサポートをしてくれます。
キャリアの棚卸しにおいてもっとも重要なのは、自分の経験やスキルを客観的に見つめ直すことです。エイペックスでは、経験豊富な人材コンサルタントが「他者からどう見えるか」という視点から精度の高い棚卸し作業を一緒に行ってくれます。ご興味のある方は、ぜひ下記のボタンからキャリア相談会にお越しください。
キャリアの棚卸しの方法【ステップ別ガイド】
では、ここからはキャリアの棚卸しを実際に行う際の手順について、下記の4つのステップ別にご紹介していきましょう。
STEP1：これまでの業務経験をすべて書き出す
まず最初のステップとして、これまでの業務経験と成果（結果）を時系列で書き出します。
このあとのSTEP2で項目を肉付けしていきますので、ここではベースとなる業務経験を作成することが目的です。事実整理のため、思いつく限り経験したことを書き出しましょう。
【キャリアの棚卸し（職務経験の記入例）】
2020年4月〜2025年3月 〇〇医療機器企業 営業部 営業スタッフ（整形外科領域担当）
担当製品・顧客：
インプラント製品〇〇、〇〇
大学病院・基幹病院・地域中核病院を中心にクリニックまでカバー
担当業務：
大学病院・基幹病院を中心に、整形外科用インプラント製品の新規開拓および既存顧客フォローを担当
担当エリアの年間売上目標達成に向けた営業戦略の立案・実行
製品デモ・見積作成・納品後フォロー・使用時サポートなど、提案から導入・運用支援まで一貫して実施
医師・看護師・臨床工学技士など、医療従事者との関係構築
開発・マーケティング部門と連携し、現場ニーズを製品改良にフィードバック
成果：
年間売上目標を5年連続で達成（1年目110％、2年目118％、3年目120％、4年目112％、5年目115％）
中部地区における新規顧客獲得数1位（2024年度）
最優秀営業賞（2024年）および月間新人賞6期連続受賞（2020年）
開発・マーケティング部門との連携で、営業現場から得た医師の声を反映し新製品改良に貢献
またこのときは、下記のように会社や部署・役職の変化に応じて区切ると、昇格や担当領域の変化などキャリアの「成長の軸」が見えるようになります。
例：
2020年4月〜2022年3月 〇〇医療機器株式会社 営業部 一般社員
2022年4月〜2025年3月 〇〇医療機器株式会社 営業部 主任
より丁寧に業務を洗い出したい、あるいは自分の仕事の流れを改めて見直したいという場合には、1日のタイムスケジュールを書き出してみるのもひとつの方法です。
※週に1回程度、手術立会いや緊急対応のため深夜まで残業することもあり
STEP2：各項目を肉付けしていく
次に、STEP1で書き出した内容をもとに「そのプロジェクトで何を得たか」までを書き出し肉付けしていく作業になります。
自身の成果や学びが多かった主要プロジェクトを抜き出し、プロジェクトの「目的・規模」「直面した課題」「自身が実践したことや工夫した点」「成果」「学んだことや得たスキル」を書き出してみましょう。
単なる職務経歴ではなく、自身の行動プロセスと成果の両方を示すストーリーにすることで、面接官に「どう考えて動ける人か」を強く印象づけるために行います。
【キャリアの棚卸し（肉付けの記入例）】
担当プロジェクト：
インプラント新製品〇〇の新規導入プロジェクト
プロジェクトの目的と規模：
1年で中部エリア内での製品シェア獲得率30%を目指す
初年度売上目標：5,000万円
対象病院：約50施設（大学病院・基幹病院・地域中核病院）
直面した課題：
新規参入製品であり、他社製品が市場の半数以上を占めていた
医師の切替ハードルが高く、臨床実績・信頼構築が必要
製品特徴が差別化しづらく、導入メリットの訴求に工夫が求められた
実践したこと・工夫した点：
医師・看護師・MEに向けた製品説明会・デモを多数実施
競合製品との比較資料を独自に作成し、導入後のコスト・安全性を数値で提案
マーケティング部・開発部門と連携し、実使用データを活用した提案書を作成
病院ごとに異なる課題（手技・コスト・購買プロセス）を分析し、提案内容をカスタマイズ
医師やスタッフとの信頼関係を重視し、「押す営業」ではなく「支援する営業」を意識
製品トラブル発生時には迅速対応し、翌日中に原因報告書と改善案を提出。医療現場での信頼関係構築に努める
成果：
販売目標比120%を達成（売上6,000万円）
中部地区新規顧客獲得数1位
最優秀営業賞獲得
学んだこと・得たスキル：
医療機器営業では、「製品を売る」のではなく「患者さんのQOL向上のため」という視点が重要
クリニックではコスト面からのメリットを訴求することで、経営者視点での提案が響いた
医療従事者との長期的な信頼構築が成果につながることを実感
開発部との連携により、現場課題の解決策を創出できる手応えを得た
なお、経験を肉付けしていく際には、STARメソッドを活用するとスムーズです。下記のように、経験したプロジェクトに対し「状況」「任務」「行動」「結果」でストーリーを作成する手法で、面接で実績等を話す際にもわかりやすく説得力のある回答にすることができます。
STEP3：自身の強み・スキルの活かし方を考える
STEP1で職務経歴を整理し、STEP2で経験を具体化しましたが、STEP3ではそれらをもとに、「自分の強みは何か・それらをどう活かせるか」を言語化する段階となります。
なぜそれが自分の強みになるのか、その裏付けとなる証拠と、そのスキルがどんな場面で活かせるかを書き出してみましょう。自分の強みが「どんな環境・職種・課題で発揮できるか」を考えることで、キャリアの方向性が見えてきます。
【強み・スキルの裏付けと活かし方（記入例）】
強み①：関係構築力
裏づけ：新規導入が難しい大学病院に対し、半年間にわたり定期訪問と現場支援を継続。信頼関係を築き、最終的に導入決定に至った。
活かし方：医療機器メーカーをはじめとしたヘルスケア業界など、KOLと長期的に関係を築くポジションで力を発揮できる。
強み②：課題解決力
裏づけ：手術現場での使用上の課題を抽出し、開発部門へフィードバック。製品改良後、使用満足度が大幅に向上。
活かし方：マーケティングやセールストレーナーなど、「現場の声を反映する役割」で活かせる。
強み③：主体性
裏づけ： 病院ごとに異なる課題を分析し、要望に合わせて提案内容を最適化。「与えられた資料を説明するだけ」ではなく、顧客特性を踏まえたアプローチを自ら設計している。
活かし方： アカウントマネジメントやプロフェッショナルエデュケーションなど、「顧客特性に合わせて戦略を組み立てる役割」で活かせる。
STEP4：今後のキャリア目標を決定する
最後に、これまでの棚卸しから見えた自身の強みや特徴を踏まえ、今後のキャリアの方向性を考えましょう。
「これまでの強みをどのような形で活かしたいか」を軸に、キャリア目標や応募先企業を設定します。同時に、キャリア目標達成のために課題となっている点や、そのために今後身につけたいスキルや経験があれば書き出してみましょう。
【今後のキャリア目標（記入例）】
やりがいを感じること
顧客に寄り添ってニーズを丁寧に聞き取り、満足度向上につながる提案を行うことで、長期的な信頼関係を築くことにやりがいを感じる
今後成し遂げたいこと・なりたい自分
医療現場と企業をつなぐ役割として、KOLや主要顧客とのパートナーシップを長期的に築く専門性の高い職種を目指したい
活躍できる職種
キーアカウントマネジメント（KAM）
プロフェッショナルエデュケーション
セールストレーナー
活かせる強み
関係構築力（KOLのような高度なコミュニケーションが求められる相手にも、継続的に信頼関係を構築できる）
今後身につけたいスキルや経験
KOLとより専門的なディスカッションができるようになるため、疾患領域や治療アルゴリズム、競合を含めた製品特性などの深い専門知識を勉強したい
病院ごとの課題や意思決定プロセスを踏まえた「アカウント戦略」を設計する能力を身につけたい
英語力の向上のため、TOEIC800点取得を目指したい
キャリアの棚卸しを転職活動に活かす方法
ここからは、棚卸ししたキャリアを転職活動に活かしていくための方法についてご紹介しましょう。
応募企業とのマッチングを見極める
キャリアの棚卸しは、応募先企業が本当に自分に合っているのかを見極める際に非常に役に立ちます。
求人を検索していくなかで興味のある求人を見つけたら、企業が求める応募要件を書き出してみましょう。そのうえで、上記のSTEP2、STEP3で挙げた自身の強みや経験がそれらに重なるかを確認すれば、選考通過の可能性が高いかどうかが判断できます。
また、STEP4でキャリアの方向性についても考察できていますので、その企業があなたのやりたいことを叶えられる環境なのか、今後身につけたい経験やスキルがそこで学べるのかなどが確認できるでしょう。
履歴書・職務経歴書に落とし込む
キャリアの棚卸し＋個人情報（氏名や住所・連絡先など）の記載をすれば、その時点で履歴書・職務経歴書の8割程度が埋まるはずです。
時系列で業務内容と成果・エピソード等が整理されているため、そこから応募する業界や職種でアピールできる経験・スキルを中心に応募書類に落とし込んでいきましょう。特にアピールしたい経験・能力は、職務経歴書の最初に欄を作り箇条書きで伝えるのも有効です。
また、発揮できる強みや経験を活用して志望動機や自己PRも作成できます。STEP4で挙げたキャリア目標についても志望動機に落とし込むことができるなど、キャリアの棚卸しの内容をそのまま応募書類に転用できるだけでなく、あなたの人材としての価値が表現されたより魅力的な書類に仕上げることができます。
面接での自己PRや逆質問の準備に活用する
キャリアの棚卸しは、アピールにつながる応募書類の作成だけでなく、面接での自己PRを考える際にも役立ちます。
面接では、ほぼ必ず「自己PRをお願いします」「あなたの強みは何ですか」などの質問があります。このときに丁寧にキャリアの棚卸しをしていると、自身の強みを裏付ける具体的なエピソードが練り上げられた状態であるため、面接官の印象に残る力強い回答ができるはずです。逆に、棚卸しなしでは咄嗟に的確な経験を思い出せず、輪郭がぼやけた返答になってしまうでしょう。
また、キャリアの棚卸しを通じて「自分の希望を叶えるために何が知りたいか」「どんな環境で成長したいか」についても自然と理解できているため、面接での逆質問でも自身のキャリア軸に基づいた本質的な質問をすることができ、面接官に好印象を与えることが可能です。
中長期的なキャリア形成の軸として使う
キャリアの棚卸しは過去を振り返るだけのものではなく、「未来のキャリア形成の軸」としても使うことができます。転職成功後も定期的に見直すことで、自身の成長を実感できたり、目標をアップデートしたり、不足しているスキルの学習計画に役立てることができます。
また、一度描いたキャリア計画は「その通りに進めなければならないもの」ではなく、興味や環境の変化に合わせて柔軟に見直していくものです。定期的に振り返りの機会を持つことで、キャリアをより戦略的に構築でき、理想のキャリア実現に早く近づくことができるでしょう。
キャリアの棚卸しがうまくできないときの対処法（Q&A）
キャリアの棚卸しは、転職活動で大きな武器となるものです。ただ、どうしても上手くいかないというときもあるでしょう。
ここからは、キャリアの棚卸しでよくある悩みとその解決策について記していきます。
Q. 書き出せる実績がないときはどうしたら良いですか？
A. 取り組んできた試みに目を向ける
「大きな実績を残したことがない」「今までしてきた仕事に一貫性がない」など、棚卸しの段階で「書くことがない」と悩む人は多くいます。しかし、「実績がない＝棚卸しができない」ではなく、切り口を変えることで必ず書ける内容が見つかります。
棚卸しでは実績は数値で示すのが理想ですが、残した数字がない場合でも「目標のために取った行動」「改善した点」「自身の行動によって周りに与えた波及効果」などについて書いても、立派な棚卸しとなります。特に、事務職などルーチンワークで書ける実績がないという人は、普段から心掛けているマインドや工夫点、自身が考えて行った改善点などについて思い出して書いてみてください。業務の効率化や生産性の向上のための行動は、特に評価対象となります。
Q. 希望する業界・職種が決まっていなくても作成できますか？
A. 棚卸しは今後のキャリア形成のためであり、作成できる
キャリアの棚卸しは、応募先に合わせて作成する必要はまったくなく、むしろ今後進むべき道を考えるために活用できます。棚卸しによって自分に向いている業界・職種が洗い出せたり、それによって「やはり今の仕事が向いている」という判断材料にすることができるからです。
また、希望する企業を見つけるために求人を見始めた際に、棚卸しによって応募先とのマッチ度が判断できますので、そこで自分に合っている業界・職種の判断がしやすくなるでしょう。
Q. 自己分析とキャリアの棚卸しはどう違いますか？
A. キャリアの棚卸しは自己分析のうちのひとつ
自己分析とキャリアの棚卸しは、非常に密接な関係にあります。キャリアの棚卸しが、これまでの業務経験を事実ベースで整理する作業であるのに対し、自己分析は自身の価値観や興味・性格などの内面を深く掘り下げる作業になります。
つまり、自己分析は自分自身を知ることにあり、キャリアの棚卸しは自分のキャリアについて知ることにありますので、キャリアの棚卸しは自己分析のひとつといえます。
転職における自己分析については、「転職成功のために知っておきたい自己分析の方法とは？」で書かれていますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q. キャリアの棚卸しをどう転職活動に活かして良いかわかりません
A.棚卸しはあくまで「材料」であり、応募先によって「変換する」ことで役に立つと捉える
「今の業界・業種で良いのだろうか」「自分に合った仕事はほかにあるのではないか」という人は、キャリアの棚卸しを行うべきです。棚卸しを行うことで、自分の強みや向き不向き、使えるスキルがわかるようになり、転職先を絞り込みやすくなります。
また、実際に応募する段階でも、履歴書・職務経歴書への落とし込みや自己PR・志望動機の作成などでキャリアの棚卸しは非常に役に立ちます。棚卸しの結果は「応募書類の設計図」となり、応募先によってカスタマイズするだけで済むため、良い求人が見つかったらすぐに応募することができチャンスを逃しません。
つまり、棚卸しはあくまで転職活動をスムーズに行うための「材料」として捉え、実際には企業に伝わるかたちに変換することで完成すると考えましょう。
Q. 忙しくて棚卸しの時間が取れません
A.人材コンサルタントンの力を借りることも検討する
働きながら転職活動をしようとする場合、しばしば時間のなさに悩まされることになります。特に現職がハードワークであったり、繁忙期の大変さが尋常でなかったりすることが転職の理由となっている人は、「忙しさから逃れようと転職を考えているのに、多忙によって転職活動ができない」となりがちです。
もし、棚卸しの時間が確保できず前に進めないと感じる場合には、転職エージェントの力を借りることも検討しましょう。在籍する人材コンサルタントはキャリアのプロであり、求人の紹介や応募・面接のサポートだけでなく、キャリアの棚卸しからあなたの強みや市場価値を可視化してくれます。独力で行うよりも効率良く棚卸しができますし、第三者と話すことで思ってもいなかった自分の強みを具現化できるケースもよくあります。
エイペックスでは、業界に特化した専門チームが忙しいあなたに併走しながら、転職活動に関わるすべてについてプロの視点からサポートを提供してくれます。時間のかかるキャリアの棚卸しや、応募書類の作成をプロと行うことで大幅に時間を削減でき、面接対策や企業研究にそのぶんの時間を当てることができます。興味のある人は、ぜひエイペックスのキャリア相談会に一度足をお運びください。
キャリアの棚卸しでよくある失敗
キャリアの棚卸しでよくある失敗は、どれも「とりあえず書き始めたものの、うまく整理できない」「結局、転職活動でうまく使うことができない」といったものです。
失敗① 時系列で経歴を書き出すだけで終わってしまう
キャリアの棚卸しの第一段階は、「これまでの業務経験と成果（結果）を時系列で書き出す」です。
しかし、ここから書き出した内容を肉付けしていかないと、結局経歴を書き出しただけで終わってしまいます。自身の成果や学びが多かった主要プロジェクトに対し、何を目的としたどんなプロジェクトで、どんな課題があり、どんな行動・工夫によりどんな成果につながったか、という”“質的な情報”が抜けたままの場合、採用担当者に伝わる価値が弱くなってしまいます。
棚卸しは単なる職務経歴ではなく、自身の成果に具体的なストーリーを付け加えることで、面接官に「どう考えて動ける人か」を印象づけるために行います。
失敗② ひとつひとつの経験を細かく書きすぎてしまう
特に職歴が長い人にみられるのが、あれもこれもとすべてのプロジェクトについて書き過ぎてしまい、結局全体像が見えなくなるというケースです。情報量が多いとせっかくの実績も全体で見たときにぼやけてしまい、棚卸しが「作業記録の羅列」になりやすい傾向があります。
棚卸しの内容を応募書類に落とし込む際には、採用担当者が瞬時にあなたの価値や強みを判断できるよう、内容が簡潔・明解であることが重要です。応募先にもっとも”刺さる”と思われる実績や強みにフォーカスし、その裏付けとなる証拠として具体的なストーリーを書き出すようにしましょう。
失敗③ 自分の強みや成果を過小評価してしまう
失敗②と逆になりますが、自身の強みや成果を過小評価してしまい、棚卸しから外してしまうというケースもあります。日常的に行ってきた業務ほど価値に気づきにくく、「当たり前」と思って省いてしまうことが多いからです。
その結果、本来ならアピールできるはずの実績が漏れてしまい、職務経歴書が薄く見えてしまうことになります。特に、チームのサポート業務などは「ついでにやっていた仕事」と思ってしまい、成果として認識されにくいため意識的に拾い上げる必要があります。
また、必ずしも「成果」「強み」を拾い上げることだけが棚卸しではなく、「失敗から学んだこと」「改善に向けた行動」も棚卸しの一部であると意識しましょう。企業は、行動に至ったプロセスや工夫点も再現性が高いとして評価するため、「成果がなかったから書かなくて良いだろう」とせず、自分がどう動いたかについても必ず書き出すようにしましょう。
鈴木 優希（ITチーム シニアコンサルタント）のワンポイントアドバイス：
「謙虚でいることは大切ですが、短所がたくさん思いつく一方で長所がわからないといった声をよく聞きます。面接では自信をもって能力・スキルをアピールすることが大切です。これまでの業務の棚卸しをして、ご自身の強みについてしっかりと分析を行い、ご自身の貢献・経験を具体的に説明できるようにしておきましょう。」
失敗④ 棚卸しの目的を意識せず行ってしまう
棚卸しの目的は、転職活動で自分の強みや実績を整理し、応募書類や面接で活かすための材料としたり、今後のキャリアの方向性を決定したりするためにあります。
目的を意識せず淡々と職歴と実績を書き出すだけでは、経験は整理されても「どのスキルが評価されるのか」「どの経験をどうアピールするか」「どの方向性がもっとも自分に合っているのか」が見えにくくなり、転職活動に直接つながりません。
つまり、棚卸しを有効活用するには「何のために書き出すのか」を常に意識しながら整理することが重要です。
キャリアの棚卸しを人材コンサルタントに相談したほうが良い人
キャリアの棚卸しは自分で行うことができますが、客観的な視点も取り入れたほうがより良い棚卸しとなり、転職活動でも活用しやすくなります。
特に下記に当てはまる人は、人材コンサルタントに相談することが強く推奨されます。
転職がはじめて、もしくは久しぶりの場合
新卒からひとつの企業に勤めてきて、今回初めて転職をするという人は人材コンサルタントに頼ったほうが良いでしょう。キャリアの棚卸しにも「経験値」があり、これが低い人の場合は「どこから手をつけたら良いかわからない」という状況になりがちだからです。
また、いざ棚卸しを始めても自分自身の主体的な感覚だけで行ってしまい、有益ではない資料に仕上がる可能性があります。ぜひ、人材コンサルタントのサポートを利用しましょう。
島本 純平（ITチーム プリンシパルコンサルタント）のワンポイントアドバイス：
「20代など転職経験があまりない方は、『なぜこれまで成功してきたのか』、ご自身の強みを知ることから始めてみてください。一社しか経験がない場合でもスキルの棚卸しは非常に重要ですので、人材コンサルタントを味方につけて行っていきましょう。」
早く転職したい場合
プライベートの事情や企業の経営状況などから「一刻も早く転職したい」と考える人は、転職活動にあまり時間をかけられません。希望する求人は一年中市場にあるとは限らないため、良いと思った求人募集が出た時点ですぐに応募できるよう、その前の資料作りを迅速に行っておく必要があります。
人材コンサルタントとともにキャリアの棚卸しをしっかりと行っておくことで、応募書類の作成にかける時間を大幅に短縮でき、そのぶん転職の山場となる面接対策に時間をかけることができます。
現職が多忙である場合
現職の仕事が忙しい人も、人材コンサルタントのサポートに頼るべきです。時間のなさゆえに掘り下げが不十分になってしまいがちなところも、人材コンサルタントがアシストすることで完成度の高い棚卸しが可能になり、応募書類の質が格段に上がります。
エイペックスの人材コンサルタントの場合、各業界に精通した専門コンサルタントであるため、書類作成のサポートだけではなく各業界・企業の最新の市場動向についても情報を提供してくれ、精度の高い企業研究が可能になるためおすすめのサポートです。
未経験の職種・業界を目指す場合
未経験の職種・業界に飛び込もうとする場合、戦略的な転職活動が必要になってきます。
人材コンサルタントを利用すると、その企業・業界の採用傾向や求人動向を教えてもらえるだけでなく、その企業でアピールとなる職務経歴書の書き方の指南もしてくれます。棚卸しで判明した自身の強みのうちどこに焦点を当てるべきか、面接でどのように訴求すべきかも、人材コンサルタントはよく把握しています。
希望職種・業界が決まっていない場合
希望する職種や業界が決まっていない場合も、人材コンサルタントのサポートは有益です。自分の経験のどこが強みになるのか、どんな仕事につなげられるのかなど、第三者の視点から経験を整理し、相性の良い職種や高く評価してくれる業界を具体的に示してもらえます。
また、キャリア面談を通じてあなた自身が気づいていない志向や適性を引き出してもらえることもあり、キャリアの方向性が見えやすくなるメリットもあります。希望が固まっていなくても、専門家のサポートを受けることで明確になることが多くあるでしょう。
職務経験が多すぎて整理できない場合
職務経験が多すぎて整理できていない人は、「どの実績がアピールになるのか」がわからず、棚卸しが煩雑になり手が止まってしまいがちです。この場合でも人材コンサルタントに相談することで、希望する業界・企業ごとで採用側に評価されやすい実績をピックアップし、優先順位をつけて整理してもらえます。
自分ではまとまりがないと思える職務経歴でも、毎日応募書類を見ている人材コンサルタントにとっては「一貫した強み」や「キャリアの軸」が浮かび上がるため、職務経歴書の作成や面接対策で大きな助けとなり効率的です。
キャリアの棚卸しをエイペックスのサポートで効率良く行う
キャリアの棚卸しを行うことで、
自分にマッチした企業に応募できる
応募書類の作成がスムーズにできる
面接の自己PRに説得力が増す
自分の適性と方向性が明確になる
学習計画のヒントになる
自分の成長を実感できる
といった多くのメリットを得られることがわかりました。転職すると決めている人はもちろん、転職すべきかどうかを迷っている人にとっても、自身にとって有益な資料となるのが棚卸しです。
キャリアの棚卸しが上手くできないと悩んでいる人は、人材コンサルタントの力を借りましょう。「書き出せる実績がない」「希望する業界・業種を定められていない」「転職活動にどう活かせば良いかわからない」「多忙でキャリアの棚卸しができない」という求職者の方の悩みにプロとしてしっかり寄り添います。
エイペックスでは、外資系・日系企業への転職を中心に、棚卸しを含めたキャリア相談や転職準備のサポートを無料で行っています。経験豊富なバイリンガルコンサルタントが、履歴書作成のサポートや面接日程の調整・面接対策、内定時の条件交渉まで、あなたの転職活動を一貫してサポートしています。
転職は、人生で何度も行うものではありません。あなたの強みや価値観・希望に沿った理想の転職を実現するためには、プロのサポートが不可欠です。現在転職活動で悩んでいる方は、ぜひエイペックスのキャリア相談会までお越しください。
